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経営計画 2017/10/10

政府が推奨する新たな経営指標ROAとは

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政府が公表した成長戦略「未来投資戦略2017」によると、企業の稼ぐ力を測る新たな指標としてROA(総資産利益率)の改善を掲げました。
2014年の夏に経済産業省から公開された通称「伊藤レポート」でROE(自己資本利益率)の改善を目標とした時以来の新指標です。
伊藤レポートをきっかけにROEブームとも言える状況になったことを考えると、今回の未来投資戦略を機に多くの企業がROA重視にシフトすることが予想されます。
そこで、一足早くROAについて迫ります。

ROAとは?

ROEは企業の最終的な儲けである純利益を株主が投じた資本と利益の蓄積を合計した自己資本を割って算出します。
自己資本利益率と言うように、企業が自己資本をどれだけ効率的に使って利益をあげているかを表す指標。いわば株主に目線を向けた指標と言えます。

一方、ROAは総資産利益率と言い、利益を資産で割って算出します。
資産とは、自己資本だけでなく銀行借入金などの他人資本も使って企業が積み上げてきたすべての資産。現金はもちろん、工場や店舗、設備、在庫、売掛金、有価証券など、企業が保有する全財産を指します。
従って事業に関わるすべての従業員に目線を向けた指標と言えます。

ROAの計算式は次の通りです。ROA=利益÷資産
ここで言う資産は、先述した通り企業が保有するすべての資産。賃借対照表(B/S)の左側に相当するものです。
利益は、営業利益、経常利益、当期純利益、どれをあてはめてもかまいません。資産を使って本業でどれだけ利益をあげているかを知りたい場合は営業利益をあてるなど、目的に応じて代入します。会社四季報では当期純利益を使って算出していることもあり、当期純利益をあてるのが一般的です。

なぜ、ROAなのか?

ここにきてなぜ、政府は新指標を打ち出したのでしょうか。
一つは、これまで推奨してきたROEは、自社株買いや増配によって自己資本を減らすなど、財務テクニックによって改善することができるという欠点があります。
中には銀行借り入れで調達した資金で自社株を買い、一気にROEを引き上げるケースもあるのです。

こうした行き過ぎたROE重視の経営は、従業員など他の利害関係者をないがしろにするなど、株主至上主義に陥りかねないとの批判もありました。政府は、ROE経営の行き過ぎにブレーキをかけるために新しい経営指標を打ち出したと言えます。
また、日本企業の課題は、株主に利益をもたらす以前に、そもそも事業の収益性が低いことにあります。企業の収益力を測るためには自己資本ではなく、事業全体の収益力にフォーカスした方が良いとの考えも見えます。

日本企業は投じる資本に見合った収益をあげていなくても黒字であれば事業縮小や撤退に踏み込まず、事業再編に二の足を踏む傾向があります。
投資に見合わない事業は再編を促し、日本全体の活性化につなげる。そのためには、ROEのように財務テクニックによって改善することが難しく、企業の収益力を高い精度で測れるROAの浸透が必要と言われています。

日本企業のROAは高い

日本企業は、欧米企業と比べてROE(自己資本利益率)が低いと、海外の投資家を中心に度々言われてきました。
ところが、ROA(総資産利益率)にモノサシを変えると、日本企業の近年の伸びが見て取れます。
日本経済新聞によると、2016年の日本企業のROAは2.90%と、5年前と比べて0.37ポイント上昇。米国企業は0.36ポイント低下の2.89%となり、日本企業が米国企業を上回っています。

日本企業のROAを押し上げる原動力となったのは、収益性の改善だと同紙は言います。
ROAを構成する要素の一つである売上高利益率は、2016年に約4.8%と、5年前から約0.9ポイント上昇。
米企業は約9.2%と高水準ですが、5年前とほぼ同程度。資産をどれだけ効率よく積み上げたかを示す総資産回転率では、日本が約0.6倍で、米国の約0.3倍を上回りました。

また、5年間でROAが上昇した主な企業をみると、ヤマハ、パナソニック、オリンパスなどが上位を占めています。
いずれの企業も不採算事業からの撤退や売却を行い、成長分野に集中投資して収益力を高めるなど、選択と集中で総資産を抑えつつ採算を上げています。
大胆な事業再編こそ、企業の利益率改善の原動力となり、その新たなモノサシとなるのがROAと言えそうです。

5年間でROAが上昇した主な企業
企業名 ROAの上昇幅(ポイント)
ヤマハ 17.2
パナソニック 13.3
オリンパス 12.8
太陽誘電 12.1
ガイシ 12.0
トクヤマ 10.7
TDK 9.5
マツダ 9.5
東建物 9.4
東ソー 8.7
東エレク 8.5
潮野義 7.6
アドテスト 7.5
SUBARU 7.5
長谷工 7.2
出典:日本経済新聞

※年度ベース

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政府が打ち出した方針は、社会のスタンダードとなることが多いことから、今後経営指標と言えばROEからROAにシフトする可能性が高いでしょう。
経理担当として経営層に信頼される存在となるために、ROAに関して肌感覚を持ち合わせたいものです。
そのためにも、まずは各業界の平均値を把握し、自社の数値と競合他社の数値を算出して比較・分析を行い、自分なりの改善策を導くこと。何よりも日々の実践が大切となります。
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