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人事/労務働き方改革 2020/05/19

経理部門でも実現できます!短期間で構築するテレワーク環境

新型コロナウイルスの緊急事態宣言下でも出社せざる得ないという経理部門の皆さんは少なくないはず。今回は、経理部門のテレワークを短期間で実現したある商社の事例をご紹介します。

テレワーク実施中でも出社せざるえない経理部門

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、現在、多くの企業でテレワーク(在宅勤務)が本格的に実施されるようになりました。しかし、経理部門について言えば、テレワーク実施中であっても出社せざるえないケースがかなり多いようです。

電子部品や電子デバイスを扱う中堅商社M社で経理課長を務める阪井氏は、問題点を次のように指摘します。

「当社の場合、会計システムがオンプレミスなので、オフィスのPCでなければ会計ソフトを利用できません。また、請求書や経費精算の申請などはほとんどが紙で提出されるため、結局のところ、出社して処理しなければなりませんでした」
しかし、取引先や知人など、身近な関係者が感染するようになり、職場では大きな危機感が広がったと言います。

「当社の経理部門は、狭いスペースで活動していますし、それほどスタッフ数が多くありません。一人感染者が出れば、スタッフ全員が自宅待機や経過観察を余儀なくされるでしょう。感染が広がってしまうこともあり得ます。そうなれば、経理業務はもちろん、ビジネス自体にも大きな支障が出てしまいます」

そこで阪井氏は、会計システムベンダーの担当者と相談し、早急にテレワークを実施できる体制を整えることにしました。

オフィスのPCを遠隔操作して会計システムを利用

一番の問題は、オンプレミスの会計システムだったと、阪井氏は回想します。

「社外からのアクセスがまったく想定されていない会計システムを、なんとか従業員の自宅から利用できるようにしなくてはなりません」

M社経理課では、PCの遠隔操作サービスを利用することにしました。
「Windows標準のリモートデスクトップ機能を利用することも考えましたが、ネットワーク設定などがとにかく難しい。そこで、手軽に利用できるクラウドサービスを活用することにしました」

利用方法はシンプルで、遠隔操作したいPCにソフトウェアをインストールし、IDとパスワードを設定するだけでした。

「Webブラウザや専用アプリケーションからIDとパスワードを打ち込めば、どこからでもオフィスのPCを遠隔操作できます」

「Windows PCだけではなく、Macやスマートフォン、タブレット端末など、幅広いOSや端末から操作できるのも大きなメリットでしたね。経理課スタッフの自宅にあるPCやスマートデバイスをそのまま活用できましたから」

複合機とクラウドストレージの連携でペーパーレス化

もう一つの大きな問題だったのが「紙」の書類です。

「取引先から届く請求書やファクス、社内でやりとりされる各種申請書やレポート、経費申請に必要なレシート類まで、経理業務のほとんどが紙ベースで進行していました。これをなんとかしなければ、テレワークは実現できません」と、阪井氏は指摘します。

そこで採用されたのが、オフィスの複合機やスキャナーと連携できるクラウドストレージサービスです。
「要は、あらゆる紙文書をスキャンして、クラウド上のファイルサーバーで共有してしまおうというものです。例えば、営業担当者に請求書が届いたら、スキャンして経理課のフォルダにアップロードする。経理課の複合機に届いたファクスは電子データとして保存する。文書の承認には電子印鑑や電子署名を利用する。といった具合です」

「会計システムとの連携も可能です。複合機でレシートをスキャンすれば、日付や金額などのテキストを画像解析して、仕訳データを自動作成できます」

文書の電子化は、経理部門だけではなく、現場部門からの評判も良いとのこと。

「社内の業務を紙ベースから電子データに変えることで、現場部門からの戸惑いの声も大きいかなと想定していたのですが、かえって喜ばれましたね。請求書や申請書を出すためにわざわざ出社する必要がなくなったことが大きいと思います」

経費精算や勤怠管理をクラウドサービスでモバイル化

PCのリモート操作と文書の電子化で、急遽、テレワークを実施する体制を整えたM社経理課ですが、阪井氏はもう一歩踏み込んで、テレワーク体制を強化することにしました。

「営業などの現場部門は、管理部門に先んじてテレワーク体制に移行していたのですが、やはり、経費申請や休暇申請などを提出するためにわざわざ出社するというケースが目立ちました」

「文書の電子化で状況は良くなりましたが、将来的な働き方改革、とくに多様な働き方を実現するためにも、この機会に現場部門と管理部門のやりとりをできる限り電子化しておこうと言うことになりました」

近年では、バックオフィス業務を効率化するクラウドサービスが数多くリリースされています。M社では、「経費精算」「勤怠管理」「給与明細」「ワークフロー」の各業務をクラウド化しました。
「これで、インターネット環境があればいつでもどこでも、経費や休暇などを申請・承認・管理できるようになりました。現場部門も管理部門も、ちょっとした手続きのために出社する必要はほとんど無くなったわけです」

「とくに勤怠管理については、出退勤の打刻もスマートフォンで簡単にできるようになりました。テレワークには必須のサービスではないでしょうか」

会計システムのIaaS化で業務効率やセキュリティを強化

今回、さまざまなクラウドサービスを活用して、テレワーク体制を短期間で構築したM社経理課ですが、これはあくまでも暫定的なものだと阪井氏は述べています。

「新型コロナウイルスのパンデミックはいつ収束するのか、テレワークをいつまで続けるべきなのか、状況は不透明です。これから先、新しい感染症や大規模災害が発生する可能性も否定できません。また、働き方改革の観点から考えても、経理部門で本格的なテレワーク環境を整えておくことは必然と言えます」

そこで、阪井氏が検討しているのが、会計システムのIaaS化/クラウド化です。

「現状、オンプレミスの会計システムをローカルPCの遠隔操作で利用していますが、ユーザー側の回線品質によっては、操作と画面との間にタイムラグが発生します。また、大切なビジネスデータを扱う以上、セキュリティもさらに強化する必要があるでしょう」

「あらかじめクラウド上に構築された会計システムであれば、ユーザーがインターネット経由で直接アクセスできるので、ローカルPCの遠隔操作よりもスムーズに利用できますし、セキュリティやデータ冗長化、サービス継続性の面から見ても安心できます」
M社では、今回の経験を踏まえて、他部門の業務システムでもIaaS化/クラウド化を検討しており、会計システムもそれに合わせる予定です。

「しかし、鉄は熱いうちに打て、です。年内にはIaaS化を実現したいですね」と、阪井氏は意気込みを語ってくださいました。
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