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業務全般制度改正 2020/03/17

2020年度(令和2年度)税制大綱は投資促進のための優遇措置がポイント

税金の方針をまとめた「税制大綱」による税制改正が、2020年4月よりスタートします。2020年度は「グローバル化・働き方改革の進展」、「オープンイノベーション投資の促進」、「中小企業の生産性向上」、「エネルギーの自由化」などがテーマとなっていますが、中でも投資促進については新たな税制が創設されるなどの進展を見せています。
今回は、2020年度の税制大綱における概要と注目ポイントを紹介します。

2020年度税制大綱まとめ

まずは法人だけでなく個人を対象とする税金も含めた、税制大綱の概要を紹介します。

■2020年度税制大綱
税区分 内容
個人所得課税 NISA 制度の見直し・延長
エンジェル税制の見直し
低・未利用地の活用促進
国立大学法人等に対する個人寄附の促進
未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(夫)控除の見直し
国外居住親族に係る扶養控除等の見直し
私的年金等に関する公平な税制のあり方
森林環境譲与税の見直し
資産課税 所有者不明土地等に係る固定資産税の課題への対応
消費課税 たばこ税(国・地方)の見直し
消費税の申告期限の延長
日本酒の輸出拡大に向けた取組み
国際課税 国際的な租税回避・脱税への対応
関税 暫定税率等の適用期限の延長等
国際コンテナ戦略港湾政策に係るとん税及び特別とん税の特例措置の創設

出典:財務省「令和2年度税制改正の大綱の概要」

個人所得課税においてはNISA制度の非課税枠を600万円から610万円まで拡大するなど、老後の資産形成のほかにも、投資の促進に重点を置いて税制が改正されていることがわかります。 この傾向は、法人課税の改正でも同じです。

法人課税の主な改正内容

2020年度の税制大綱は、「グローバル化・働き方改革の進展」、「オープンイノベーション投資の促進」、「中小企業の生産性向上」、「エネルギーの自由化」の4点に重点が置かれています。それぞれの具体的な施策と狙いは以下の通りです。

働き方改革のための「消費税の申告期限の延長の特例」の創設
経理担当者にとって重要となるのが、新たに「消費税の申告期限の延長の特例」が創設されたことです。これまで法人税における確定申告の提出期限は延長が可能だったものの、消費税は決算日から2カ月以内に申告する必要がありました。そのため3月決算の企業では、5月上旬に消費税の申告準備や法人税の修正申告、更正請求処理などを行わなければならず、経理担当者はゴールデンウィークでも出社するケースが多発していました。働き方改革の一環として、このような事態を阻止するために、今回の改正が行われています。

オープンイノベーション促進税の創設と減税
新たに「オープンイノベーション促進税」が創設され、国内企業、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が、ベンチャー企業(創業10年未満、未上場に限る)に1億円以上の出資した金額に対して25%の所得控除が受けられるようになります。
さらに、収益が拡大しているにも関わらず、賃上げや設備投資を行っていない企業に対しては、優位な租税特別措置の停止要件が厳格化されます。これは企業の内部留保を減らし、賃上げやベンチャー企業への出資を促す狙いがあります。

中小企業にも適応できるデジタル分野の投資促進
自動運転の実現やIoTの進化に欠かせない「5G(第5世代移動通信システム)」への投資を促進するため、5Gの利用に必要な「全国キャリア・地域(ローカル)送受信装置などの前倒し整備」に対して、15%の税額控除を受けられるようになります。世界に先駆けて5Gの通信インフラを整えることを目的としています。

自由化の下でのエネルギーの安定供給の確保
対象事業者を追加し、省エネや再エネルギーに関する設備投資を促進するほか、特別償却などの償却率の見直しも行う方針です。さらに、電気供給業における法人事業税や、課税そのもののあり方についても引き続き検討するとしています。

中小企業の生産性向上

地域経済の活性化を目的に、中小企業向けのオープンイノベーション促進税制も設立されます。先述した国内企業、CVC向けとは違い、ベンチャー企業への出資額1000万円以上について25%の所得控除が受けられるようになります。
また、以下の特例措置が延長されます。

1.年間300万円までの少額設備投資(30万円未満)を即時に償却できる特例措置
中小企業が、取得価格30万円未満の備品やソフトウェアなどの「減価償却資産」を購入した場合、損金に算入できる制度です。税務上の所得は「益金―損金」で求められるため、損金が増えれば法人税の節税につながります。

2.交際費を年間800万円までを全額損金として算入できる特例措置
交際費は原則損金算入できませんが、中小企業は特例として一事業年度につき800万円まで損金算入できます。先述の通り、損金として扱えることで法人税の節税につながります。

これにより、引き続き中小企業は大企業と比べて税制面で優遇されていることがわかります。
さらに中小企業の再編・統合を促進するために講じられている、登録免許税や不動産取得税の軽減措置も延長されます。

※出典:経済産業省「経済産業関係 令和2年度(2020年度)税制改正のポイント」
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経理担当者としては、消費税の申告が1カ月延長可能になったことが業務に直結する大きな変更点といえるのではないでしょうか。3月決算の企業は延長を申請する可能性も考慮し、スケジュールを立てるのもよいでしょう。
また、オープンイノベーション促進税制の創設によって、中小企業でもベンチャー企業への出資を検討する可能性が増えてくることが予想されます。これからの時代にあった経理担当者となるために、投資、出資に関する会計知識も深めてみてください。

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