公的な保険制度「社会保険制度」には、健康保険などの「公的医療保険」、厚生年金などの「公的年金」、要介護認定者を支えるための「介護保険」、仕事中や通勤中の事故・病気に備える「労災保険」、失業者や求職者のための「雇用保険」の5つの分野があります。
事業形態や雇用している人数によって、加入しなければならない社会保険はそれぞれ異なります。建設業界では以下が代表的な例となります。
■加入が必要な社会保険
株式会社などの法人に勤めている労働者 |
雇用保険、健康保険、厚生年金保険 |
個人経営の事務所に
勤めている労働者 |
常時使用する労働者が5人以上 |
雇用保険、健康保険、厚生年金保険 |
常時使用する労働者が5人未満 |
雇用保険、国民健康保険、国民年金 |
一人親方 |
国民健康保険、国民年金 |
法定福利費とは、上記の社会保険(法定福利)の費用のことです。本来、下請け会社は工事などの見積りの際、自社と自社の労働者の法定福利費を見積りに乗せるべきです。ただし、これまでの建設業界においては法定福利費の取り扱いが不明瞭でした。
そこで国土交通省は2018年に「法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順」という新しいルールを作成しました。これにより見積書に記載すべき法定福利費の算定方法などが明らかになっています。
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「法定福利費を内訳明示した見積書」とは、下請けが元請けなどの上位の注文者に対して内訳に法定福利費を記載した見積書です。また、見積書で明示しなければならない法定福利費は「事業主(会社)負担分」のみとなります。
■下請けが提出する見積書の対象となる保険料等
社会保険料 |
事業主負担分 |
本人負担分 |
健康保険 |
健康保険料 |
記載が必要 |
記載不要 |
介護保険料 |
記載が必要 |
記載不要 |
厚生年金保険 |
厚生年金保険料 |
記載が必要 |
記載不要 |
児童手当拠出金 |
記載が必要 |
負担なし |
雇用保険 |
雇用保険料 |
記載が必要 |
記載不要 |
労災保険 |
労災保険料 |
記載不要 |
負担なし |
法定福利費は、労務費に社会保険料率を乗じて算出することが一般的です。そのため、該当する社会保険料率を正しく把握しなければなりません。まずは自社がどの社会保険に加入する必要があるのかチェックしてみてください。
2021年7月現在の各保険料率と調べ方は以下の通りです。
1.健康保険料率
健康保険料率は各都道府県によって異なります。協会けんぽのホームページに各地域の保険料率が提示されているので確認してみましょう。ちなみに2021度の健康保険料額は、富山県を除く46都道府県で改定されています。
また、介護保険料率は2021年3月分から全国一律で1.80%(事業者負担0.9%)となります。
※出典:
協会けんぽ「令和3年度保険料額表(令和3年3月分から)」
※出典:
協会けんぽ「協会けんぽの介護保険料率について」
2.厚生年金保険料率と介護保険料
2021年度の厚生年金保険料率と介護保険料は「18.3%(事業主負担額9.15%)」となっています。この数値は日本年金機構のホームページから保険料額表を参照することで入手可能です。また、同枠の児童手当拠出金の金額を知りたい場合も同ホームページを参照してください。
※出典:
日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分~)」
3.雇用保険料率
雇用保険料率は厚生労働省のホームページで確認できます。2021年度は2020年度から据え置きの1.2%です(労働者負担分0.4%、事業者負担0.8%)。
※出典:
厚生労働省「令和3年度の雇用保険料率について」
■法定福利費の算出例
自社が加入すべき社会保険とその料率がわかれば、あとは労務費に各料率を当てはめて合計するだけで法定福利費を算出できます。例として、労務費の総額が25万円だった際の法定福利費を計算してみましょう。
法定福利費=労務総額×法定保険料率
法定保険料 |
法定保険料率 |
法定福利費 |
健康保険料 |
5.82%(※) |
14,550円 |
厚生年金保険料 |
9.15% |
22,875円 |
介護保険料 |
0.9% |
2,237円 |
雇用保険料 |
0.8% |
2,000円 |
子ども・子育て拠出金 |
0.34% |
850円 |
合計 |
42,512円 |
※上記の健康保険料率は一例です。各都道府県によって異なりますのでご注意ください。