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経理/財務管理会計 2018/07/24

収益性分析「売上高総利益率」をマスターする

会社の様々な数字を正確に導き、多様な経営判断の資料を提供することが経理の重要な任務です。しかし、ひとつ上の経理にステップアップするためには、そうした経理業務だけでなく、各数字を分析して会社の課題や強みを明確化することも必要となります。経営層の頼れる右腕になるための第一歩となる会社の収益性分析。今回は、最も基本的な指針である「売上高総利益率」に迫ります。

売上高総利益率とは

売上高総利益率とは、売上高に占める粗利益の割合を指し、粗利率とも言います。損益計算書(P/L)についておさらいすると、会社の売上高に対して様々なコストを差し引くことで5つの利益が求められます。これは、とても大切な基本なので、しっかり覚えておきましょう。

まず、売上高から売上原価が差し引かれて売上高総利益(粗利)が導かれます。売上高総利益から販売費・一般管理費が引かれることで営業利益が求められます。さらに、営業利益から営業外損益が引かれると経常利益に、経常利益から特別損益が引かれると税引前利益になり、最後に法人税等が引かれて当期純利益になります。

売上高

売上高総利益=(売上高―売上原価)

営業利益=(売上総利益―販売費・一般管理費)

経常利益=(営業利益―営業外損益)

税引前利益=(経常利益―特別損益)

当期純利益=(税引前利益―法人税等)

売上高総利益率は、売上高から売上原価を差し引いた売上総利益の、売上高に占める割合なので、下記のような計算式で導かれます。

売上高総利益率=売上総利益/売上高×100

何がわかるのか

この数値は、会社の商品やサービスを通してどのくらい利益をあげたかを示すもので、純粋に会社の商品力や営業力、つまり稼ぐ力を表します。会社の力を示す最も基本的な指標と言えます。当然、数値が高い方が会社の稼ぐ力も高いです。経営者は、この売上総利益率の上がり下がりに注目しています。経理担当には、売上高総利益の変化が会社の最終利益にどの程度影響を及ぼすかをスムーズにシミュレーションできる計算力が要求されます。

自社商品やサービスの売上高総利益率の上がり下がりは重要なサインです。一般的に売上高総利益率の下がる原因としては、売価の下落、販売数や来客数の減少、売価設定が適正ではない、などがあげられます。さらに売価や販売数が低下する原因としては、商品の陳腐化、競争激化などが考えられます。このように数字の変動には必ず原因があるため、常に原因を掘り下げる習慣を身に付けましょう。また、売上高総利益率は業界、業種、業態などによって大きく異なることも忘れてはなりません。業界別の平均を把握し、自社と比較することが大切です。

さらに、商品別の売上高総利益率を把握しておくことで、会社のどの商品が利益に貢献しているのか、競争力のない商品はどれかを知ることができます。ただ一概に売上高総利益率が高ければ良いと言う決めつけは危険です。と言うのも、高い利益率を目指す高付加価値商品がある一方で、利益率は低くても多くの数を売る薄利多売の商品もあるからです。このような会社の戦略も考慮する必要があります。

戦略を考慮する

戦略を考慮するとは、どういうことでしょうか。多くの会社では売上高総利益率の高い付加価値商品と薄利多売商品を混ぜて構成しています。通常、利益率の高い商品に特化し、薄利多売商品は商品構成から外した方が良いのではと考えがちです。では、薄利多売商品は会社に貢献できないのでしょうか。

例えば、起業間もない会社や新商品の販路が出来ていないプロジェクトのケースを考えてみましょう。販路も乏しく、顧客との関係性も限られています。こんな状態で付加価値の高い商品を売ろうとしても、世の中にない画期的な商品でもない限り、 思うように売上を伸ばすのは困難と言えるでしょう。

このような時期の販売戦略として、まず得意先や販路をつくる。またはテストマーケティングのための情報収集などの目的で、利益率の低い商品を投入する戦略もあります。情報収集をベースに販路拡大と顧客の育成が進んだ後に、利益率の高い商品にシフトしていくのです。売上総利益率は、こうした販売戦略にも関わる重要な指標なのです。
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会社の収益力を把握するための基本となる売上総利益率についてご紹介しました。これは誰でもわかりやすくシンプルな指標でありながら、戦略にも関わる重要な要素と言えます。経理担当は、日々多くの数字と身近に接しています。それぞれの数字の持つ意味を考え、それが会社にどんな影響を与えるかを分析していくことが大切です。その積み重ねが経営層に対する提言につながり、パートナーとしての信頼を得るに至るのです。

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