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人事/労務社会保険 2022/05/24

社会保険の適用拡大とは?従業員数が50人を超えたら要注意!

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2020年に成立した年金制度改正法により、2022年は社会保険への加入が義務付けられる従業員の対象範囲が拡大します。
これにより、多くの企業と従業員に影響があることが見込まれています。
今回は、この「社会保険の適用拡大」の概要を解説したうえで、企業がどのような対策をとるべきかを紹介します!

「社会保険の適用拡大」の対象となる企業

「社会保険の適用拡大」とは、パート・アルバイトとして働く従業員に対して社会保険への加入範囲を拡大していく動きです。
既に2016年には、従業員数501人以上の企業を対象として、正社員だけではなく、パート・アルバイトに対しても社会保険への加入を義務化する要件が制定されていましたが、2020年に成立した年金制度改正法によって、加入範囲を順次拡大することになりました。
これにより、2022年10月からは従業員数101人~500人の企業も上記の対象となります。
さらに、2024年10月には従業員数が51~100人の企業も対象となる予定です。
※「労使合意に基づく任意の適用」の詳細は出典のp10をご確認ください。
※出典「厚生年金ガイドブック 事業主向け


従業員数のカウント方法
社会保険の適用拡大の要件で用いる従業員数は、厚生年金保険の加入対象者です。
具体的には、次のAとBの合計で判断します。

A フルタイムの従業員数
B 就労時間がフルタイムの3/4以上の従業員数
※従業員には、パート・アルバイトを含む。
従業員数については、日本年金機構ホームページの「適用事業者検索システム」で確認することも可能です。

※関連資料:日本年金機構「厚生年金保険・健康保険 適用事業所検索システム

新たな加入対象者の要件

今回の適用拡大にともない、社会保険の加入対象者の要件についても変更があります。
新しい要件は以下の通りです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること(週所定労働時間が40時間の企業の場合)
  • 月額賃金が8.8万円(年収106万円相当)以上であること
  • 雇用期間が2カ月超と見込まれること(雇用期間は2カ月未満であるが、契約書などで更新されることが明示されている場合を含む)
  • 学生ではないこと(休学中、夜間学生などは加入対象)
週の所定労働時間
「週の所定労働時間」とは、就業規則や雇用契約書などの契約で定められた労働時間を指します。
臨時に発生した残業時間は含みませんのでご注意ください。
また、所定労働時間が週単位で定まっていない場合は、1年間の月数を12、週数を52として週単位の労働時間に換算して算定します。


月額賃金
「月額賃金」とは、週給、日給、時間給の金額を1カ月分に換算した賃金を指します。
ボーナスや残業代、通勤手当などは含みませんのでご注意ください。

月額賃金に含まれないもの
1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金 賞与
時間外、休日、深夜労働などに支払われる賃金 残業代、休日出勤手当、深夜労働手当など
臨時に支払われる賃金で一定のもの 結婚祝い金、見舞金など
法律で最低賃金に含めないとされている賃金 皆勤手当、通勤手当、家族手当など

雇用期間
「雇用期間」が2カ月超かどうかの判断は、原則として契約開始時点に2カ月超の雇用が見込まれるかどうかで判断されます。
また、契約当初は2カ月超と見込まれなかったものの、契約更新などで2カ月超が見込まれることとなった場合は、その時点から対象となります。

雇用期間が2カ月超であると判断される場合
  • 期間の定めがなく雇用されている場合
  • 雇用期間が1年以上である場合
  • 雇用期間が1年未満であり、次の1、2のいずれかに該当する場合
    • 雇用契約書に契約が更新される、更新される可能性がある旨が明示されている
    • 同様の雇用契約の雇用者が更新などで1年以上雇用された実績がある

学生ではないこと
大学や高校に在学する学生は原則として適用対象外となります。
ただし学生が、卒業前に内定している会社に勤務している場合、学校を休学している場合、夜間や定時制の学校に通っている場合などは適用の対象となる可能性がありますのでご注意ください。

※参考資料:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

これから適用拡大の対象となる企業が進めるべき準備

今回、適用拡大の対象となる従業員数101人以上の企業は、社会保険への加入者が増えるにあたって様々な準備を進める必要があります。


加入対象者を把握する
新たに適用範囲拡大の対象となる企業には、2022年8月までに日本年金機構から通知書類が届きます。
この通知が届いた場合、まずは先述した要件を満たす従業員を洗い出し、社会保険の加入対象者を把握するようにしましょう。


社内で告知を行う
新たに社会保険の加入対象者となる従業員に、自身が対象者であることを周知する必要があります。
社内告知の際には、「知らなかった」という従業員が出ないよう、社内全体に情報が伝わるようにしましょう。


従業員とコミュニケーションをとり本人の希望をヒアリングする
従業員の中には社会保険に加入することで大きな影響を受ける人もいます。
特に、扶養内で勤務している従業員は、社会保険への加入で働き方の希望が変わる可能性があります。
このような人たちはこれまで、年収が扶養基準を超えた場合は、自分で国民健康保険などに加入して保険料を全額負担する必要があったため、手取りが減ってしまうことを理由に労働時間を抑えるというケースが多く見られました。
しかし厚生年金保険の保険料は、企業と個人が半額ずつ負担して支払うため、基本的には従業員の負担が少なくなります。
そのほか社会保険加入に対するメリットを総合すると、労働時間の延長を希望する従業員がでてくる可能性もありますので、ご本人の希望・今後のキャリアプランを丁寧に確認するようにしてください。

社会保険への加入メリット
  • 扶養基準(年130万円)を意識せず働くことができる
  • 将来の年金が基礎年金と厚生年金の2階建てになり一生涯受け取ることができる
  • 傷病手当金、出産手当金などの充実した医療保険の支給が受けられる
  • 老齢年金、障害年金、遺族年金の3つの保障を受けられる

対象企業の場合は書類の作成・届出を行う
従業員数101人以上の企業は2022年10月5日までに、従業員数51人から100人までの企業は2024年10月までに、「被保険者資格取得届」の申請を行う必要があります。
期限までに届出書を作成して提出しましょう。

※参考資料:日本年金機構「【事業主の皆さまへ】新たに健康保険・厚生年金の被保険者となる従業員の手続きに関するご案内
※参考資料:日本年金機構「電子申請・電子媒体申請

※出典:厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト「動画・チラシ・ガイドブック

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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社会保険の適用拡大について、イメージはつかめましたか?
適用される従業員数は2022年に続いて2024年にも拡大するので、中小企業でも無視できない状況となっています。
新たに対象となる企業は、今回解説したポイントを押さえつつ、早めに準備をしておくことが大切です。

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