「どうしたの暗い顔して」いつものように慌ただしく営業の吉田が帰ってきた。
「働き方改革ってすごいですよね。在宅勤務やモバイルワーク、どんどん働き方が変わっているのに、うちの会社って改革の気配すらないと思って」と理子の表情が曇る。
「そんなことないよ。だいぶ変わってきてるよ」と吉田。
「営業部では数年前から全員にタブレットが支給されて、客先じゃ電子カタログを見せて説明してるしね。必要書類は出先から会社のサーバにアクセスして確認できるから、もう紙資料は持ち歩かなくなった。これも立派な働き方改革だろ?」
「営業部では数年前から全員にタブレットが支給されて、客先じゃ電子カタログを見せて説明してるしね。必要書類は出先から会社のサーバにアクセスして確認できるから、もう紙資料は持ち歩かなくなった。これも立派な働き方改革だろ?」
「営業部はそうですよねぇ。でも経理部は何にも変わらない。なぜなのかしら」
理子の嘆きは深い。
理子の嘆きは深い。
「やっぱり、営業は売上を生む部署だからねえ。経理みたいなバックオフィスは後回しになっちゃうのよ」と吉田は得意げな顔を理子に向ける。
「なんですか、その勝ち誇った顔。経理がいなくても営業は動けると思ってるんですか?」
「動けますよぉ。バンバン売上あげちゃいます」
「その売上を管理するのは誰なんですかっ!」
「経理の管理業務は、売上があがってから発生する業務なんじゃないの?」
相変わらず、争いが絶えない二人である。
「経理の管理業務は、売上があがってから発生する業務なんじゃないの?」
相変わらず、争いが絶えない二人である。
その時、どこからともなく重厚な太鼓が鳴り響き、鬱蒼とした霧に包まれた仙人が舞い降りてきた。
理子がため息をつきながら、スマホでニュースサイトを眺めている。