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経営上場(IPO) 2023/05/30

会社設立の手続きはどうする?個人事業主が知りたい法人化の流れとメリットとは

個人事業主が会社を設立すると、社会的な信用が高まり、融資を受けやすくなるなど様々なメリットがあります。
本記事では、会社設立のメリットや手続きの流れについて解説します。
会社設立を検討する個人事業主の方は、ぜひ参考にしてくださいね。

会社設立のメリットとは

近年の会社法の改正により、会社の設立は手続きが簡素化され、準備資金も少なくなりました。
そのため、会社設立は個人事業主の事業拡大の選択肢の一つとして、従来よりも検討しやすいものとなっています。


会社設立のメリット
会社を設立することで、経営者には多くのメリットがあります。
その中でも代表的なものを紹介します。

社会的な信用が高くなる
個人事業主としてビジネスを行っている場合、一度も取引のない相手から信頼や信用を得るのは難しい傾向があります。
一方で、会社であれば登記簿などで確実な情報を入手できるため、取引先との契約・交渉がよりスムーズに行えます。
また、会社の場合、融資を受けるにも個人事業主より条件が緩和されます。
これは銀行などの金融機関からの融資だけでなく、投資家からの資金調達なども同様です。

法人名義での口座の開設が可能になる
会社を設立すると、法人名義の口座を開設できます。
これにより、銀行や取引先とのやり取りがスムーズに行えるようになり、事業運営しやすくなります。

税金対策ができる
個人事業主の場合、所得税の累進課税制度が適用されるため、所得が増えるごとに税率が高くなります。
一方、会社の場合は法人税が課されますが、基本的に法人税の税率は所得が増えても一定です。
そのため、事業が軌道に乗って利益が大きくなるほど、会社を設立した方が有利になります。
また、個人事業主の場合は自分の給料を損金とすることはできませんが、法人の場合は、要件を満たせば取締役である自分への給与を役員報酬として損金に算入することが認められます。
さらに、会社名義で住宅を賃貸して社宅とするなど、様々な節税対策を行うことができます。
法人を設立して会社の資産とする場合は、個人資産と会社資産を分けられるため、相続税対策などにも有効です。


会社設立が適さないケース
一方で、会社を設立しない方がよい場合もあります。
会社設立後に後悔しないよう、手続きに入る前段階から設立目的や必要な手続きについて確認しておきましょう。

売上規模が小さく、法人の設立・維持費用を回収できる見込みがない場合
いくら会社設立にメリットがあるとはいえ、事業が軌道に乗る前からいきなり法人を設立するのはおすすめできません。
会社を設立するには設立費用をはじめとした様々な費用がかかります。
こうした費用を回収できる程度の売上が見込める状態になるまでは、個人事業主を続けた方がよい場合もあります。

会計処理や税務申告などの手続きに対応できない場合
個人事業主として起業する際と比較すると、会社設立には非常に多くの手続きが必要です。
さらに設立時だけではなく、決算作業や法人税の申告など毎年の手続きについても、会社として行うべき対応は個人の確定申告と比較して膨大なものとなります。
もちろん、各種法律や税法で定められている手続きを期限までに行わない場合はペナルティが課されてしまうため、会社を設立するのであれば必ず対応する体制を整えなければなりません。

会社設立手続きの流れ

会社設立の準備から開業直後にやるべき手続きを簡単にまとめると、以下の通りです。
それぞれの手続きについては少なくとも1週間以上かかるため、設立希望日がある場合はその日から逆算して2カ月前を目処に準備を始める必要があります。


1. 会社の構想検討
会社と個人事業主の違いを比較したうえで、どのような会社を作るか事前に考えておきます。
社名や会社の本拠地、出資金額や役員の構成など、定款に載せる基本事項もこのタイミングで決めておくとスムーズです。


2. 定款の作成と認証
続いて定款を作成します。
定款には、会社名、本店所在地、事業目的、資本金額、取締役・監査役などの任命方法や役割などを記載し、公証役場にて認証手続きを行います。
ただし、合同会社の場合、定款の作成は必要ですが、認証手続きは不要です。


3. 資本金の払い込み
資本金を発起人個人の銀行口座に振り込みます。
払い込んだ発起人の氏名を通帳に記載させるため、「預け入れ」ではなく、必ず「振り込み」を行ってください。
この資本金は、会社の運営に必要な費用や投資などに充てられることになります。


4. 法務局での登記申請
登記は、「設立登記申請書」を作成し、必要な添付書類とともに法務局に提出することで申請できます。
添付書類には、代表社員や資本金を決定するための書類や代表社員の承諾書などがありますが、会社の形態によって異なるのでご注意ください。
この申請の内容をもとに法務局で審査が行われ、登記が承認されると会社発足となります。
なお、「設立登記申請書」を提出する際に「印鑑届出書」も併せて提出することで、会社実印の登録申請をすることもできます。


5. 設立後の各種手続き
法人設立に関する届出の提出
法人設立届出書を設立日から2カ月以内に税務署に提出します。
このほか、源泉所得税関係の届出書、消費税関係の届出書についても提出する必要があります。

会社の銀行口座の開設
設立手続き完了後に「履歴事項全部証明書」を入手し、金融機関にて審査を行います。
審査を通過すると、会社の銀行口座を開設することができます。

社会保険の加入手続き
法人を設立した場合、社会保険(健康保険と厚生年金)の加入は義務となります。
社会保険に加入するためには、会社設立日から5日以内に、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を年金事務所に提出します。
添付書類として、「履歴事項全部証明書」も必要になりますので、忘れず準備しておきましょう。
なお、従業員がいる場合は、給与の支払いにあたって、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出する必要があります。
さらに、従業員についての「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」や「健康保険被扶養者(異動)届」などの書類についても必要に応じて年金事務所に提出することになるため、ご注意ください。

会社設立にかかる費用

会社の種類には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社があります。
個人事業主が会社設立にあたって迷うことが多い、株式会社と合同会社の違いは以下の通りです。
株式会社 合同会社
会社の所有者 株主 社員
出資者の責任 有限責任
設立に必要な人数 1人以上
会社の経営者・任期 取締役・2~10年 業務執行社員・任期なし
(上記を選任しない場合は社員全員)
所有者と経営者の関係 所有と経営は分離 所有と経営が一致
定款 作成・認証が必要 作成必要、認証不要
決算公告 毎事業年度必要 不要
利益配分 出資割合に応じる 定款で自由に規定可能
設立手続きの費用 約20万~25万円 約6万~10万円

会社設立にかかる費用
会社設立にかかる費用の内訳は、登録免許税、定款提出時に貼り付ける収入印紙代、公証人の定款認証費用です。

株式会社 合同会社
登録免許税 15万円 6万円
定款の収入印紙代 4万円 4万円
定款認証費用 約5万2,000円 0円(認証不要)
設立手続きの費用 約20万円~ 約6万円~
※定款の収入印紙は電子認証の場合不要ですが、電子認証のための端末などを別途揃える必要があります。


会社設立の費用を安く抑えるには
株式会社と合同会社における費用の差
株主会社は国内での設立数がもっとも多く、社会的信用も高い企業形態です。
上場することで、多くの投資家から出資を募ることもできます。
合同会社も会社数は伸びてきており、有名携帯メーカーなど米国・欧州系の会社が日本法人を設立する際に多く採用されています。
設立費用や維持費用は、株式会社よりも合同会社の方が少なく、設立費用は約15万程度抑えられるとされています。
また、合同会社には決算公告の義務はありませんが、株式会社は決算公告を官報などに掲載する必要があります。
このとき、官報の場合は7万円程度、電子申告の場合は1万円程度の費用が毎年かかります。
このように、費用面だけで言えば、合同会社を選択するメリットはありますが、最も重要なのは会社形態をしっかりと理解して状況に適した方を選ぶことです。

費用をかける部分と削減する部分を整理する
定款作成や登記申請の手続きは自分で行うことも可能です。
ただし、法律に詳しくない場合は、ミスや不備を防ぐため、会社設立に関する手続きを税理士や司法書士など専門家に依頼することをおすすめします。
専門家への依頼は少なくとも5万円~10万円程度の費用がかかりますが、その分、自分の時間をかけることなく確実に対応できるので、どちらの方が適しているか状況を確認するようにしましょう。
また、電子署名されたPDFの電子定款を使用することによって、紙で作成した際に必要な4万円の収入印紙代を0円にすることができます。
ただ、PDF作成ソフトやICカードリーダを整備する必要があり、かえって費用がかかってしまう場合もあるので、注意しましょう。
このように、費用削減を目指すにも様々な事情によってどのような選択をするか検討する必要があります。
費用と時間の両面から会社設立を効率的に進めるためにも、調査も含めた準備期間を十分に用意するようにしましょう。

※参考資料:税理士・会計士をお探しならMJSの会計事務所検索エンジン

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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会社設立は法人として事業を行うためのはじめの一歩ですが、実際にどのような流れで手続きが進んでいくのか、どのようなメリットがあるのかについてはイメージしにくいかと思います。
基本的な内容は本記事の通りですが、会社設立に関する疑問や不安がある場合は、税理士や司法書士などの専門家に相談しながら進めていくとよいでしょう。

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