電子署名法や電子帳簿保存法の整備によって電子契約がより身近となり、契約の手順が劇的に変化しました。特に契約処理にかかる時間が大幅に短縮されたことで、業務効率の向上が目覚ましいものとなっています。
今回は電子契約を正しく導入する手順と自社に適したサービスの選び方を紹介します。
電子契約とは
電子契約とは、インターネット上の電子ファイルで事業者間の契約を締結し、企業のサーバーもしくはクラウドストレージなどに電子ファイルの契約書を保存する契約方法です。
2020年にJIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が行った調査によると、67.2%の企業が既に電子契約を導入しており、前回調査から20%以上増加しています。
テレワークやペーパーレス化などの対応が迫られる中で、今後、ますますその数は増加すると考えられています。
なお、電子契約には「事業者署名型」と「当事者署名型」という2つの種類が存在します。事業者署名型は「クラウド署名」となっており、近年主流になっている電子契約の多くはクラウド署名のサービスです。一方の当事者署名型には「ローカル署名」と「リモート署名」があります。
契約方法によっては契約者がそれぞれ保持する「署名鍵」と呼ばれる暗号と、署名鍵を格納する「物件」と呼ばれるICカードなどの媒体が必要な場合があります。
■事業者署名型:クラウド署名
電子契約サービスを提供する事業者が署名鍵を管理する契約方法です。利用者はサービスの指示にしたがって署名するだけで契約を締結できます。負担が少ないため多くの企業がこの方法を採用しています。
■当事者署名型:ローカル署名
契約者当人が署名鍵を購入し、物件を介してやりとりする契約方法です。電子契約の最初期に多かった手法です。
■当事者署名型:リモート署名
署名鍵をサーバ上に保存することで物件を不要とした契約方法です。
電子契約のメリット
電子契約の主なメリットは契約処理にかかる時間の大幅な削減です。書面での契約の場合、契約処理には以下のような手順が必須でした。
- 契約書の準備
- 紙への印刷
- 製本
- 押印や印紙の添付
- 郵送もしくは持参にて契約先への確認依頼
- 契約先から押印や署名をもらった書面を受領し保管
上記の流れは契約先との郵送のやりとりも含むと、2週間程度かかることも多くありました。これに対して、多くの企業が採用しているクラウド署名の電子契約の場合、代表的な手順は以下の通りです。
- 契約書の準備
- クラウド上で契約先への確認依頼
- 契約先がクラウド上で押印、署名(会社名の入力などを押印と見なす)
多くの場合、上記すべてのやりとりが電子契約サービスの管理画面上で行われます。押印についても実際に判子を押すというわけではなく、印鑑の画像を貼り付けたり、会社名のテキスト入力を押印と見なしたりすることで、管理画面上で対応できるようになっています。そのため契約締結まで最短わずか1日という場合もあるのです。この稼働削減は、事務処理業務における大きな変革と言えます。
実際の「もの」ではなくデータでやりとりをすることによって、わざわざ出社したり、書類の受け渡しをしたりする機会を減らせるため、新型コロナウイルスの感染リスク対策を検討している企業にも便利な契約方法です。
電子契約サービスの選定ポイント
電子契約の最大のメリットは稼働負担を減らすことです。「電子化したことでかえって手順が複雑になった」ということにならないよう、わかりやすい処理手順となっているサービスを選ぶのがポイントです。
また、電子契約は契約先の同意が必要なので、信頼性も重要な判断基準となります。サービス自体に情報漏洩の予防措置がしっかりされているかどうかは念入りに調べる必要があります。
なお、導入の際はセキュリティ要件のとりまとめなどを含めて、社内環境を整えておくことも大切です。宅地建物売買等媒介契約や労働者派遣個別契約のように、法律で電子化が認められていない契約書も存在するので、該当するものがないかもチェックしておきます。社員向けの勉強会や研修など、必要によってはITリテラシーの低い社員への教育も行い、電子契約を問題なく利用できるような環境を作るのが導入成功の鍵となります。
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従来2週間程度かかっていた契約処理がたった1日で済むとしたら、時間の負担も作業の負担も大きく削減されることになります。
契約業務には直接の関わりがないという経理担当者にとっても、契約がスムーズに進むことで支払い請求処理が滞りなく進むというメリットは大きいのではないでしょうか。興味を持った人は、今回ご紹介した基礎知識をもとに、電子契約サービスの導入を社内に提案してみてください。