日税連ではインボイス方式をどのようにお考えですか。
足達専務理事(以下敬称略)
日税連は、消費税法改正論議で軽減税率やインボイス方式の採用が俎上に乗せられてから、一貫して単一税率の維持とインボイス方式の見直しを主張し、日税連税制改正建議書の重要項目としてきました。
その理由とは?
足達
私たちは、そもそも軽減税率制度そのものが消費増税の「逆進性の緩和策」としては非効率で不十分だと考えています。にもかかわらず、多くのメディアが取り上げているように、税率区分経理による事務負担は大きく増加しました。その上でインボイス方式が導入されると、事業者はすべての取引において、取引先がインボイス発行事業者であるかを確認する作業が必要となり、負担はさらに増えることになります。
また、免税事業者は適格請求書を発行できないため、取引先から不当な値下げを強いられる可能性もあります。そうなった場合の経営状態悪化を危惧しているのです。
税理士は、全国に500万以上いるとされる免税事業者のうち相当数の経営に深く関わっており、私たちがインボイス方式導入の見直しを要求しなければならないと考えています。
それだけでなく、インボイス方式は税務署の事務にも大きな負担が生じると考えられています。そのため税理士は、わが国唯一の税務の専門家という立場から見直しを強く主張せざるを得ないのです。
「経理ドリブン」では軽減税率やインボイス方式の導入に対する現場の意見を多く耳にしてきました。しかし、当事者のインボイス方式に対する意識の高まりは、あまり感じられていません。
足達
その大きな理由としては、インボイス方式の導入が2023年秋であること、また2029年秋までは免税事業者などからの仕入れについて特別措置が設けられていることなどが考えられます。導入まで、まだ長い準備期間があるという認識なのではないでしょうか。軽減税率の導入は税理士の注意喚起などもあり、事業者は、私たちの予想よりも落ち着いた対応でスタートしたと思います。しかし、インボイス方式の導入は消費者に直接的に関わることではないため、メディアが取り上げる機会が少ないことも、このように意識が低い一因なのかもしれません。
インボイス方式導入への意識を高めるために税理士はどのようなアドバイスをしているのでしょうか。
足達
私たち日税連が事業者に直接アドバイスすることはありません。しかし、税理士には、関与先の事業者に対してインボイス方式導入にあたっての留意事項を、具体例を示しながら正確にわかりやすく伝えてもらいたいと考えています。例えば、免税事業者については「レシートに消費税額などが表示できなくなる」、「一度、課税選択をすると、原則2年(一部3年)は変更できないため、慎重に検討しなければならない」などです。また、課税選択をしたとしても原則として税務署に登録をしなければインボイスを発行できないことも重要です。細かいことかもしれませんが、代金決済時に振込手数料を差し引いて決済したときの処理方法なども実務上、注意すべき点となります。
今回はインボイス方式導入に警鐘を鳴らす日税連の足達専務理事をはじめとする役員の方々にお話を伺いました。インボイス方式は当事者である事業者が意識的に動向を注視し、備えなければなりません。また、免税事業者はインボイスを発行できませんので、いずれ課税選択の有無を迫られることになります。税理士はインボイス方式の導入において、すべての事業者の心強い味方です。足達専務の言う通り、困ったことがあればまず身近な税理士に相談してみてください。