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経理/財務決算 2023/03/07

3月決算企業必見!おさらいすべき決算・税務の流れと、押さえておきたい税制とは

3月は多くの決算法人が決算期末を迎える時期です。
今回は、3月決算企業が直近で行うべき経理業務を整理するとともに、2023年3月期に注意すべき税制を解説します。

3月決算企業の経理スケジュール

3月前後は3月決算企業にとって最も忙しい時期になります。
スムーズに業務を行うために、まずは、通常業務のほか、期末に経理担当者が行うべき決算業務と税務業務をおさらいします。


決算業務
期末前後の決算関連業務は主に以下の通りです。
3月 実地棚卸の実施、売掛金の回収状況の確認
4月 決算整理仕訳の入力、決算書の作成
5月~6月 株主総会の開催
3月は決算を迎えるにあたって、期末時点での資産や取引の残高を確定する作業を行います。
実施棚卸はそのうちの一つであり、期末時点の棚卸資産の残高を確認する作業です。
通常、棚卸資産の残高は帳簿上で確認しますが、期末はその棚卸資産が実際に存在しているかどうか、現物を点検し、確認します。
そのほか、売掛金の回収状況の確認も重要です。
未回収の売掛金については取引先に連絡し、早期に回収します。
4月に入ると決算作業が始まります。
まずは決算整理仕訳を入力し、各勘定の残高を決算時点の状況に合わせて修正します。
決算整理仕訳の入力が終わり次第、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書からなる決算書を作成します。
5月~6月には株主総会を開催し、株主からの承認を得て当期の決算関連業務が終了します。

※関連記事:決算準備期の重要業務、棚卸の基礎知識
売掛金は回収するまでが重要!遅延させないための重要ポイントとは
決算の集大成、株主総会で経理担当はどう活躍する?



税務関連業務
期末前後の税務関連業務は主に以下の通りです。
3月 個人所得税の確定申告に対する対応
4月 消費税・法人税の税額計算
5月 消費税・法人税・地方税の確定申告と納付
※確定申告期限の延長をしている場合には6月まで
原則として、毎年3月15日までが個人の確定申告期間です。
その際、申告に合わせて従業員からの問い合わせがあった場合には対応する必要があります。
4月には、決算整理の一環として、当期の消費税と法人税の計算を行います。
税金の確定申告はまだ先ですが、当期の決算で、消費税や法人税がいくら発生するかを見積り、未払消費税・未払法人税を計上するため、この時点で計算を行うのです。
そして5月末に消費税と法人税等の確定申告と納付を行います。

※申告期限の延長をしている企業の確定申告と納付は6月末になります。

中小法人等と中小企業者等における違い

一般的に、大企業以外の企業を「中小企業」といいますが、税務では「中小法人等」と「中小企業者等」で満たすべき要件が異なります。
各制度の対象が「中小法人等」と「中小企業者等」ではまったくの別ものとなりますので、それぞれの要件を確認しておきましょう。

中小法人等(法人税法)
  • 以下の要件を満たす法人
    • 資本金の額等が1億円以下
    • 資本金の額が5億円以上の法人等(大法人)による単独・複数の完全支配関係がある子会社等でない
  • 公益法人等、協同組合等
  • 人格のない社団等

中小企業者等(租税特別措置法)
  • 以下の要件を満たす法人
    • 資本金の額等が1億円以下
    • 資本金の額等が1億円を超える法人(大規模法人)から発行済株式の1/2以上を保有されていない
    • 複数の大規模法人に発行済株式の3分の2以上が保有されていない
  • 資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
中小法人等も中小企業者等も、期末資本金の額等が1億円以下の法人であることが共通要件になります。
そのうえで、中小法人は大法人による完全支配関係がないこと、中小企業者は大規模法人による一定以上の発行済株式を保有されていないことという要件を満たす必要があります。
以下からは、中小企業、中小企業以外の大企業に分けて、2023年3月期以降の決算で押さえておくべき税制改正を紹介します。

【中小企業向け】2023年3月期の申告で注意したい改正点

中小企業について気を付けたい改正点を紹介します。


賃上げ促進税制(適用対象:中小企業者等)
賃上げ促進税制(旧所得拡大促進税制)は、要件を満たした法人について、前の年よりも給与の支給額が増加した場合に、増加額の一部を法人税等から税額控除できる制度です。
2022年4月1日から開始する事業年度において適用可能な、中小企業者等向けの内容は以下の通りです。

税額控除額=控除対象雇用者等支給増加額×15%
※上乗せ要件を満たす場合、控除率は最大で40%(法人税額の20%が上限)

中小企業者等では、改正前と改正後で以下のように変更になっています。
改正前(所得拡大促進税制) 改正後(賃上げ促進税制)
基本要件 雇用者給与等支給額が前年度と比べて1.5%以上増加した場合:15%の税額控除
上乗せ要件① 雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加し、かつ、教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加:10%税額控除率を上乗せ 雇用者給与等支給額が前年度と比べて2.5%以上増加:15%税額控除率を上乗せ
上乗せ要件② 教育訓練費の額が前年度と比べて10%以上増加:10%税額控除率を上乗せ
税額控除率の上限 最大25% 最大40%
税額控除の上限額 法人税額の20%
※参考資料: 経済産業省「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック

賃上げはもちろん、教育訓練費が増加している場合により多く税額控除されますので、教育訓練費についても忘れずに集計するようにしてください。


少額の減価償却資産の損金算入制度の改正(適用対象:中小企業者等)
少額の減価償却資産の取得価額の損金算入制度について、2022年4月1日以後に取得する減価償却資産において貸付を行ううえで使用するものは、対象資産から除かれることになりました。

  • 少額の減価償却資産(取得価額が10万円未満、または、使用可能期間が1年未満)の取得価額の損金算入制度
  • 一括償却資産(取得価額が10万円以上20万円未満)の損金算入制度
  • 中小企業者等が取得する少額減価償却資産(30万円未満)の取得価額の損金算入の特例
この改正は、ドローンなどの少額の資産を大量に購入したうえで、上記の制度を使って全額を損金に算入し、資産を貸付けることで資金を回収する節税スキームを封じることを目的としています。
そのため、貸付の目的が企業の主要な事業として行われるのであれば、上記の規定の制限は受けません。


交際費等の損金不算入制度の特例の期限延長(適用対象:中小法人等)
中小法人等は、交際費について「年間800万円まで」または「接待飲食費の50%」のうち有利な方を損金算入できる、交際費の損金不算入制度の特例があります。
この制度の適用期限が延長され、2023年3月期以降も使用できることになりました。
なお、年間800万円までの損金算入制度については、適用対象が中小法人等に限定されているため注意してください。

【大企業向け】2023年3月期の申告で注意したい改正点

中小企業以外の大法人についても、注意したい改正点を紹介します。


賃上げ促進税制
賃上げ促進税制について、2022年4月1日から開始する事業年度において適用可能な、大企業向けの内容は以下の通りです。

税額控除額=控除対象雇用者等支給増加額×15%
上乗せ要件を満たす場合、控除率は最大で30%(法人税額の20%が上限)

大企業では、改正前と改正後で以下のように変更になっています。
改正前(人材確保等投資促進税制) 改正後(賃上げ促進税制)
基本要件 新規雇用者の給与等支給額が前年度と比べて2%以上増加した場合:15%の税額控除 継続雇用者給与等支給額が前年度と比べて3%以上増加した場合:15%の税額控除
マルチステークホルダーへの配慮 資本金の額等が10億円以上かつ従業員数1,000人以上の企業は、マルチステークホルダー方針をWebサイトで公表する
上乗せ要件① 継続雇用者給与等支給額が前年度と比べて4%以上増加:10%税額控除率を上乗せ
上乗せ要件② 教育訓練費の額が前年度と比べて20%以上増加:5%税額控除率を上乗せ
税額控除率の上限 最大20% 最大30%
税額控除の上限額 法人税額の20%
※参考資料: 経済産業省「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック

改正前は新規雇用者の給与が前年比で増加していることが要件となっていましたが、改正後は集計対象が変更となり、継続雇用者の給与が前年比で増加していることが要件となりました。
なお、継続雇用者とは、前期末以前から当期末まで継続して在籍している雇用者を指します。
また、新たに追加されたマルチステークホルダー要件については、企業が事業を行う際に、従業員や取引先などの様々なステークホルダーとの関係構築における方針を外部公表するものです。
既に多くの企業のホームページで公開されていますので、各社の記載を参考にしてみてください。


租税特別措置の不適用措置
租税特別措置の不適用措置、通称ムチ税制は、収益が増加しているにもかかわらず賃上げにも投資にも消極的な大企業において、研究開発税制やDX税制などの租税特別措置における税額控除の適用が制限される規定です。
資本金1億円超の大企業が以下3つの要件すべてに該当する場合に、一定の租税特別措置の税額控除ができなくなりますが、2023年3月期以降は制限が強化されています。
改正前 改正後
要件① 所得金額が前年度の所得金額を上回ること
要件② 継続雇用者給与等支給総額が、前年度以下であること
  • 2以外の企業:継続雇用者給与等支給総額が、前年度以下であること
  • 資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上の企業で、前年度に黒字の企業:継続雇用者給与等支給総額が、前年度から1%(令和4年度は0.5%)以上増加していないこと
要件③ 国内設備投資額が、当期の減価償却費の30%以下であること
また、一定の租税特別措置については以下の通りです。

  • 研究開発税制
  • 地域未来投資促進税制
  • 5G導入促進税制
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制
  • カーボンニュートラル投資促進税制
※参考資料: 経済産業省「中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック


交際費等の損金不算入制度の特例
大企業であっても資本金の額等が100億円以下の企業については、接待飲食費の50%まで損金算入できます。
特に制度自体の変更はありませんが、適用時期が延びたため、2023年3月以降でも適用可能になりました。
期末資本金の額等が100億円以下の中小法人等以外の法人 接待飲食費の50%を損金算入
期末資本金の額等が100億円超の中小法人等以外の法人 交際費は全額損金不算入
※グループ通算制度を採用している場合に、通算グループ内のいずれかの法人の期末資本金の額等が100億円を超える場合、全法人で特例の適用がなく、全額損金不算入となります。


グループ通算制度の導入
2022年4月からグループ通算制度が導入されました。
適用対象となる3月決算法人では2023年3月が初年度の申告となります。
決算にあたっては、以下の点に留意する必要があります。
税額計算 グループ通算制度の導入にあたって、損益通算や税額控除の計算の仕組みが大きく改正されています。
特に連結納税制度から移行する企業は計算方法を再確認してください。
申告方法 連結納税制度では親法人が申告していましたが、グループ通算制度では原則として各社ごとに単体申告を行うことになります。
※関連記事:グループ通算制度は連結納税制度よりメリットが多い!?年内に把握しておきたい概要とは

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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今回は3月決算企業における直近の決算・税務関連業務と気を付けたい税制改正を紹介しました。
紹介した改正については、2023年3月以降に決算を迎える法人も同様に適用する必要があるため、確認してくださいね。

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