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経営事業計画/経営計画 2021/03/09

予測B/S、予測P/L、予測C/Fを使いこなして未来を見据えた経理業務を

事業計画では、将来のビジネスプランとその予測収益を客観的に把握する必要があります。その意味でも事業計画書は企業の戦略立案に欠かせないものです。
現時点での企業の経営状態はP/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)、C/F(キャッシュフロー計算書)といった財務諸表で把握できます。対して、将来の利益の推移や資金繰りの見通し、設備投資の余裕などを数字で客観的に把握するためには、仮説や予想値をもとにした「予測財務諸表」を使います。
この記事では、予測財務諸表に使われる予測P/L(損益計算書)、予測B/S(貸借対照表)、予測C/S(キャッシュフロー計算書)をわかりやすく解説します。

予測P/Lとは

P/L(ピーエル)とは「Profit and Loss Statement」の略で、損益計算書のことです。通常のP/Lは決算時に事業年度を通じてどのくらいの利益または損失が出たかを把握するための資料ですが、予測P/Lは、次年度以降の事業計画においてどのくらいの利益または損失になりそうかという、未来の収益性を予測するための資料になります。

予測P/Lの活用方法
予測P/Lは、次年度以降の経営計画を考える資料として活用されています。例えば、新しい事業を始めようと考えたとき、その事業でどれくらいの利益が出そうか、損益分岐点はどこなのか見込みを立てる必要があります。
このとき、予測P/Lにおいても通常のP/Lと同様に売上総利益率、営業利益率、経常利益率、当期純利益率を算出します。数字の根拠は、ここ数年の売上推移や固定費、変動費の増減率を参考にします。また、既存事業とは関連のない事業であれば、リサーチデータやアナリスト予測などから計算した数字をもとに予測P/Lを作成します。
予測P/Lの作成には、多くの事業予測データを収集し適切に分析する高度な技術を要します。しかしうまく活用できれば、スタート前の事業でも収益性や損益分岐点を判断することが可能です。予測P/Lは「この商品またはサービスで儲かる見込みがあるか」を経営者が判断するためのものなのです。

予測B/Sとは

B/S(ビーエス)とは「Balance Sheet」の略で、貸借対照表のことです。B/SもP/Lと同じく通常は決算時に作成され、決算時点における会社の財政状態を表す資料になります。対して予測B/Sの場合は、事業計画書において会社の将来的な資金繰りを予測するための資料になります。
B/Sでは、会社が持っている現金や商品在庫、固定資産などの「資産」と、借入金などの「負債」、そして資産から負債を差し引いた「純資産(資本)」がわかります。これにより、会社の債権支払い能力をはかる「自己資本比率」、「流動比率」、「当座比率」が判断できます。したがって、事業計画をもとに銀行の融資審査などを受ける際、まず参考にされるのが予測B/Sなのです。

予測B/Sの活用方法
予測B/Sは、事業計画において会社の将来の資金繰りを考える資料として活用されています。予測B/Sを作成するには、まず先に予測P/Lを作成しておく必要があります。なぜなら、予測P/Lの売上の数字をもとにして予測B/Sの現金や商品在庫の数字を導き出すからです。その後、設備投資計画と資金計画の数字を加味して予測B/Sを作成します。
設備投資計画には、将来投入したい新規設備や、既存の設備の買い替えに必要な数字などを盛り込みます。資金計画には、設備投資や事業のグロースに必要な借り入れ、資金調達などの内容を取り入れます。
設備投資計画と資金計画は複数パターン準備されることが多く、それらを加味した予測B/Sも複数作成することになります。この予測B/Sによって、会社の将来の収益を生み出すために投入できる経営資源や、資金繰りの予測が可能になります。

予測C/Fとは

C/F(シーエフ)とは「Cash Flow Statement」の略で、キャッシュフロー計算書のことです。通常のC/Fは会計期間における現金や預貯金の増減(キャッシュフローの状況)を表すもので、日本では2000年3月期から上場企業の決算でキャッシュフロー計算書の開示が義務づけられました。対して予測C/Fは事業計画書などに使われ、将来の企業活動における預貯金の増減(キャッシュフローの状況)を数字で表す資料になります。

予測C/Fの活用方法
予測C/Fは、予測P/Lや予測B/Sでは把握できない現預金(キャッシュ)の流れを把握するために活用されています。例えば、予測P/Lで未来の年間売上や年間利益を予測できても、実際には仕入れた商品が即座に売上になるわけではありません。1年を通して、仕入れた原材料や商品が加工や販売を経て売上となるまでには、タイムラグがあります。さらに、買掛金の支払いや売掛金の回収にも発生と精算にタイムラグがあります。
このようなタイムラグをふまえた現預金の回転状況を理解しておかないと、「会計上は黒字なのに、現場では資金不足」という事態も発生しかねません。つまり、予測C/Fは事業計画における現預金の回転状況を予測するため資料なのです。
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予測P/L、予測B/S、予測C/Sは、予測財務諸表と呼ばれています。経営者が会社の舵取りを行うためにも予測財務諸表は重要なものです。
ただし、予測財務諸表はあくまで仮定の上で考えられた数字です。事業をスタートさせてみたら、予測どおりの数字にならなかったという場合も少なくありません。これに対応するため、事業が好調の場合と不調の場合で複数の予測財務諸表を作成するのも一つの方法です。様々な事態を視野に入れて準備するのが、予測財務諸表を活用するポイントです。

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