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人事/労務働き方改革 2018/12/25

経理の働き方改革、成功のポイントを探る!

日本の生産年齢人口(生産活動の中心となる15歳以上65歳未満の人口)は、総人口の減少を上回るペースで減少しており、企業にとって労働力不足は深刻な問題となっています。そうした背景から政府が推進する形で広がっているのが、働き方改革です。これによって長時間労働の是正や育児・介護との両立を可能にする柔軟な働き方を推奨する動きが顕著になっています。一般的に働き方改革の導入が難しいとされる経理部門ですが、何が課題なのでしょうか。今回は経理の働き方改革を進める上での課題を抽出し、その対策について検証します。

経理業務の課題とは

経理部門の働き方改革を進める上で、課題となるポイントをいくつかピックアップしてみました。後ほど対策についても触れますので、まずはこの課題にどう対処したらいいのか考えてみてください。

課題1 時期や日によって業務量に大きな差がある
年末調整に追われる年末、決算業務で忙しい期末など、業務が一定期間に集中するのが経理部門の課題。経費精算や請求書業務など月の中でも業務に波があります。繁忙期はどうしても長時間労働が常態化しやすい環境といえます。

課題2 残業があたり前の風土になっている
経理業務は何よりも正確さが求められる業務です。数字の間違いや不明瞭な点が発生すると、原因究明に追われるなど、結果的に残業が多くなってしまいます。このような環境を経理業務の特性として受け入れてしまったことで、それがあたり前となっているケースが多くみられるのが現状です。この状態が長年続いた結果、状況を変えようとする意識も希薄となり、風土として定着してしまった経理部門も存在しています。

課題3 属人化による特定社員への業務集中
経費精算、売掛金管理、請求書業務、給与計算など、業務に応じた役割分担で完全に分業化してしまっている経理部門が多く、属人化しやすい面があります。特定の個人に業務が集中し、その人がいないと業務が滞るという課題があげられます。

課題への対策

課題への対策を行うためには、課題を生み出している原因を明確にすることが大切です。その上で課題を解決するための最も効率的な手段は何か、自社に合った対策は何かを考えていきます。そこに着目しながら、上記の課題への対策の基本をあげてみました。

課題1 時期や日によって業務量に大きな差がある
対策 業務フローの見直し

長時間労働に限らず、あらゆる課題の原因究明には、業務フローを根本から見直すことが基本となります。業務フローを詳細に紐解いていくと、どの業務のどの工程に多くの稼働がかかっているか、つまり残業の原因となっているポイントが特定できます。
時期的な問題が大きいようであれば、繁忙期への下準備や、日頃の管理状況を見直すなど、業務が集中していない期間にできることを検討します。年間スケジュールを作っておくのもよいでしょう。
また、ヒューマンエラーが発生しやすい、データ収集に時間がかかる、などの業務内容的な問題については、システム化や、現場との作業分担を検討するなど、あらゆる視点から効率化を探り、業務の平準化を図ります。

課題2 残業があたり前の風土になっている
対策 明確な目標設定

この課題については、先述の通り、残業への問題意識が希薄なことが原因として挙げられます。これを打破するためには、残業減少のメリットや削減手段を明確にし、経理担当全員が残業を現実的な問題として捉えることが必要となります。
メリットについては、より具体的な効果を示すのが有効です。残業代などのコスト削減がどのくらい見込めるかなど、数字を出してみるのもよいでしょう。
削減手段については課題1の解決策の通りに検討し、実現の可能性があるという意識を共有することもモチベーションにつながります。
実行段階まできた場合は、「月の残業は20時間まで」など明確な目標設定も必要です。目標の進捗は部門長がチェックし、定着を促します。

課題3 属人化による特定社員への業務集中
対策 マニュアルの作成

効率化のために分担された業務も、長期に渡りその状況が続くことで属人化の原因となってしまいます。これを解決するためには、極端に専門的な業務内容以外は、それぞれがなんでもこなせる環境が必要です。
とはいえ知識やノウハウの習得には時間がかかります。それを解決するために重要なのが、マニュアル化です。わかりやすいマニュアルにしていくためには、実際に読んだ人が新たな気づきや注意点を加筆するなど、随時アップデートしていくとよいでしょう。
また、会計ソフトを使用するなど、システム化で作業を簡易にすることで、習得のハードルも下げることもできます。
もちろん、それぞれの担当業務内容を教えあうなど、定期的にコミュニケーションをとる習慣を定着させるのも属人化防止の基本です。

※関連記事:新米経理の会計奮闘記 第7回「経理の働き方改革はどうなる!?」

最大のポイントは電子化

経理の働き方改革を進める上で、避けて通れないのが電子化です。電子化によって、社内データや情報の共有も容易になり、テレワークなどの柔軟な働き方もスムーズになります。まず、電子化を進めるポイントとして、電子化によるメリットを明確にして社内で共有しましょう。

電子化によるメリット
  • 業務効率の向上
    確認が必要な書類をすぐに探し出すことができるなど、業務スピードが向上することで、部門ごとの経費の使い方など問題点の把握もスムーズになります。

  • 情報共有が容易
    社内の情報や会計データを共有することが可能になり、業務のブラックボックス化や属人化を防ぐことができます。

  • 保存場所やコストの削減
    紙による領収書や証憑書類の保存が必要なくなり、保存場所やファイルなどが不要になります。コストの削減につながる上、ファイリングや収納の手間もなくなります。

  • テレワークの導入もスムーズ
    社内データを電子化することで、どこからでも社内の情報にアクセスすることができるようになります。これによって在宅勤務やサテライトオフィスでの業務など、テレワーク導入の促進にもつながります。

  • それでも紙がないと不安という経理部門も少なくないかと思います。そうした電子化への壁を乗り越えるためには、上記のメリットを掲げるだけでなく、具体的な数字に落とし込んでみてください。業務効率なら時間、コストメリットなら価格といった数字です。また、最初から大掛かりな電子化を計画するのではなく、まずは経費精算関連だけなど、部分的なことから始めて少しずつ広げていくことが成功の秘訣です。

    ※関連リンク:あなたの会社は大丈夫?「働き方改革必要度診断」で「働き方改革」の必要度とおすすめの対策をチェック!
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一般的に働き方改革を進めるのが難しいとされてきた経理部門ですが、徐々に導入事例などもみられるようになってきました。時期や日によって業務が集中するという経理部門の特徴は、見方を変えれば在宅勤務の日を設定しやすいとも考えられます。それを実現するために不可欠なのは、社内データの電子化です。本文であげたように電子化のメリットを詳細に数値化して部門長にプレゼンテーションを行ってみてはいかがでしょうか。働き方改革の礎を築くのも経理担当の重要な任務といえます。

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