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経営事業計画/経営計画 2024/11/26

ROICを使いこなす!知らないとまずい自社の評価方法とは

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企業の財務パフォーマンスを評価する際の重要な指標のひとつが、資本運用効率を示すROIC(投下資本利益率)です。
ROICは、企業がどれだけ効率的に資本を利益に変えているかを評価するもので、経営改善や投資判断に役立ちます。
今回の記事では、ROICの定義や計算方法などを解説します。

ROICとは

ROIC(ロイック/Return On Invested Capital)とは、投下資本利益率とも呼ばれるもので、出資や借入金などの資金から、企業が事業活動を通じてどれだけ効率的に利益を得ているかを示す財務指標です。
ROICは企業の収益力を総合的に評価でき、経営判断において重要な役割を果たします。


ROICの計算方法
ROICは以下のように算出します。

ROIC = 税引後営業利益 ÷ 投下資本

税引後営業利益とは企業が本業で稼いだ利益のことで、売上から売上原価や販売費及び一般管理費を差引き、さらに法人税等を控除した金額を指します。
投下資本とは企業が事業活動のために実際に使用している資本のことで、株主からの出資である株主資本と、金融機関からの借入である有利子負債の合計金額を指します。


ROICの重要性
ROICは、企業が自社の資本をどれだけ効率的に使っているかを評価する方法として重要な指標です。
ROICが資本コストを上回る場合は、期待以上の利益を生み出していると判断でき、さらなる投資や事業拡大の可能性があると判断できます。
資本コストとは、企業が最低限稼ぐべき利益率のことを指しており、一般的にはWACC(加重平均資本コスト)が使用されています。


ROICとROE、ROAの違い
企業を評価する指標には、ROICの他にROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)などがあります。

ROE(自己資本利益率)
ROEは、株主資本に対する当期純利益を評価し、株主視点で企業の収益性を測る指標です。
株主が投資した資本に対して、どれだけの利益が得られているかを判断することができます。

ROE = 当期純利益 ÷ 株主資本


ROA(総資産利益率)
ROAは、企業が保有するすべての資産に対する収益性を示す指標です。
企業の総資産に対する当期純利益を評価し、企業全体の資産効率を把握することができます。
負債部分を考慮しないROEと異なり、ROAでは負債の大きさを含む総資産で測定を行います。

ROA = 当期純利益 ÷ 総資産

※関連記事:ROEとROAはどう違う?収益性分析するなら知っておきたい両者の違い


各指標を組み合わせた分析と指標の目安
ROICをROE、ROAと組み合わせて評価することで、企業や事業の状況を多角的に評価できます。
ただし、これらの指標で評価を行う際は、業種ごとに指標の目安が異なることを知っておくことが重要です。
例えば、製造業の場合は利益を生み出すために設備などへの初期投資が必要となります。
このように、資本を投じたタイミングと売上が発生するタイミングにずれが生じる業種では、ROIC、ROE、ROAの目安は低めに設定されています。
逆に、人材業など原価に対する多くの割合を労務費が占めている業種では、投下資本の回収のタイミングが比較的近くなることから、ROIC、ROE、ROAの目安は高めに設定されています。
製造業と人材業の場合の一般的な目安の例は以下の通りです。

指標 製造業の目安 人材業の目安
ROIC(投下資本利益率) 約5~10%前後 約10~15%前後
ROE(自己資本利益率) 10~20% 12~20%
ROA(総資産利益率) 5~8% 5~10%
※上記の目安は直近の企業の公開情報をもとにまとめた目安であり、必ずしもこれらの基準を超えておくべきというわけではありません。

このように、企業を評価する際には業界の特性を考慮することが大切です。

ROICの計算例と企業分析

それでは、具体的例を用いてROICを算出し、その結果をもとに企業の経営効率を分析してみましょう。

前提情報
製造業であるK社の当期の財務データは以下の通り。
税引前営業利益 5億円
税引前当期純利益 4億円
実効税率 30%
有利子負債 10億円
株主資本 15億円

ROICの計算
まず税引後営業利益を算出します。

税引後営業利益 = 営業利益 ×(1 – 実効税率)
5億円 ×(1 – 0.3)= 3.5億円

次に、投下資本を計算します。
投下資本は企業が調達した資金の総額です。

投下資本 = 有利子負債 + 株主資本
10億円 + 15億円 = 25億円

最後に、これら2つの値を使ってROICを計算します。

ROIC = 税引後営業利益 ÷ 投下資本
3.5億円 ÷ 25億円 = 14%

この結果、K社は投下した資本に対して14%の利益を生み出していることがわかりました。
K社が製造業であることを考えると、投下資本を非常に効果的に運用していると評価できます。


ROE、ROAの比較分析
次に、先ほどのデータ例を使ってROEとROAを計算してみます。
まずは、税引後営業利益から純利益を求めます。
今回の例では税引前当期純利益の金額が確認できるため、以下の算式で税引後当期純利益を計算します。

税引後当期純利益 = 税引前当期純利益 ×(1 − 実行税率)
4億円 ×(1 − 0.3) = 2.8億円 

ROEの計算
ROE = 税引後当期純利益 ÷ 株主資本
2.8億円 ÷ 15億円 = 18.7%

この結果、K社は株主資本に対して18.7%のリターンを生み出していることがわかりました。
株主から見ても、効率よく利益を稼いでいる企業であると判断することができます。

ROAの計算
ROA = 税引後営業利益 ÷ 総資産
2.8億円 ÷(10億円 + 15億円)= 11.2%

ROAについても11.2%と非常に効率よく経営が行われていることがわかりました。


ROIC、ROE、ROAの計算結果から得られる情報
ここまでの計算結果から、ROIC14%、ROE18.7%、ROA11.2%であるK社は、一般的には、株主が期待するリターンを得ながらすべての資産を効率よく運用できていると評価することができます。
ただし、実際のROICの数値は企業の資本コストと比較することが重要です。
例えば、K社の本来の資本コストが10%であればK社は資本コストを上回るリターンを生み出しているといえますが、一方で、資本コストが16%である場合にはK社にはまだ資本効率を改善する余地があると判断することができます。

ROICの強みと弱み

ここからはROICで企業を評価する際の強みと、反対に弱みとなるポイントを解説します。


ROICの強み
まずは強みから確認していきましょう。

企業の財務操作の影響を受けにくい
ROICは、企業の純粋な資本効率を測る指標であるため、経営者などによる財務的な操作が難しいという特性があります。
ROEやROAは自己資本や有利子負債の金額を操作することによって一時的にその数値を高めることができますが、ROICではそれが難しいため、より客観的に収益力を測ることができます。

細かい単位で使用できる
ROICは営業利益を分子に使用するため、純利益を使用するほかの指標よりも、事業や部門などの小規模単位で数値の集計をしやすいという特徴があります。
そのため、企業全体だけでなく各事業部や投資案件ごとの効率性を比較して評価することもできます。

株主目線でも金融機関目線でも評価できる
ROICの分母には株主資本だけでなく有利子負債も含まれていることから、企業全体の資本効率を評価することができます。
ROICの数値が好調であれば、株主にも金融機関にも自社の収益力が高いと示すことができます。


ROICの弱み
一方で、ROICの弱みは以下の通りです。

業界や企業ごとの差が大きい
先述した通り、ROICは業種によって基準となる数値が大きく異なります。
そのため、異なる業界間での単純なROIC比較は行いにくい側面があります。

短期的な利益変動に影響されやすい
ROICは、収益の指標として営業利益を使用するため、短期的な利益変動の影響を受けやすい指標です。
そのため、中長期的な経営判断を行うにあたってはROEやROAをはじめとする他の指標との組み合わせが必要になります。

金額ベースでの評価が困難
ROICはその性質上結果が「%」で表現されるため、金額ベースの利益や損失を具体的に評価する際には不向きです。
大規模なプロジェクトなどの場合は、具体的な収益やコストがどの程度になるか金額ベースで評価することも重要となるため、注意が必要です。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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ROICは、企業が調達した資本をどれだけ効率的に運用して利益を生み出しているかを評価する重要な指標です。
しかし、ROICにも本文に記載した通りの弱みがあるため、状況によってはROEやROAなどの他の指標と組み合わせての評価が必要となるでしょう。
企業の収益性や資産効率を多面的に捉えることで、より精度の高い経営判断が期待できます。

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