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経理/財務税務(税金・節税) 2024/07/09

接待飲食費として損金算入できるのは1万円まで!インボイス制度も影響してくる交際費等事情とは?

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令和6年度税制改正により、交際費等を接待飲食費として損金算入する際の金額基準が1万円に引き上げられました。
今回は今後の接待飲食費の考え方について、インボイス制度の影響も踏まえて解説します。
中小企業、大企業にかかわらずすべての企業で必見です!

接待飲食費の金額基準改正の経緯

税務上、交際費等にあたる支払いの金額は原則として損金不算入となります。
交際費等とは、企業が事業に関係のある得意先や仕入先に対して接待などのために支出する、交際費、接待費、飲食費などの費用のことです。
ただし、このうち飲食代や弁当代など、一定の金額以下の飲食費(接待飲食費)に限っては交際費等から除かれ、すべての法人で損金算入可能となります。

※関連記事:交際費はどこまで損金算入できる?年末年始の事例で解説!

接待飲食費における損金算入可能な金額の基準は、これまで1人あたり5,000円でしたが、2024年4月から1万円に引き上げられました。
なお、支払いが1人あたり1万円を超えた場合は、超えた部分だけが交際費等の範囲から除外されるのではなく、費用全額が交際費等となり、損金不算入となります。

※関連記事:中堅企業の新しい定義とは?令和6年度税制改正で変わる企業の分類をチェック!


接待飲食費とするための要件
接待飲食費を交際費等から除外するためには、帳簿書類によって接待飲食費であることが明らかにされていなければなりません。
また、以下のような内容を明記したインボイスなどの書類の保存も必要になります。

  • 支払いの年月日
  • 参加者の氏名もしくは企業名や関係
  • 参加者の数
  • 飲食などに要した費用の額
  • 飲食店の名前と所在地
  • その他接待飲食費であることを明らかにするために必要な事項
なお、支払金額に接待飲食費の特例が適用できず交際費等となる場合には、法人税の確定申告書に別表15(交際費等の損金算入に関する明細書)を添付する必要があります。


接待飲食費の金額基準改正の経緯
全額経費にできる接待飲食費の金額基準が1人あたり5,000円から1万円に引き上げられた背景には、日本国内の経済循環をよりよくするという意図があります。
具体的には、企業における取引先の維持や新規顧客の拡大、及び飲食店における物価高を反映した客単価の引き上げによる利益拡大などを目的としています。

接待飲食費へのインボイス制度の影響

交際費等の金額に係る計算には、消費税も関係します。
経理処理を税込経理方式で行っている場合は、交際費も税込で計算します。
一方で税抜経理方式の場合は、消費税と本体価格に分けて計算を行います。
この時、交際費等に関しては、本来、本体価格で計算すればいいのですが、インボイス制度が導入されたことで仕入税額控除分以外の金額を考慮する必要が出てきました。
インボイス制度下では、支払先の飲食店が免税事業者だった場合、課税仕入れは原則として仕入税額控除とすることができません。
ただし、インボイス制度開始から6年間は、以下の経過措置が認められています。

  • 最初の3年(2026年9月30日まで)は課税仕入れのうち80%相当額を控除可能
  • その後の3年(2029年9月30日まで)は課税仕入れのうち50%相当額を控除可能
※経過措置終了後は原則通り、免税事業者からの仕入れについては仕入税額控除が適用できなくなります。

上記の通り、2026年9月30日までは、控除可能な80%を差し引いた残りの20%を交際費として処理する必要があります。


インボイス制度を考慮した接待飲食費の仕訳例
免税事業者からの課税仕入れに関する経過措置を考慮した具体的な計算例を紹介します。
前提条件として、取引日は2024年7月、経理処理は税抜経理方式で、インボイスの保存要件や接待飲食費の形式要件については満たしているものとします。

事例1:課税事業者の店舗での飲食費
課税事業者の飲食店で、飲食費として2人で税込22,000円を支払った場合。
借方 金額 貸方 金額
接待飲食費 20,000 現金 22,000
仮払消費税等 2,000
支払先の飲食店は課税事業者なので、消費税分は全額仕入税額控除が可能です。
本体価格は2人で20,000円となりますので1人あたりの接待飲食費は10,000円となります。
これは、1万円以下と判断できるので、今回の接待飲食費は交際費等の範囲から除いて全額を損金算入することができます。

事例2:免税事業者の店舗での飲食費
免税事業者の飲食店で、飲食費として2人で税込22,000円を支払った場合。
借方 金額 貸方 金額
接待飲食費 20,000 現金 22,000
仮払消費税等 2,000
接待飲食費 400 仮払消費税等 400
消費税については、20,000円のうち10%相当の2,000円が該当しますが、支払先の飲食店は免税事業者なので、仕入税額控除の適用は経過措置で認められる80%相当額までとなります。
そのため、20%分の400円は接待飲食費に追加する必要があります。
20,000円に400円を足すと20,400円となり、1人あたりの接待飲食費は10,200円となります。
この場合、200円分が1万円を超えてしまっているので、損金算入できないと判断することができます。

事例3:免税事業者の店舗での飲食費
免税事業者の飲食店で、飲食費として2人で税込20,020円を支払った場合。
借方 金額 貸方 金額
接待飲食費 18,200 現金 20,020
仮払消費税等 1,820
接待飲食費 364 仮払消費税等 364
事例2と同じように計算すると、仕入税額控除が適用できない20%分の金額は364円となります。
18,200円に364円を足すと18,564円となり、1人あたりの接待飲食費は9,282円となります。
この場合の支払いは1人1万円以内となるので、損金算入可能と判断することができます。

いま、担当者に求められること

先述の通り、接待飲食費を損金算入できるかどうかは、支払先の飲食店が課税事業者であるか免税事業者であるかによって、大きく異なります。
事例として紹介したインボイス制度の経過措置も、2026年には課税仕入れ可能な割合が変わってきますので、十分に注意が必要です。
担当者は、これらの状況への理解を深めつつ、いくらまでなら損金算入できるのか、正確に社員に周知しましょう。

なお、飲食業界側では、これまでの金額基準に沿ってメニューの価格設定やコース料金の金額設定を5,000円基準で設定しているものがあるかと思います。
今回の改正を機に、より客単価を高くできるメニュー開発やコース設定についても検討してみるとよいでしょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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接待飲食費の金額基準が1万円以下となったことで、社外の人を交えた飲食費を全額損金算入できる可能性が高くなりました。
企業取引をより円滑に進められるよう、社内規定の改正や社内向け通知を忘れないように行っていきましょう。

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