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会計処理 2018/10/02

ベテラン税理士から新米経理へのアドバイス

近年の経理は、専門的な知識とスキルが必要な上、IT化の波にもさらされ、業務自体が大きく変わろうとしています。その流れの中で将来を見据えたとき、今、やるべきことは何か、どんな学びを実践するべきなのか。ベテラン税理士が自身の経験を踏まえて貴重なアドバイスを贈ります。今回の指南役は、グローバル企業のアジア・パシフィック地域本社で財務責任者として活躍するなど、企業の財務部を歴任、現在は横浜でご自身の事務所を運営しており、米国公認会計士でもある高橋和徳税理士です。

人間力がより問われる時代

これからの経理にとって最も大切な資質は何だとお考えですか。
高橋 正確さやスピードといった基本的な資質は当然として、これからはコミュニケーション能力や交渉力、共感力など、人間力がより大切になると思います。経理部は、経営者をはじめ社内のあらゆる部署とつながっています。経営者とは月次データの報告。営業部とは請求書の発行、売上・売掛金管理、回収遅延報告。製造部とは仕入・外注費支払、買掛金管理、原価計算報告。総務人事部とは給与・経費支払、年末調整、固定資産管理など、様々な業務を通じて連携しています。

そうした業務を通じて関係を育むわけですね。
高橋 そうです。各部署から資料を提供してもらわないと、経理の仕事は成立しません。いくら自分の業務のスピードを追求しても、各部署から資料が出てこない以上、業務が終わらないのです。普段から各部署と良好な関係が構築できていれば、スムーズに資料をもらえます。関係づくりは業務のスピードに直結するのです。

良好な関係を育むために、何が大切になりますか。
高橋 普段からコミュニケーションをとっておくことですね。それから、資料を請求するときは、決して上から目線にならないこと。なぜ、この資料が必要なのかをきちんと説明することも大切です。なるべく緊急にならないよう早めに請求し、期限のアナウンスも忘れずに。常に相手の立場に立ち、現場に負担をかけないよう配慮と工夫が必要です。

グローバル企業の財務責任者としての経験

それらはご自身の経験から得た教訓でしょうか。
高橋 そうですね。若い頃は自分の業務しか見えないものです。私もそうでした。一心不乱に業務を全うしようと頑張るのですが、周りが全然見えていない。各部署がどんな課題を抱えているのか、じっくり観察し耳を傾けてみると良いでしょう。経理部門は各部署をお客様とみなすくらいの気持ちでいることです。

高橋先生は、グローバル企業の海外子会社で財務責任者などを歴任されていました。
高橋 はい。海外の子会社ですから、本社に決算データを提供する必要があります。本社は、各子会社の決算を1ヶ月以内でまとめて連結決算を行い、監査を終えて開示する必要があります。単体決算の数値で投資判断をする投資家はいないので、連結決算をいかに速やかに行うかは、非常に重要なテーマです。子会社内では財務の責任者として各部署の資料提供をお願いする立場、本社に対しては資料を提供する立場です。双方の視点を持つことで、関係性を育むことの大切さを学びました。

自社を知る努力をすること

常に相手の立場に立つコツなどありますか。
高橋 若い頃は、自分の専門性を磨くことだけに注力しがちです。それだけでなく、周囲に関心を持つことが大切です。そのためには、自社を知る努力をすることです。例えば、自社の商品・サービスについて考える。競合他社の商品・サービスと比較してどこが強みか、どこが弱みか。価格と原価は適正なのか。そうした視点は、自社の事業を知ることにもつながります。

経営戦略を身につける上でも大事ですね。
高橋 そうです。自社の事業を把握することで、社外との交渉時にも活きてきます。例えば、銀行との資金調達交渉は、自社の戦略を理解していないとスムーズにいきません。そして、相手の立場に立たなければ銀行担当者が稟議を書きやすくなるようなプレゼンやアピールもできません。つまり、社内でのコミュニケーション能力は、社外における交渉力につながるわけです。

なるほど。スキルが大きくなっていく感じです。
高橋 簿記などのスキルは自分だけのスキルです。相手に対して価値を提供できるようなスキルは、大きく育っていくのではないでしょうか。それに、簿記などの正確さやスピードは、所詮テクノロジーには敵いません。これから、テクノロジーの進展に伴い代替される業務が増えていきますから、人間的なスキルがよりクローズアップされると思います。

本日は貴重なお話、ありがとうございました。

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「経理は会社の中心的な存在でなければならない」。これも、高橋税理士の言葉です。会社の扇の要として、各部署とつながり関係を育んでいく。その過程で培う人間力こそ、経理として成長するための確かな礎となります。その出発点が各部署とのコミュニケーションです。まず、明日からできることとして、それぞれの部署の現場に足を運んでみてはいかがでしょうか。そして、製品について、業務について、現場の社員の話を聞いてみてください。新しい知見と発見があるはずです。
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