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経営事業計画/経営計画 2024/07/02

四半期報告書が廃止に!これからにおける半期報告書と四半期決算短信の重要性

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2023年に金融商品取引法の改正法案が成立し、四半期報告書が廃止されることになりました。
これにより、有価証券報告書の提出義務会社は半期報告書の提出が義務付けられます。
今回はこうした四半期での情報開示にまつわる最新情報をお届けします。

2024年から四半期報告書が廃止に

金融商品取引法の改正により、2024年から四半期報告書が廃止されることとなりました。
上場企業など、有価証券報告書の提出を行う企業については廃止に伴った対応が求められています。


有価証券報告書と関連する情報
四半期報告書が廃止された背景や改正内容の具体的な解説の前に、まずは四半期報告書がどういったものであるのか確認していきましょう。

有価証券報告書とは
有価証券報告書とは、上場企業などが投資家に向けて開示する、財務諸表や事業の概況などの情報のことです。
金融商品取引法などの法律により、条件を満たす企業については1年に1度、有価証券報告書の開示が義務付けられています。
この時開示する財務諸表には、その事業年度の決算に基づいて作成された、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書などが含まれます。

四半期報告書とは
有価証券報告書は毎事業年度作成されるものですが、1年に1回の報告では企業の状況をタイムリーに知ることはできません。
こうした背景から四半期報告書や半期報告書の提出が求められるようになりました。
四半期報告書とは、有価証券報告書で扱う財務諸表や事業の概況などの情報を四半期(3カ月)ごとに作成するものです。
年3回、各四半期終了後45日以内に提出・開示されます。
なお、四半期の財務諸表の開示内容については一部簡略化することが認められています。
例えば、第2四半期以外はキャッシュ・フロー計算書の提出を省略できたり、連結財務諸表提出会社については単体での個別財務諸表の提出を省略できたりします。
また、四半期決算特有で年度決算よりも簡易な会計処理も認められています。

半期報告書とは
半期報告書とは、有価証券報告書で扱う財務諸表や事業の概況などの情報について、事業年度の開始から第2四半期までをまとめたものです。
提出する財務諸表は中間貸借対照表や中間損益計算書となります。
また、半期報告書でも、四半期報告書と同様に有価証券報告書よりも簡易な開示内容や会計処理が認められています。
なお、四半期報告書の義務がある企業では、第2四半期報告書が同様の情報にあたるため、半期報告書は利用されていませんでした。
しかし四半期報告書が廃止となったことで、半期報告書の提出企業が増える見込みです。

決算短信とは
決算短信とは、経営成績や財政状態などの決算サマリー、配当の状況、今後の業績予想など、企業の決算に関する情報をまとめたものです。
証券取引所の上場規程により、上場企業を対象に作成・公開が求められています。
有価証券報告書との違いは、根拠とする規定が異なることや、公開される財務情報についてより簡素なものとなっている点にあります。
なお、決算短信についても、有価証券報告書と同様に四半期決算短信があります。


四半期報告書見直しの背景
四半期報告書と四半期決算短信はどちらも作成が義務付けられているものですが、内容も開示のタイミングも似ています。
このことから、企業の負担軽減を目的に、四半期報告書の代わりに四半期決算短信の情報を活用できるのではないかという見解が示されました。
こうした背景により、2024年以降に開示予定のものから四半期報告書は順次廃止されることになりました。

※参考資料:金融庁「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ 報告(2022年12月27日)

四半期報告書廃止に関する具体的な改正内容

四半期報告書に関連する部分として、金融商品取引法では以下の改正が行われています。


改正内容
具体的な内容は以下の通りです。

四半期報告書制度の廃止と半期報告書の提出義務化
一定の上場企業は、期中の業績などの開示について四半期ごとに四半期報告書の提出が義務付けられていましたが、今回の改正により廃止となりました。
今後は四半期報告書に代えて半期報告書の提出が義務付けられることとなります。

半期報告書や臨時報告書における公衆縦覧期間の延長
四半期報告書の廃止に伴い、半期報告書や臨時報告書の重要性が高まることから、公衆縦覧期間が延長されました。
公衆縦覧期間とは一般の投資家や関心のある公衆が開示資料を閲覧できる期間のことです。
半期報告書は現行の3年から5年に、臨時報告書は1年から5年に延長されることとなり、有価証券報告書の公衆縦覧期間と同じになりました。


改正後に必要な決算報告書
改正後のタイムラインと必要な決算報告書の概要は以下の通りです。
1Q
※45日以内
2Q
※45日以内
3Q
※45日以内
年度
※90日以内
これまで
  • 四半期報告書
  • 四半期決算短信
  • 四半期報告書
  • 四半期決算短信
  • 四半期報告書
  • 四半期決算短信
  • 有価証券報告書
  • 年度決算短信
改正後
  • 四半期決算短信
  • 半期報告書
  • 四半期決算短信
  • 四半期決算短信
  • 有価証券報告書
  • 年度決算短信
※上記は概要であり詳細は企業区分によって異なります。
※出展:金融庁「企業会計審議会第54回監査部会 事務局資料1


提出者ごとに四半期報告書や半期報告書の提出期限を記載すると、以下のようになります。
提出者 提出期限
上場会社等
(以下の特定事業会社を除く)
45日以内
上場特定事業会社 60日以内
非上場会社 3カ月以内

2024年以降の実務における対応について

ここからは実務においてポイントとなる点を確認していきましょう。


改正の適用時期
四半期報告書の廃止に関する金融商品取引法の規定は、2024年4月1日以後に開始する四半期会計期間に係る第1・第3四半期決算短信から適用されています。
例えば3月決算の企業や12月決算の企業については以下のようになります。

3月決算の企業
2024年3月期の第1四半期である4月~6月末までの期間から四半期報告書が廃止となり、四半期決算短信の開示が義務付けられます。
半期報告書は4月~9月末までの期間について提出することとなります。

12月決算の企業
2025年12月期の第1四半期である1月~3月末までの期間から四半期報告書が廃止となり、四半期決算短信の開示が義務付けられます。
半期報告書は1月~6月末までの期間について提出することとなります。


四半期報告書廃止後の四半期決算短信
四半期報告書の廃止後は、四半期決算短信の情報がより重要となるため、特に半期報告書と有価証券報告書の提出がない第1四半期と第3四半期に関しては開示内容についても充実化する指針が示されました。
具体的には、現行の注記事項部分に、セグメント情報やキャッシュ・フローに関する注記などが追加されます。
なお、四半期報告書では監査人によるレビューが求められていましたが、四半期決算短信ではレビューの有無を開示するのみとなっており、レビュー自体は原則任意とされています。
決算短信は企業のホームページでも公開されているため、初めて作る場合は同業種企業の決算短信を参考にすると良いでしょう。
例えば、日本取引所グループの決算短信はこちらから確認できます。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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四半期報告書が廃止されたことにより、四半期決算短信と半期報告書の役割が増し、これらにおける詳細な財務情報の開示が求められています。
経理担当者は、新たな開示要件に対応し、迅速かつ正確な情報提供を行う必要があります。
上場企業はもちろん、そのほかの企業についても、こうした開示の動向は注意して確認していく必要があるでしょう。

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