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経理/財務管理会計 2019/01/15

経営管理の指標になる、予算策定の流れとポイントを学ぶ

予算策定とは、予算設定期間(通常は次年度の1年間)における会社の目標を設定し、達成するための具体的な売上や経費を定める重要な作業です。経理担当もサポート役や時には予算策定の担当者として関わることがあります。ただ、数カ月にも及ぶ重労働になるので、予算策定の時期になると憂鬱になる経理担当も少なくないといいます。そこで、今回は予算策定の基本的な流れと押さえておきたいポイントをお届けします。

予算策定の流れ

第3四半期を過ぎると次年度の予算の検討を始める企業が多いとされています。予算策定では、「社長(取締役会)」、「予算会議」、「予算編成部署(経営企画室)」、「各予算部門」がそれぞれ作業を行います。そして、「予算編成方針」、「損益予算」、「財務予算」、「総合予算」の順に定めていくことで、経営陣が打ち出す方向性と現場での実現可能性をすり合わせるのです。その重要な項目について、もう少し細かく解説していきましょう。

その1:予算編成方針の決定
予算策定は、経営陣が各部門に対して目標売上高や目標利益などの大まかな予算方針を示すことからスタートします。予算編成方針の原案は、一般的には経営企画室や社長室など予算編成部署が作成し、予算会議で承認されて決定されます。 基本的には経営層と予算編成部署だけのやりとりになるので、他の項目ほど作業時間はかかりません。しかし、この段階でスムーズにいかないとスケジュール全体が遅れてしまう恐れがあります。なので、今年度期末の2ヵ月前(3月決算の場合は1月頃)には、具体的な予算編成方針を検討しているのが望ましいでしょう。

経理担当のポイント
予算編成部署は、前述の通り経営管理部が担当することが一般的です。ただ、経営管理部が存在しない中小企業などでは、経理部が担当することも珍しくありません。その場合は経理担当者が予算編成の窓口として活躍することになります。

その2:損益予算・財務予算の編成
予算編成方針が決まれば、予算編成部署はそれを各部門に通知します。部門の担当者はその通知をもとに、売上高予算・費用予算・製造予算などを合算した「損益予算」を作成し、予算編成部署に提出します。その後、売掛金や支払手形などの資金繰りをまとめた「財務予算」を編成し、損益予算と同様に予算編成部署に提出します。
各部門の担当者がそれぞれ作業するので、「損益予算」、「財務予算」のすべてが予算編成部署に集まるまで、ある程度の時間が必要です。早ければ決算期の前々月、遅くても前月中に行うべきです。

その3:総合予算を編成し、各部署に通知する
各部門の損益予算と財務予算が集まると、予算編成部署はそれを取りまとめて総合予算を作成します。ただ各予算を作成するのではなく、数値の正当性や設定理由などを作成した部門に確認・連絡する必要があり、何度か差し戻すケースも考えられます。担当者にとっては手のかかる工程になるでしょう。
総合予算が無事作成できれば、次は予算会議に提出し、社長の承認後、各部門に通知する流れとなります。次年度予算の通知は少なくとも今年度の期末までには行いましょう。

経理担当のポイント
経営管理部が予算編成部署を担う場合でも、財務諸表(貸借対照表、キャッシュフロー計算書、損益計算書)などの作成は経理部が担うことがあります。また、会社によってはすべてを経理部が管理する企業もあります。その場合、経理担当者は実績を集計する力だけでなく、それをもとに事業を計画したり、見通しを立てる力を養っておく必要があるでしょう。

予算策定の2つのポイント

ここまでは予算策定の大きな流れを紹介しました。予算策定をより正確かつスムーズに行うには、スケジュールの把握とともに知っておくべきいくつかのポイントがあります。最後にそのポイントをご紹介します。

ポイント1 予算策定者の把握と準備を徹底する
折衝役となる予算編成部署の担当者には、スケジュール管理能力が必須です。部門レベルの予算策定では、その部と予算編成部署だけでなく、第三者の協力や連携が必応になるケースもあります。
部門ごとの予算策定に関わる人を把握するだけではなく、各部門の予算策定に必要な資料や他部署との連携について把握し、スムーズに動けるように日ごろからコミュニケーションを取り、動きやすい環境を作っておく必要があるでしょう。

ポイント2 数値の矛盾には早めに気付けるようにする
各部門から上がってきた予算をチェックするのも予算編成部署の仕事の一つです。この時点で、数値に矛盾や誤りなどがあることは珍しくありません。必要なのは、間違いにすぐ気づくこと。担当者レベルですぐに間違いに気づくことができたら、差し戻しによるスケジュール遅延のリスクを減らすことができます。
そのためには、担当者自身が管理会計の知識を深める必要があるでしょう。実務から学ぶのも重要ですが、工業簿記などを体系的に勉強することをおすすめします。
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多くの人たちの折衝役になり、最も会社を成長させつつ実現可能な数値をはじき出すのは簡単ではありません。ただ、考えようによっては経営陣と社員の両方とやりとりできるので、予算策定作業でしっかりと仕事と実績を上げれば、会社の信用を勝ち取るには最高のポジションともいえるでしょう。予算編成担当者としてはもちろん、サポート役として予算策定作業に関わる際は、大きなチャンスだと捉えて前向きに作業を行いましょう。

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