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業務全般制度改正 2020/02/04

2020年の青色申告は「55万円控除」と「軽減税率」に要注意

2019年度の税制改正により、青色申告特別控除、給与所得控除、公的年金等控除、基礎控除の金額が変更となりました。2020年の確定申告は新しいルールに基づいて行う必要があります。
さらに2019年は消費税の軽減税率制度が導入されたこともあり、確定申告時は注意すべき点がたくさんあります。今回は多くの企業や個人事業主が採用している青色申告制度の変更点とともに申告時に気をつけたいポイントを解説します。

青色申告特別控除の控除額が65万円から55万円に

個人事業主やフリーランスの人にとって大きな影響となるのが「青色申告特別控除の55万円への減額」です。一見すると増税のように思えますが、これには個人所得課税の基礎控除が一律10万円引き上げられたという背景があります。つまり、青色申告特別控除が10万円減額となっても、プラスマイナスゼロなのです。
さらに条件が揃えば従来通り65万円の控除も受けることができます。その場合、基礎控除額は変わらないので、合計の控除額は改正前より10万円増えることになります。

まずはそれぞれの青色申告特別控除額の条件を確認します。

■65万円控除の条件
不動産所得、事業所得がある青色申告者で、この所得に関して複式簿記により帳簿に記帳し、その帳簿に基づき貸借対照表、損益計算書(いわゆる決算書類)を確定申告書に添付して期限内に提出すること。e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行うこと。

■55万円控除の条件(従来の65万円控除の条件)
不動産所得、事業所得がある青色申告者で、この所得に関して複式簿記により帳簿に記帳し、その帳簿に基づき貸借対照表、損益計算書(いわゆる決算書類)を確定申告書に添付して期限内に提出すること。

■10万円控除の条件
上記以外で不動産所得、事業所得及び山林所得を得ている青色申告者。


※出典:国税庁「青色申告特別控除額 が変わります」

65万円の青色申告特別控除を受けるには

65万円の控除を受ける条件を、もう少し詳しく説明します。ここで重要となるのは「電子申告」と「電子帳簿保存」であり、現在55万円控除の条件にもなっている従来の条件に加えて、いずれか1つを満たせば65万円の控除を受けることができます。
それぞれの詳細は下記の通りです。

1.e-Taxによる電子申告
一つめの条件はe-Taxによる電子申告です。既に数年前から多くの人が所得税申告にe-Taxを利用していることもあり、後述する電磁記録の保存と比べると採用しやすい条件です。2016年度の調査でも半数以上の人がe-Taxによる電子申告を行っていることが判明しています。

※出典:国税庁「平成28年度におけるe-Taxの利用状況等について」

e-Taxにおける電子申告を行うには、マイナンバーカードを取得しておく必要があります。まだ持っていない人は、申請と交付に期間がかかるので注意してください。さらにe-TaxにはICカードリーダライタなど、マイナンバーカードを読み込むツールが必要です。購入時はマイナンバーカードに対応しているかをしっかり確認するようにしてください。

2.電磁的記録の備付けおよび保存
取引に関する1年分の仕訳帳、総勘定元帳について「国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」に定められた「電磁的記録の備付け及び保存」または「電磁的記録の備付け及びその電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存」を行うことがもう一つの条件です。電磁的記録とはデジタルデータのことを指す法律用語であり、つまりはデジタルデータにて保存する必要があるということです。

ただし、この方法を採用する場合、ただ単にパソコンで帳簿管理すればよいというわけではなく「適正公平な課税の確保に必要な一定の要件に従った形」という細かい指定に沿う必要があります。基本的に電子帳簿保存法に対応する会計ソフトを用いて記帳するものであり、個人で行うには少々敷居が高いものです。

また、あらかじめ税務署長等の承認が必要であり、備付けを開始する日の3カ月前までに承認申請書を提出しなくてはなりません。1月1日から備付けを開始する場合は、逆算すると前年9月30日までに申請することになります。

2020年の青色申告は増税・軽減税率にも注意

ここまでは個人事業主やフリーランスの人向けの解説でしたが、法人も含めた納税者全員に関わる大きなポイントが軽減税率制度の導入です。「旧税率8%」、「軽減税率8%」、「標準税率10%」など、複数の税率があるため、記帳は適用される税率ごとに行うなど、複数税率への対応が必要です。例えば、軽減税率8%の記帳の際には「※」や「8%」などを摘要欄に記入し、凡例も記載します。
併せて下記のような表記も必要となりました。

  • 消費税が課税されない取引(非課税取引):「非」
  • 消費税の課税対象外の取引(不課税取引):「不」
  • 輸出取引(免税取引):「免」


■帳簿類に記入する内容
帳簿では特に摘要欄における法定記載事項の記入が重要です。
  • 取引の相手方の氏名または名称
  • 取引を行った年月日
  • 取引内容
  • 取引金額

また、消費税額を計算するには、帳簿上で勘定科目ごとにそれぞれの金額を明らかにする必要があります。
  • 青色申告決算書に記載する収入や経費などの決算額を確定します。
  • 決算額のうち、課税取引金額を適用税率ごとに集計し、それ以外の金額(免税、非課税、不課税)を集計します。
  • 決算で明らかになった課税取引金額などをもとに、一般課税では課税取引金額計算書(事業所得用、農業所得用、不動産所得用)、課税売上高計算表、課税仕入高計算表を作成します。
  • 課税取引金額計算表などをもとに、次の付表と申告書(第一表・第二表)を作成します。なお、長期の賃貸借契約など旧税率(8%、5%、3%)が適用される経過措置の対象取引がある場合は「経過措置対象課税資産の譲渡等を含む課税期間用」の付表も作成します。
**********

2020年の青色申告時における注意点について説明しました。特に軽減税率制度による影響は大きいので、少しでも作業を効率化するためには会計ソフトの導入が有効です。
個人事業主、フリーランスの人は、最高65万円の青色申告特別控除を受けるための電子申告、あるいは電子帳簿保存法に対応したソフトもあるので、自分に合った方法を考えながら使うツールも検討してみてください。

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