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人事/労務労務管理 2024/10/08

解雇予告手当は絶対に支払うもの?従業員を解雇する際の手続きとは

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企業は、時に従業員を解雇せざるを得ない局面に置かれることがあります。
解雇は法的手続きや要件が厳格に規定されており、企業側に不適切な対応があった場合は、高額な賠償や訴訟リスクにつながる可能性のあるものです。
本記事では、解雇の基礎知識、具体的な手続き、そして解雇予告手当について解説し、リスク管理の観点から企業が行うべき対応策を解説します。

解雇の種類と手続きの概要

企業側の判断で従業員との雇用契約を終了させることを解雇といいます。
解雇には状況によって種類があり、注意する点もそれぞれ異なります。


解雇の種類
解雇には以下の種類があります。

普通解雇
従業員の能力不足や勤務態度、健康状態などによる就業不能を理由とした解雇が普通解雇です。
普通解雇を進める際は、従業員に問題改善の機会が与えられたかどうかや、解雇が合理的かつ適正な手続きによるものであるかが厳しく判断されます。
場合によっては裁判所で解雇を無効とされることもあるため、事前に評価基準や改善指導を徹底することが重要です。

整理解雇
整理解雇は、企業の経営上の理由から人員整理として行われるものです。
日本の判例においては、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 人員削減の必要性
    経営が悪化し、人件費削減が避けられない状況にあること。
  • 解雇回避努力の有無
    役員報酬の削減や希望退職の募集など、解雇以外の手段を検討すること。
  • 人選の合理性
    解雇対象者の選定が公平かつ客観的であること。
  • 手続きの妥当性
    労働組合や従業員との協議が適切に行われ、説明が十分に尽くされていること。
これらの条件が不十分である場合、整理解雇は無効とされ、企業は多額の賠償を命じられることがあります。

懲戒解雇
懲戒解雇は、従業員の重大な規律違反や不正行為に対する厳しい処分です。
懲戒解雇は即時解雇が可能で、通常は退職金の支給もありません。
企業の運営に重大な影響を与える行為であること、就業規則に明記された懲戒事由に該当することなどで懲戒解雇を行うことができますが、解雇理由が軽微な場合、裁判所で無効とされることもあるため慎重な判断が必要です。

諭旨解雇
従業員に重大な違反行為があった際に、退職届の提出を促す形で実施されるのが諭旨解雇です。
懲戒解雇と異なり、諭旨解雇は、企業に退職金制度がある場合に高い可能性で退職金が支給されます。
ただし従業員との合意が前提となるため、企業は説明責任を果たし、誠実に対応する必要があります。


解雇手続きの流れ
解雇を行う際は、以下の手順に従い、法的リスクを回避することが重要です。

解雇前の準備
まずは労働契約書や就業規則と照らし合わせ、解雇の理由が合理的であるかを確認します。
解雇理由となる従業員の行為や業務状況を記録に残し、トラブルに備えることも重要です。

解雇予告と解雇予告手当
労働基準法では、従業員を解雇する場合、企業は30日前に予告を行うか30日分の平均賃金に相当する「解雇予告手当」を支払うこととされています。
即時解雇を行う場合でも、原則として解雇予告手当が必要となります。

解雇通知
従業員に解雇を通知します。
後の法的紛争を防ぐため、通知は必ず解雇理由や解雇日を明記した書面で行い、保管しておきます。
口頭での通知や曖昧な理由の記載は、解雇が無効となるリスクがあるため、注意しましょう。

解雇予告手当とは

解雇予告手当とは、解雇の30日前に解雇予告が行われなかった場合に支払われる手当のことです。
企業が従業員を即時解雇する際、従業員の生活を守るために支払われる補償であり、労働基準法に基づいて30日分の平均賃金が支払われることとされています。


解雇予告手当の支払いが免除されるケース
以下の条件に該当する場合、企業は労働基準監督署の認定を受けることで、手当の支払いを免除されます。

天災事変その他やむを得ない事由
天災や大規模な事故など、不可抗力によって事業の継続が不可能となった場合、解雇予告手当の支払い義務が免除されます。
例えば、火災や地震などによる事業所の崩壊や、それに伴う事業停止が該当します。
ただし、経営不振や経営上の問題での事業停止はこの条件に当てはまりません。

事業の継続が不可能な場合
事業全体が継続不可能と認められる場合、解雇予告手当の支払いが免除されることがあります。
例えば、事業の大部分が停止し、再開の見込みがない場合が該当します。
ただし、事業の一部のみの停止や、再開の見込みがある場合は、この条件には該当しません。

労働者の重大な過失
従業員の重大な過失や違法行為が原因で解雇する場合、解雇予告手当の支払いは不要となります。
例えば、以下のような行為が含まれます。

  • 刑事犯に該当する行為(窃盗、横領、傷害など)
  • 職場秩序の著しい乱れ(賭博、暴力行為など)
  • 経歴詐称(採用時の虚偽申告)
  • 無断欠勤(正当な理由のない2週間以上の無断欠勤)
※参考資料:厚生労働省「解雇予告除外認定申請について


解雇予告手当の計算方法
解雇予告手当の金額は、「平均賃金 ×(30 – 解雇予告期間の日数)」で計算されます。
例えば、10日前に解雇予告を行った場合、20日分の平均賃金を手当として支払う必要があります。
平均賃金は、解雇前3カ月間の賃金総額をその期間の日数で割って算出します。


解雇予告手当の支給手続きと税務処理
解雇予告手当は、退職所得として扱われ、所得税法上源泉徴収の対象となります。
企業は、「退職所得の受給に関する申告書」を従業員から受け取り、それに基づいて源泉徴収を行った後の金額を支給します。
申告書が提出されない場合、源泉徴収の税率は20.42%となります。
また、解雇予告手当を含む退職手当の支給後は、源泉徴収票も交付する必要があるので忘れないようにしましょう。

解雇を進める際のポイント

解雇は企業にとっても従業員にとっても大きな影響があるため、適切なリスク管理が必要です。
解雇の内容でお互いが納得できない場合、訴訟に発展し、最悪の場合は不当解雇として企業に多額の賠償金が発生することもあります。
以下では、リスク管理の観点から、解雇を進める際のポイントを解説します。


解雇理由の明確化
解雇を行う際、企業は解雇理由を明確かつ具体的に示す必要があります。
特に、懲戒解雇や諭旨解雇の場合、従業員の業務状況や問題行動に関する客観的なデータや証拠を揃えておくことが重要です。


法的手続きの遵守
解雇の際は法的手続きを遵守する必要があります。
解雇予告の有無、解雇通知の内容や形式など、すべての手続きが法律に沿って進められているかの確認が重要です。
手続きに不備がある場合、解雇が無効となる可能性もありますので注意しましょう。


解雇に至るまでの証拠などの保存
解雇に至るまでの従業員の問題行動や事前面談の内容については、記録として社内に残しておくことが重要です。
特に、解雇通知前に従業員に指導を行った際の記録や、毎年の評価資料などは、仮に解雇後に訴えが提起された場合にも強い証拠となります。


以上が解雇を進めるにあたって留意すべきポイントとなります。
ただし、実際に解雇を進める際には、労働法などに詳しい専門家の助言を得て対応するのが良いでしょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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解雇は、企業にとっても従業員にとっても重大な法的・社会的影響があるものです。
法令や自社の就業規則を確認し、必要な手続きと従業員への十分な説明を行うことで、お互いに納得できる形で手続きを進められるでしょう。

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