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経理/財務消費税 2019/11/28

2023年にインボイス制度が導入されると…免税事業者が取るべき対応とは?

軽減税率制度によって区分記載請求書等保存方式が導入され、2023年10月1日からは「適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)」が採用されます。このインボイス制度について不安視されているのが、事業収益1,000万円以下の免税事業者への悪影響です。今回は、インボイス制度の開始前に知っておくべきポイントについて解説します。

インボイスとは

インボイスとは、販売対象ごとに消費税率が記載された納品書または請求書のことを指します。インボイス制度が導入されると、課税事業者は仕入先のインボイスに記載された税額のみ控除できるようになります。言い換えれば、インボイスが発行されないと仕入れの税額を差し引くことができず、納税額が高くなります。

ただし、インボイスを発行できるのは課税事業者に限られており、免税事業者はインボイスの発行はできません。

※関連記事:「飲食業界だけじゃない!?迫りくる軽減税率・インボイス制度開始に、企業の対策待ったなし!」

免税事業者の対象とは

消費税の納税義務が免除される事業者を「免税事業者」といいます。対象は中小零細企業や個人事業主のような小規模の事業者であり、売上と消費税処理の稼働が見合わない、大手企業と価格競争で勝負しづらいといった課題を解消するために設けられています。
免税事業者となるには下記の通り明確な基準が定められています。

■免税事業者の条件
  • 事業開始後2年以内
  • 前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下

上記いずれかの条件を満たせば、消費税の納税義務が免除されます。

※出典:国税庁「納税義務の免除」

ではインボイスが発行できないと具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか。

免税事業者へのデメリット

免税事業者がこれまで通りに事業活動を行う場合、先述の通り、販売先は仕入れの税額控除を受けることができません。そのため、仕入先を変更される、あるいは取引継続の要件として仕入価格の値下げを求められるという可能性が考えられます。

ただし、免税事業者の仕入額控除はインボイス制度が導入されても、すぐに完全廃止になるわけではありません。

■免税事業者からの仕入税額控除のスケジュール
期間 仕入税額控除の割合
2023年9月30日まで 控除割合:100%
2023年10月1日~2026年9月30日まで 控除割合:80%
2026年10月1日~2029年9月30日まで 控除割合:50%
2029年10月1日から 控除割合:0%(完全廃止)

※出典:国税庁「適格請求書保存方式が導入されます」

なお、課税事業者になれば当然インボイスを発行できるようになり、不利な条件となるリスクはなくなります。

しかし、これまでは必要なかった消費税の納税という負担が発生します。消費税は商品やサービスを購入した消費者から預かっている費用でもあるので、たとえ赤字であっても支払う義務があります。予想以上の税額が発生する可能性もあるので、税額がどのくらいとなるかは事前に確認しておいた方がよいでしょう。

ちなみに、課税事業者となった場合、インボイスの発行は義務となります。不正交付への罰則などもあり、従来の請求書と比べてルールが厳格化されるので注意してください。

免税事業者はどのような選択をとるべきか

免税事業者にとっては、そのまま事業活動を行うか、課税事業者になるか、難しい選択を迫られることになります。 事業の売上や予想される消費税の納税額など、様々な状況から検討していくことになりますが、取引先も重要な判断基準の一つです。

■仕入れの税額控除の問題を考慮する必要がない取引先
  • 一般消費者
  • 免税事業者

上記の取引先は、消費税の納税をする必要がないため、デメリットにつながることはありません。このような、インボイスが不要な取引先の場合は、免税事業者のまま事業を続けた方がよいでしょう。
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免税事業者にとっては死活問題になるとまでいわれるインボイス制度の導入ですが、取るべき選択肢によって影響を減らすことは可能です。自社商品の状況、競合の課税事業者の数、現時点の売上に対する消費税額などを多角的に見て、課税事業者になるか、免税事業者のまま活動するのか、慎重に検討してください。

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