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経理/財務会計処理 2024/08/29

企業会計原則とは?正しい会計処理で企業価値評価の高い財務諸表を作成しよう

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会計処理の基礎となるのが企業会計原則です。
しかし、法律として定められているものではないため、その重要性を見逃してしまう担当者も多いかもしれません。
今回は、企業会計原則の概要と一般原則の内容について解説したいと思います。

企業会計原則とは

企業会計原則とは、簡単にいえば財務諸表を作成する規範のことです。
企業がそれぞれの会計処理方法で自由に財務諸表を作成してしまうと、外部の人が処理の正確性を判断できなくなり、他社と比較するのも困難になります。
そのため、日本の会計では一定のルールに沿って財務諸表を作成することが求められています。
このルールが企業会計原則です。


企業会計原則の位置づけ
企業会計原則は法律で定められているものではなく、法的な強制力はありません。
しかし、会社法・金融商品取引法・法人税法などの法律は、一般に「公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うべき」としています。
この「公正妥当と認められる企業会計の慣行」とは、1949年に定められた企業会計原則と2001年以降に公表されている企業会計基準を合わせたものを指しているとされています。
したがって、法的拘束力はないものの、企業は企業会計原則に沿った会計処理を行うことが求められており、経理担当者はその内容をしっかり理解しておく必要があります。


企業会計原則と企業会計基準
企業会計原則は会計の基本的な考え方を示すものであり、企業会計基準はその原則に基づいたより具体的な会計処理の方法を定めたものです。
それぞれの特徴は以下の通りです。
企業会計原則 企業会計基準
  • 1949年に公表された
  • 会計の実務慣習の中から一般に公正妥当と認められるものを要約したもの
  • 企業会計の基本的な考え方や指針を示すもので、具体的な会計処理方法については詳しく触れていない
  • 2001年から設定が開始された
  • 財務諸表を作成する際の具体的なルール
  • 企業会計原則の考え方をベースにしつつより具体的な会計処理について記載されている
  • 日本では日本会計基準、米国会計基準、IFRS、J-IFRSなど複数の会計基準から選択して適用することが認められている

企業会計原則 一般原則の内容

企業会計原則は、一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則などから構成されています。
ここからは特に重要な会計処理の基礎となる7つの一般原則を解説します。


1. 真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。

最も重要な原則とされている真実性の原則は、財務諸表には実際の財政状態や経営成績を偽りなく報告すべきとする原則です。
なお、ここで記載されている真実とは絶対的な真実ではなく相対的な真実とされており、同様の取引であっても、企業の状況に応じて、複数の会計処理や表示方法が認められています。


2. 正規の簿記の原則
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

正規の簿記の原則は、企業はすべての取引を仕訳して記録し、正確な会計帳簿を作成すべきであることを示した原則です。
ここでいう正確な会計帳簿とは、網羅性・立証性・秩序性の3つの要件を満たしたものとされており、特に言及はされていないものの一般的には複式簿記が必要とされています。


3. 資本利益区別の原則
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。

資本剰余金とは資本取引から生じた剰余金のことで、原則として会社内に留めておくべきものです。
また、利益剰余金とは損益取引から生じた剰余金のことで、利益の留保額として配当の財源となるものです。
これらが混同された場合、企業の財政状態・経営成績が正確に示せないため、資本取引と損益取引を明確に区別して処理・表示すべきことを指したのが資本利益区別の原則です。


4. 明瞭性の原則
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。

明瞭制の原則は、利害関係者が容易に理解できるよう、財務諸表の内容は明瞭にすべきとする原則です。
財務諸表には正しい会計科目を用いてわかりやすく表示することが重要です。
なお、正規の簿記の原則によってすべての取引は正確な会計処理を行うこととされていますが、明瞭性の原則ではわかりやすい内容が求められていることから、企業経営上そこまで重要でない項目については、本来の厳密な会計処理ではなく簡便な方法も認められています。
これを重要性の原則といいます。
例えば、本来、消耗品は貯蔵品として処理すべきものですが、重要性の乏しいものについては、購入時または払出時に費用として処理することが認められています。


5. 継続性の原則
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。

企業は一度採用した会計処理方法を原則として毎期継続して使うべきとするのが、継続性の原則です。
継続性が重視されるのは、一つの会計事実に二つ以上の会計処理などの選択適用が認められている場合です。
この場合、期ごとに異なる会計処理を行うと、同一の会計事実について異なる利益が算出されることになり、財務諸表の期間比較も困難になります。
この時、会計処理の一貫性を保てば、企業の業績を正しく評価できます。
なお、会計処理を変更すること自体は可能ですが、重要な変更を加えた際は財務諸表への注記が必要になります。


6. 保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

保守主義の原則は、企業が既に認識しているリスクなどがあれば、その内容を可能な限り財務諸表にも反映すべきとする原則です。
この原則に従い、利益はなるべく遅く計上し、費用はなるべく早く計上するのが一般的です。
例えば、保有する債権について回収できる見込みが低く、貸倒引当金を設定したとします。
このタイミングでは、まだ債権が回収できていないわけではないので実際に損失は生じていませんが、保守主義の原則に従うと、貸倒引当金繰入をその事業年度の損益計算書に費用として計上することになります。
ただし、過度にこのような会計処理を行うと、真実性の原則に反する場合もあるため、注意が必要です。


7. 単一性の原則
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。

単一性の原則とは、様々な目的で利用される財務諸表において、その内容には一貫性を持たせるべきとする原則です。
異なる財務諸表間で矛盾が生じないように整合性を保つことが求められています。

企業会計原則のポイント

会計処理において基本となる企業会計原則ですが、実務ではどのように捉えていくべきでしょうか。


企業会計原則に反した場合
企業会計原則に反する会計処理を行った場合、財務諸表の信頼性が低下することとなり、以下のような影響が生じる可能性があります。

企業価値評価への影響
最も重要な真実性の原則に反した会計処理が行われた場合や、単一性の原則に反して二重帳簿がある場合などは、財務諸表が企業の実態を正確に示せなくなります。
特に、不正な会計処理や粉飾決算が行われていることが判明した場合は、信頼が失墜し、企業価値評価の低下にもつながることになります。

財務諸表の比較可能性の低下
明瞭制の原則が守られていなかったり、継続性の原則に反して会計処理方法が頻繁に変更されていたりすると、財務諸表の比較可能性が損なわれます。
この場合、投資家や債権者などの利害関係者は、企業の業績を適切に評価できなくなります。


企業会計基準の改正と企業会計原則について
近年における会計制度の改正は、企業会計原則ではなく企業会計基準の改正として行われています。
個別に企業会計基準に記載されている事項は、企業会計原則より優先して適用されますが、特に規定されていない内容についてはこれまでどおり企業会計原則が適用されます。
したがって、企業会計原則は会計処理における基本的な考え方として今後も企業の会計実務において遵守していくことが重要です。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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企業会計原則は会計の基本的な指針として日々の実務に深く関わっています。
企業の財務諸表の信頼性を確保するためにも、経理担当者として企業会計原則に従った会計処理や財務諸表作成ができているのか、確認するようにしてくださいね。

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