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人事/労務働き方改革 2018/04/17

すぐわかる!働き方改革のここがポイント

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近年、働き方改革という言葉がメディアを賑わせています。安倍内閣が提唱し、官・民が一体となって推進しているこの働き方改革とはどんな取り組みなのでしょうか?その背景に何があり、何を変えようとしているのでしょうか。企業のバックオフィスを担う経理担当にとって、働き方改革がもたらす影響は大きいものがあります。そこで、今回は働き方改革のポイントを解説します。

働き方改革とは

2016年9月、安倍首相は内閣官房に「働き方改革実現推進室」を設置し、その取り組みを大々的に提唱しました。以来、働き方改革という言葉が各種メディアを席巻し、多くの人々の耳目を集めています。

働き方改革を簡単に紐解くと、日本の企業文化やライフスタイル、働くことに関する考え方を根底から変えていくことを意味します。日本社会は、伝統的に長時間働くことをよしとし、モーレツと形容されてきた高度経済成長期の働き方の名残が未だあります。男女による雇用や役職の不均衡、正規・非正規という2つの立場による処遇格差、子育てや介護による離職など、様々な問題も顕在化してきています。

こうした課題を見据え、一人ひとりの意思や能力を最大限に発揮し誰もが活躍できる社会をつくろうと言うのが働き方改革の目的です。政府の言葉を借りれば「一億総活躍社会実現」に向けたチャレンジと言うことができます。なぜ今、このような改革が必要なのか、その背景に迫ってみましょう。

背景① 労働力人口の減少

労働力人口とは、15歳以上のうち労働の意思と能力をもつ者の人口で、就業者(休業者)と完全失業者の合計を指します。日本は、国の経済力を示す指標の一つとされるこの労働力人口が想定以上に減少しています。総務省の調査によると、日本の労働力人口は2009年に戦後初めて15歳以上人口の6割を下回りました。

国際労働機関(ILO)によると、同年の主要国の労働人口比率は、フランスやドイツなどの西欧諸国で59.1%、アメリカは65%、中国は73.7%。いずれの国も労働人口比率は増加しています。ところが、日本だけは減少を続けているのです。労働力人口の減少は、「働いている人」と「働く意思のある人」の減少を意味します。それは、日本経済の潜在成長力の低下を招く危険を孕んでいます。

人口減少時代に突入した日本において、労働力人口を増加させるためには、非労働力人口からの流入を促す必要があります。非労働力人口とは、職場からリタイアした高齢者、職探しを諦めた人、働きに出る意思がない、あるいはなんらかの理由で働けない主婦や学生などです。こうした人々に就業機会を創出し、いかにして労働市場への参加、もしくは復帰を促していくか。それこそが働き方改革の根底に流れるテーマの一つなのです。

背景② 長時間労働

総務省の労働力調査によると、週の労働時間が60時間を超える人の割合は平成27年の時点で450万人。近年では低下傾向で推移していますが、それでもかなりの数に上ります。とくに30代男性で週労働時間が60時間以上の人は115万人で全体の16%を占めています。週60時間と言えば、土日を除いた平日で1日平均12時間の労働時間。かなりの長時間労働と言えるでしょう。

※参考資料:週労働時間別雇用者等の推移(資料出所:総務省の労働力調査)

日本では、会社に長時間残って仕事をすることを暗黙に称賛する企業文化がありました。それに対する同調圧力も強く、早く帰れない雰囲気があったり、あからさまなハラスメントがあったりするケースも見られます。過労死や自殺などが起こり、大きな社会問題となったのも記憶に新しいところです。こうした長時間労働を法改正によって是正しようとするのも働き方改革の目玉の一つです。

これまでの時間外労働に関する限度時間は、厚生労働省の告示によって定められたもので法的な拘束力はありませんでした。しかし今回の働き方改革では、時間外労働の上限を法律で定め、罰則も課すことを視野に入れるなど強制力をもたせることを目指しています。時間外労働の上限とされる労働時間は下記の通りです。

原則
週40時間を超えて労働できる時間外労働の上限は「月45時間、かつ、年360時間」

特例
臨時的な特別な事情がある場合、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても上回ることのできない時間外労働時間の上限は年720時間と規定されます。さらに、年720時間内において、一時的に事務量が増加する場合でも、最低限上回ることのできない上限が次のように規定されています。
① 休日労働を含み、2か月ないし6か月平均で80時間以内
② 休日労働を含み、単月で100時間未満
③ 原則である月45時間(一年単位の変形労働時間制の場合は42時間)の時間外労働を上回る回数は、年6回まで

※参考資料:厚生労働省「時間外労働の上限規制等」についての報告書

背景③ 低い労働生産性

労働生産性は、労働の成果を労働量で割って算出されます。つまり、労働者一人あたりが生み出す成果の指標であり、労働効率を数値化したものと言えます。この労働生産性の向上は、経済成長の礎と言われているだけに、日本の労働生産性の低さが問題視されています。

OECD加盟国の時間当たりの労働生産性を比較したグラフ(2016年/35カ国比較)があります。このデータによると、2016年の日本の労働生産性は、81,777ドル(834万円)で、OECD加盟35カ国の中で21位。統計で遡れる1970年以来、主要先進7カ国の中で最下位が続いています。2016年の労働生産性が最も高かったのは、アイルランドで168,724ドル(1722万円)、日本の約2倍となっています。

※参考資料:日本生産性本部による労働生産性の国際比較2017年版

この労働生産性をいかに改善していくかが、日本の働き方改革の大きな課題となっています。労働生産性の向上には、労働者のスキルアップと業務効率化、経営効率の改善が不可欠となり、長時間労働とも相関した重要なテーマです。この課題に対する施策を含め、様々な対応策が検討されています。

課題解決のための対策

働き方改革の背景にある課題として、「労働力人口の減少」「長時間労働」「低い労働生産性」の3つを取り上げました。これらは、それぞれ密接に相関しており単独で解決するものではありません。

例えば、労働生産性を向上させるためには、労働者のスキルアップと業務効率の改善が必要となり、それは必然的に長時間労働の是正につながります。労働力人口の減少に対応するためには、非労働力人口に含まれる主婦やリタイアした高齢者などに労働参加を促す必要があり、それは、労働環境や非正規雇用の処遇改善などの環境整備が不可欠です。そうした相関を念頭に、今、どのような対策が検討・実施されているかを見ていきましょう。

正規雇用と非正規雇用の賃金格差改善
日本の非正規雇用の労働者の賃金は、正規雇用の労働者の約6割。欧州主要国の8〜9割と比べて大きな格差となっています。これを是正するために「同一労働同一賃金ガイドライン案」が作成され、法改正の立案作業が進められています。

法改正による長時間労働の是正
先に紹介したように、原則として週40時間を超えて労働できる時間外労働の上限は「月45時間、かつ、年360時間」など、具体的な上限を設け、違反した場合の罰則なども検討されています。

高齢者の就労支援策
65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う企業等に対する様々な支援が検討されています。定年以降の再就職受入支援や就労マッチング支援も行われる予定です。

テレワークなど柔軟な働き方支援
子育てや介護等との両立を促すためテレワークの利用を推進。導入企業に対する助成金制度や実証実験による効果の検証が行われ、在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィスの利用など柔軟な働き方が支援されています。

女性の活躍を支援する環境整備
平成27年に成立した女性活躍推進法の強化策が検討されています。配偶者の収入制限も引き上げる方針。働き方改革の最重要テーマと言われる「女性が輝く社会」の実現に向けて様々な制度改正が本格化していきます。

※関連リンク:MJSが提案する「働き方改革ソリューション」!
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働き方改革は、経理部門にも大きな影響を及ぼすことが予想されます。一人ひとりのスキルアップと業務効率が求められ、そのためのITシステム・機器の導入にも拍車がかかるでしょう。テレワークを駆使した在宅勤務やモバイルワークも定着していきます。実際に筆者は働き方改革の一環として、テレワークを導入した数々の企業を取材して、その成果や課題を見聞しています。今後は、そうしたレポートやインタビューも掲載していきたいと考えていますので、経理として時代の潮流にどう対応していくべきか、ぜひ参考にしてください。

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