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経理/財務税務(税金・節税) 2023/12/21

源泉所得税は所得によって税率が違う!整理しておきたい源泉徴収の基礎知識

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給与や報酬の支払時など、源泉所得税に関する業務は実務でも頻繁に登場するものかと思います。
今回は源泉徴収の対象となる所得や税率などを確認したうえで、源泉所得税の納付に関する手続きを解説します!

源泉所得税とは

源泉所得税とは、給与や報酬などが支払われる際、支払者側で支払額から差し引いて納税する所得税のことです。
このように、給与や利子、報酬などの特定の所得について、支払者が税額分を差し引いて納税することを源泉徴収といいます。
本来、所得税は申告納税制度により、納税者本人がその年の所得金額とそれに対する税額を計算したうえで確定申告を行い、納税することになっています。
しかし、個々がそれぞれで確定申告を行うと、申告を行う納税者側にも、取りまとめを行う税務当局側にも、大きな負担がかかります。
そのために支払者側でまとめて納税する源泉徴収制度が採られているのです。
源泉徴収される税金は源泉所得税のほかにも源泉復興特別所得税などがあり、これらをまとめて源泉徴収税といいます。


源泉徴収義務者
源泉徴収制度では、支払金額から源泉徴収税額を差し引いて国に納付する義務のある人や団体を源泉徴収義務者といいます。
源泉徴収の対象とされている所得の支払者は、法人、組合、官公庁であっても、また、個人や人格のない社団・財団であっても、すべて源泉徴収義務者となります。
ただし、個人については以下の例外規定があります。

常時2人以下の家事使用人だけに給与を支払っている個人の支払い
2人以下のお手伝いさんのような家事使用人に対してだけ給与を支払っている場合には、源泉徴収は不要です。
ただし、家事使用人ではなく、従業員に対して給与を支払っている個人は、源泉徴収義務者となります。

源泉徴収義務者でない個人が支払う弁護士法人等の報酬・料金
例えば給与所得のみのサラリーマンなど、源泉徴収義務者でない個人が確定申告などをするために税理士に対して報酬を支払った場合などは、源泉徴収は不要とされています。

※関連記事:源泉所得税の計算は難しくない!納付期限までに適切な処理を行うには

源泉徴収が必要となる所得と税率

源泉徴収される所得の対象は、国内において以下などが該当します。

  • 給与等・退職所得等・公的年金等
  • 利子等・配当等
  • 報酬・料金等
税率は所得によってそれぞれ異なるため、注意が必要です。


給与等・退職所得等・公的年金等
給与や退職所得、年金などについては、原則として支払いの際に源泉徴収をする必要があります。
ただし、先述の通り、2名以下のお手伝いさんに対してのみ給与などの支払いを行っている個人など、一定の条件を満たす場合には源泉徴収が不要となることもあります。

税率
給与であれば5%~45%など、各所得の区分で支給金額に応じた税率となります。
具体的な税率は科目ごとに源泉徴収税額表に定められているため、支給時には税額表を確認して源泉徴収を行います。

※参考資料:国税庁「令和5年分 源泉徴収税額表


利子等・配当等
預貯金の利子や、法人が支払う剰余金の配当などで、一定のものについては源泉徴収が必要です。

税率
利子所得については、原則として15.315%の所得税及び復興特別所得税での源泉徴収が必要となります。
内国法人に対する配当所得についての源泉徴収税率は、以下の通りです。
対象となる配当 所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税率
上場株式等の配当等 15.315%
※左記のほか、原則として住民税5%も課されます。
上場株式等以外の配当等 20.42%
【2013年10月より改正】完全子法人株式等に係る配当等の源泉徴収の廃止
2023年10月から、完全子法人株式等や関連法人株式等で一定の要件を満たす者に係る配当等については源泉徴収が不要となりました。
これまで、子会社が親会社に対して利益を配当として支払う際には、親会社側で以下のような手続きが必要でした。
  • 子会社の配当の支払い時に20.42%を源泉徴収して税務署に納付
  • 親会社は法人税の確定申告の際に、上記の源泉徴収された金額について、所得税額控除の適用を受けて所得税の還付を受ける(配当以外の事象で税金を支払う場合も支払い税金の金額から源泉徴収税額分は減額される)
しかし、親会社と子会社との間での配当について源泉徴収された税額は結局還付されることになるため、源泉徴収自体が無意味となることが問題となっていました。
そこで制度の見直しが行われ、親会社に支払われる完全子法人株式等と関連法人株式等に係る配当等については、原則として源泉徴収の対象外とされることになりました。

※完全子法人株式等とは、親法人の保有割合が発行済株式の100%であるものをいいます。また、関連法人株式等とは、原則として発行済株式の1/3超を直接保有しているものをいいます。
なお、これらの要件を満たす株式以外の配当については、これまで通り源泉徴収が必要です。



報酬・料金等
報酬や料金のうち一定のものについては、源泉徴収が必要となります。
なお、例えば謝礼や取材代など、源泉徴収の対象ではない名目での支払いであっても、実態が報酬や料金に該当するものであれば、源泉徴収が必要になります。

税率
報酬や料金のうち、源泉徴収が必要になるものの代表例と税率は以下の通りです。
源泉徴収の対象となる報酬・料金等 源泉徴収税額の計算
弁護士、税理士などの業務に関する報酬・料金 支払金額 × 10.21%
同一人に1回に支払う金額が100万円を超える場合は、その超える部分については20.42%
原稿料、デザイン料、講演料、翻訳料、著作権の使用料など
プロ野球選手、プロサッカー選手などの職業運動家などの業務に関する報酬・料金
芸能人などに支払う出演料など
司法書士、土地家屋調査士、海事代理士の業務に関する報酬・料金 (支払金額 - 1万円) × 10.21%
事業の広告宣伝のための賞金 (支払金額 - 50万円) × 10.21%
社会保険診療報酬 (その月中の支払金額 - 20万円)× 10.21%
消費税の取り扱い
報酬や料金の金額の中に消費税が含まれている場合、原則として税込の金額が源泉徴収の対象となります。
ただし、請求書などに報酬・料金の額と消費税の額が明確に区分されて記載されている場合は、税抜の額を源泉徴収の対象として問題ありません。

※参考資料:国税庁「第4 報酬・料金等の源泉徴収事務

源泉所得税の納付に関する手続き

源泉徴収の対象となる支払いを行う際には、その支払いの都度、支払金額に応じた所得税と復興特別所得税を差し引くことになります。
差し引いた税額は、原則として、支払月の翌月10日までに国に納めなければなりません。
ここからは所得を支払う側が行う源泉所得税の納付に関する手続きを解説します。


給与支払事務所等の開設届出書の提出
国内で法人や個人が新たに源泉徴収義務者となる場合、給与支払事務所等を開設してから1カ月以内に給与支払事務所等の開設届出書を提出することとされています。
この届出書の提出先は、給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署長です。
法人設立後、従業員を採用して給与の支払いが発生する場合などは、この届出書を忘れずに提出する必要があります。


源泉徴収を行うタイミング
所得税及び復興特別所得税の源泉徴収をするタイミングは、現実に源泉徴収の対象となる所得を支払う時です。
したがって、前もって支払いが確定していたとしても、現実に支払いを行うまでは源泉徴収をする必要はありません。
ただし、配当や一部の賞与については、支払い確定から長期に渡って支払いを行わない場合、支払確定日から1年を経過した日に源泉徴収を行う必要があります。


源泉徴収税額を納付するタイミング
源泉徴収義務者が源泉徴収した所得税及び復興特別所得税は、原則としてその源泉徴収の対象となる所得を支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。
ただし、給与について納期の特例(給与の支給者が常時10人未満の事業者が、申請によって年2回での納付を認められる制度)を受ける場合や、特定の所得に関して支払いをする場合など、一定の例外はあります。

※関連記事:経理の基本!源泉徴収の「納期の特例」について

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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今回の記事を参考に源泉所得税や源泉徴収に関する知識を体系的に理解しておくことで、実務にも役立てることができます。
税制改正された部分にも留意しつつ、スムーズに対応できるとよいでしょう。

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