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人事/労務働き方改革 2023/08/01

2024年問題とは?時間外労働の上限規制に伴う物流業界での労務管理の重要性

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働き方改革の推進に伴い、2024年に物流業界が大きな転機を迎えます。
今回は、物流業界に影響のある制度改正を解説します。様々な業種の働き方改革や労務管理に有益な情報ですので、業種にかかわらずご確認ください。

2024年問題とは

2024年問題とは、時間外労働の上限規制や改善基準告示の改正によって、2024年に多発するとみられる物流業界での問題のことを指します。
改善基準告示とは、正式名称を「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」といい、トラック・バス・タクシーなどの自動車運転者における労働条件の向上を目的として、拘束時間・休息時間などに関する基準を定めたものです。


2024年問題に関連する法改正
2024年問題には、大きく2つのポイントがあるとされています。
1つは、働き方改革関連法の施行に伴う、物流業界での労務管理業務への影響です。
そしてもう1つは、2024年4月から施行予定の改正版改善基準告示によるドライバーの働き方への影響です。

2024年問題に関連する制度改正の概要
施行年度 改正
2023年4月以前 働き方改革関連法
  • 年5日の有給休暇の取得義務
  • 大企業向けの残業時間の上限規制(年720時間)
2023年4月 働き方改革関連法
  • 月60時間超の時間外賃金引き上げ(25% → 50%)の対象増
2024年4月 働き方改革関連法
  • 時間外労働の上限規制(年960時間)の適用
改善基準告示の改正
  • 拘束時間の上限規制など

運送業界に影響する働き方改革関連法の改正について

ここからは、運送業界に影響する制度改正の概要について確認していきます。
まずは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」通称働き方改革関連法による影響を解説します。


【2023年4月~】法定割増賃金率の引き上げ
大企業についてはこれまでも、22時から翌5時の深夜労働時間帯に、月60時間超の時間外労働を行った場合の割増賃金率の引き上げが適用されていました。
2023年4月からはこの内容が中小企業についても適用されています。
この改正による主な割増賃金と割増率の取り扱いは、以下の通りです。
主な割増賃金 割増率
時間外手当・残業手当 法定労働時間(1日8時間及び週40時間以内)を超えない分 割増無し
法定労働時間を超える分 25%以上
【今回の改正】1カ月60時間を超える分 50%以上
休日手当(法定休日の労働時間) 35%以上
深夜手当(22時~5時の労働時間) 25%以上
これにより、1カ月のうちに60時間を超える時間外労働をした状態で深夜労働を行った場合、その時間帯の賃金率は深夜割増賃金率25% + 時間外割増賃金率50%で、75%の割増率となります。

また、労務業務における重要なポイントとして、法定割増賃金率の引き上げに伴う就業規則や給与規則の改訂を行う必要があります。
具体的には、就業規則上で60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%以上との記載がない場合、就業規則の変更をしなくてはなりません。

なお、1カ月60時間を超える時間外労働に対しては、従業員に割増賃金を支払う代わりに有給休暇を付与する、代替休暇制度を利用することもできます。
企業にとっては割増分の費用負担を軽減でき、従業員も休暇を取得できるというメリットがありますが、導入の際は過半数の組合員または代表者との労使協定の締結が必要です。
また、代替休暇の取得は労働者個人の判断に委ねられるため、会社から従業員に対して取得を強制することはできません。
代替休暇制度を導入する場合にも、就業規則への追記が必要になるためご注意ください。

※関連記事:36協定(サブロク協定)で定めた労働時間、オーバーするとどうなる?働き方改革関連法に基づいた企業対応のポイント


【2024年4月~】時間外労働の上限規制
原則として全業種の労働者を対象に、時間外労働の上限が設けられます。
これまでは、自動車運転業務を行う運送・物流業界のドライバーや建設業などについては、この規定の適用が猶予されていましたが、2024年4月からは企業規模に関係なく、時間外労働の年960時間までの上限規制が適用されることになります。
一般業種 自動車運転の業務・建設業など
原則 月45時間以内
年360時間以内
特別条項 月100時間未満・休日労働含む
(2~6カ月平均)月80時間以内・休日労働含む
年720時間以内・休日労働除く 年960時間以内・休日労働除く
(月45時間超の回数)年6回まで
上記の通り、運送業界では他業種のように月単位での時間制限が規定されていません。
ただし、改善基準告示の内容については別途確認する必要があるので注意しましょう。
なお、時間外労働の上限規制に従わない場合は、企業に労働基準監督署の調査が入り、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される可能性があります。

改善基準告示の改正

改善基準告示の適用対象者は、主にトラック・バス・タクシーの運転手など、企業に雇用されている四輪以上の自動車の運転業務を行っている従業員です。
2024年4月から適用される改善基準告示の内容は、物流業界のこれまでの仕組みが通用しなくなると懸念されています。


改善基準告示の改正による変更点を理解するために
改善基準告示の内容を理解するために、以下の用語を押さえておきましょう。
拘束時間 始業時刻から終業時刻まで、従業員が拘束されているすべての時間を拘束時間といいます。
拘束時間は、労働時間と休憩時間に分かれており、さらに労働時間は作業時間と手待ち時間の2つに分類されます。
ドライバーの場合、運転中の休憩や荷待ちなどの時間が発生することがありますが、このような時間も拘束時間です。
休息期間 睡眠時間を含む生活時間として、次の勤務との間に従業員が自由に使える時間のことを休息期間といいます。
休息時間は休憩時間や仮眠時間とは異なるもので、事故防止のためにも確保しなければならない時間です。
運転時間 実際に車両を運転している時間をいいます。
運転時間が長くなると注意力が低下したり、居眠り運転の原因になったりと、事故の危険性が高まる恐れがあります。

【2024年4月~】改善基準告示の改正概要
トラック運転者を例として、改善基準告示の改正の概要をまとめました。
原則 特例
拘束時間 1年 3,300時間以内。 以下を満たす場合、労使協定で3,400時間以内。
  • 284時間超は連続3か月まで
  • 1カ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める
1カ月 284時間以内。 以下を満たす場合、労使協定で年6カ月まで310時間以内。
  • 284時間超は連続3か月まで
  • 1カ月の時間外・休日労働時間数が100時間未満となるよう努める
1日 13時間以内(上限15時間、14時間超は週2回までが目安)。 宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、週2回まで16時間まで延長可。
1日の休息期間 継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない。 宿泊を伴う長距離貨物運送の場合週2回まで継続8時間以上。
休息時間のいずれかが9時間を下回る場合運航終了後に継続12時間以上の休息時間を与える。
運転時間 2日平均1日 9時間以内。
2週平均1週 44時間以内。
連続運転時間 4時間以内。
運転の中断時は原則として休憩とする。運転の中断は10分以上とし、10分未満の運転の中断は3回以上連続しないようにする。
やむを得ず4時間を超える場合、4時間30分以内。
予期し得ない事象 予期し得ない事象(運転中の故障や災害など)について客観的な記録で確認できる場合、対応時間を1日の拘束時間・運転時間(2日平均)・連続運転時間から除くことができる。
参考資料:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示の改正

上記の内容について、特に着目したいのは以下の内容です。

拘束時間
改正前の拘束時間は年間で3,516時間でしたが、改正後は原則で3,300時間、最大でも3,400時間まで減ります。
また、1カ月の拘束時間についても、改正前は原則で293時間、最大で320時間まででしたが、改正後は原則で284時間、最大で310時間まで減ることとなります。

1日の休息期間
改正前の1日の休息期間は最低8時間以上とされていましたが、改正後は継続11時間が基本となり、最低でも継続9時間以上とする必要があります。

連続運転時間
運転時間には、4時間以上運転する場合は合計30分以上の休憩を確保しなければならない、いわゆる430(ヨンサンマル)ルールがあります。
この休憩時間について、改正前は単純に運転をしなければよいとされていましたが、改正後は必ず休憩にあてなければならないとされています。
1回の休憩は10分以上とされており、合計で30分以上となれば問題ありません。
万が一10分未満の休憩となる場合は、3回以上連続させてはいけないこととなっています。


上記はトラックドライバーを例としましたが、タクシーやバスなど、ドライバーの業務の種類によって、改善基準告示の内容が異なるため、詳細や最新の規定については厚生労働省のホームページなどを確認してください。

※参考資料:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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2024年問題が物流業界に与える影響は甚大ですが、従業員の雇用環境改善にとっては必要なことです。
企業のコスト削減・生産性も向上させるために、これまで以上に労働時間の管理や業務効率の見直しが重要になるでしょう。

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