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業務全般制度改正 2021/09/16

電子取引のデータは紙で保存しちゃダメ!2022年までに備えるべき内容は?(新米経理の会計奮闘記 第11回)

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新米経理の会計奮闘記 登場人物
  • 山本理子

    ようやく経理担当になったものの、分からないことだらけ。毎回様々な経理問題に頭を悩ます。曲がったことが大嫌い。

  • 会計仙人

    突如現れて、会計問題をわかりやすく解説してくれる謎の仙人。仏陀の会計担当だったらしい。

昨今、書類を電子取引するケースが急増しています。この時、送られてきた電子データを印刷して保存している経理担当者も少なくないのではないでしょうか。このような場合、2022年1月から施行される「電子保存の義務化」に注意が必要です。というのも、それ以降、電子で受領した書類を紙に出力して保存することが認められなくなってしまうのです。
今回は、経理データの電子化に興味深々の理子が、会計仙人に電子取引のNGパターンを教えてもらうようです。

本記事は投稿日時点の内容となります。2年間の猶予期間に関する内容は含まれておりません。最新の内容は国税庁のWebサイトをご確認ください。

関連記事:電子帳簿保存法はポイントを押さえてしっかりマスター!(新米経理の会計奮闘記 第9回)
関連記事:電子帳簿保存法の要件が2022年に変わるってホント?導入するなら今がチャンス!(新米経理の会計奮闘記 第10回)

  • 投稿日:2021/09/02
  • 更新日:2021/09/16

経理の電子取引が増えている!


「『請求書は今月からPDFデータでご送付いたします』かぁ。やっぱり電子化の波が到来してるのね」
神妙な顔でパソコンを見つめながら、理子はそれらしい独り言をつぶやく。会計仙人から「電子帳簿保存法」について教えてもらってから、経理の電子化に熱が入っているらしい。

「おぉ、お主からそんな言葉が聞けるとは。これまでのワシの苦労も報われるわい」
いつものごとく、どこからともなく現れた会計仙人が大げさに涙を拭くマネをする。理子はそんな仙人にジトっとした視線を向けた。

「なんかバカにされているような…」

「そんなわけないじゃろう。本心じゃよ、本心。それよりも理子よ、データで送られてきた請求書の管理は問題ないかの」

「今は、普通に印刷して、処理した後にファイリングしてるわ」

「…ふーん」

「…そ、そりゃ私だって、印刷せずにデータで管理した方がいいのはわかってるけど、今の社内体制だとすぐにそうすることができないのよ。大人の事情ってやつよ」

「しかし、体制変更は急いだほうがいいと思うぞ。なんせ2022年1月からは、電子データで送られてきた請求書を紙で保存するのはNGになるからのぅ」

「えっ!?そんなの私、聞いてない!」

「おっと、やっぱりそうじゃったかの」

「やっぱりってどういうことですか?そんな大事なことなら、早く教えてくださいよ!」

「まぁまぁそう怒りなさんな。確かに、前回、電子帳簿保存法で緩和されたポイントを紹介した時に、紙での保存が廃止される話については忘れていたような気はしてたんじゃ」

「もう、そんなんじゃ本当にただのおじいちゃんになっちゃいますよ」

「誰がおじいちゃんじゃ!せっかく教えてやろうと思って来たというのに」

「あーわかったわかった、ごめんなさい!
とりあえず早く教えてください!なんとしてでも2022年の1月に間に合わせなきゃいけないんだから!」

「うむ。まぁワシも忘れてたのは事実だしの。では気を取り直して…」
こうして今日も、会計仙人による『電子取引のデータ保存義務化』の解説が始まったのであった。

電子取引でのデータを紙で保存するのはNGなの?


「『電子取引のデータ保存義務化』に関しては、この通り税制改正の大綱にしっかりと明記されておるぞ」

■令和3年度税制改正の大綱
申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存義務者が行う当該電磁的記録の出力書面等の保存をもって当該電磁的記録に代えることができる措置は、廃止する。
※出典:財務省「令和3年度税制改正の大綱」

「電子データで送られてきた書類は、印刷して管理しちゃいけないのね」

「うむ。要点はこの通りじゃ」

■電子取引のデータ保存義務化の要点
  • 2022年1月1日から電子取引のデータ保存が義務となる
  • データ保存時は、タイムスタンプの付与など、データを改ざんできない仕組みでの保存が必要
  • 電子取引データの保存期間は最長10年
  • データを修正してしまった場合、悪意がなくても重加算税を課されてしまう恐れがある
  • 保存要件に則って電子保存を行わなかった場合、国税関係書類とみなされず、保存義務を怠ったとして青色申告取り消しの可能性がある

「なんだかリスクがとても大きそうね…」

「そうじゃの。だからしっかりと備える必要があるというわけじゃ。それぞれのポイントを解説するぞ」

「お願いします!」

電子保存の方法と課題


「ところで、紙での保存NGっていうのは、どんな書類のやりとりでも対象になるんですか?」

「いや、もちろん、紙で送られてきた書類はそのまま紙として管理していいんじゃよ。大事なのは『電子取引』ということじゃ」

「電子取引って、ウチの会社で一番多い、メールでPDFの請求書を送付してもらう場合も該当しますよね?」

「そうじゃな。メールだけでなく、電子FAXでの送付や、Webサイトからのダウンロードも『電子取引』となるぞ」

送信方法 受信側(原本)
メール 電子保存(紙保管NG)
電子FAX 電子保存(紙保管NG)
紙FAX 電子保存(紙保管NG)
Webサイト 電子保存(紙保管NG)

■対象になる書類

 国税関係書類

  • 契約書
  • 発注書
  • 領収証
  • 請求書 など

「これって、送られてきたものをそのままパソコン上に保存しておけばいいってわけじゃないのよね?」

「もちろんじゃ。先ほどの要点部分でも簡単に触れた通り、法律で定められた方法に則って保存しなければ、電子保存していると認められないんじゃよ。具体的には以下の保存要件を満たす必要があるぞ」

■保存要件
  • システムの概要を記した書類の備付け(自社開発のシステムを使用する場合)
  • 見読可能装置の備付け
    • ディスプレイなど電子データを確認できるデバイスが対象
  • 検索機能の備付け
    • 取引の「年月日」、「金額」、「取引先」の項目で検索できること
    • 範囲を指定し、任意の2項目以上で検索可能なこと
  • 以下のいずれかの要件を満たすこと
    • 取引先または自社でタイムスタンプを付与する。自社で押す場合は受領後2カ月以内に付与する。
    • データの修正削除履歴を残す、または修正削除できないようにする
    • 「正当な理由がない訂正および削除の防止に関する事務処理の規定」の策定後に運用、備付けを行う

※出典:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」

「保存要件は前回も教えてもらったところね。
で、これをどう対処するかってところなんだけれど…」

「それも前回の内容を思い出せば解決するぞ」

電子保存に必要な対策とは


「結論から言うと、電子保存するためには経理担当者だけでなく会社全体を含めた対策が必要不可欠じゃ」

「そうよね。書類の保管は私たち経理の仕事だけど、実際は営業担当者が窓口だったりするし」

「そうじゃの。まずは電子データをめぐるワークフローを構築して関係者に周知しなければならん」

「どの規模の対策が必要なのか、現状を把握することから始めないといけないわね」

「そう暗い顔をしなさんな。一度落ち着いて、電子帳簿保存法を解説したときのことを思い出してみぃ」

「あ、そうか!会計ソフト!」

「そうじゃ。この会社に合ったソフトを探すんじゃよ」

「そっか、そこにつながるのね。
でもね、やっぱりすぐにソフト探すのってとっても大変なんですよ!私だって全部忘れてソフト探しをサボってたわけじゃなくて…」

「わかっとる、わかっとる。そういう場合はな、一人で探そうとしないで、ITベンダーにも相談してみるんじゃ」

「相談ですか?」

「餅は餅屋じゃからの。プロの意見を聞くのが一番早い。もちろん信頼できる業者を選ばんといかんが、まずは既に使っているソフトのベンダーから話を聞いてみてはいかがかな」

「なるほど、そういうことね。私ったら、上司に提案するためには全部一人で調べなきゃいけないと思い込んでたわ」

「もちろん、相談するにも社内の環境や事情を把握しておくことは大切じゃ。しかしその後はプロの意見を聞くことで効率よく対処することができるぞ」

「なんで言われるまで気付かなかったのかなぁ。
じゃあ、善は急げね!」
何を調べに行くのか、理子は突然、席を立って風のように消えていった。

「まったく、やる気があるのはいいことじゃが、少々落ち着きがないのが玉にキズじゃな。
まぁ、もう少しじっくり付き合ってやるとするか」
電子化の波に立ち向かって奮闘する理子を、仙人は微笑ましく見守るのであった。

**********

電子帳簿保存法や電子インボイスなど、経理、会計の領域におけるデジタル化は2022年からより強まると予想されています。今は切り替えの時期に差し掛かっているため、現場の早急な対応に頭を抱える経理担当者も少なくないと思いますが、適切に対応することで業務効率化や経営改善にも直結します。
経費精算などのワークフローを見直したうえで、要件を一貫して満たせるシステム導入を検討してみてください。

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