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人事/労務労務管理 2020/02/18

人事異動や転職の前に!経理担当者の引き継ぎに重要なポイント

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新たな年度を目前に、人事異動や昇進が決まりつつある経理担当者もいるのではないでしょうか。あるいは将来のキャリアを見据えて転職を検討している人もいるかもしれません。
どのような背景であっても職場を離れる際に重要なのが後任の担当者への「引き継ぎ」です。特に中小企業などの経理業務は幅広いうえに属人化しやすいので、不備があると「前の職場から電話が……」という事態も想定されます。担当者が変わっても業務が滞らないよう、しっかりと引き継ぎしましょう。

引き継ぎ期間は3カ月以上がベスト

経理業務は伝票記入などの日次業務のほか、月次業務や年次業務など、期日が決まっている業務が多数あります。この期日を過ぎてしまうと、取引先との関係が悪くなったり、延滞税を払わなければならなくなったりと、大きな問題が起こり得ます。 さらに詳細な業務内容は会社ごとに異なるので、仕訳のタイミングや決算時のルールなどは、知らないと見当違いな結果をもたらしてしまうというケースもあります。

このような課題をクリアするためには、後任に一通りの作業を経験してもらい、期日やルールの感覚を掴んでもらうのがよいでしょう。不明点は質問してもらうなど、直接指導できる期間を持つことで、適切なノウハウを身に付けてもらうことができます。

この時、日次業務だけでなく四半期決算の対応や試算表の作成などの月次業務も実践してもらうとすると、引き継ぎ期間は最低でも3カ月必要です。しかし人事異動が理由となる引き継ぎ期間は、会社によって様々ではあるものの、1~2カ月となることが多く、短ければ1週間程度のこともあります。そのため、それよりも前から職場を離れることが予想できる場合は、なるべく主体的に動いて引き継ぎ期間を長く取ることを心がけてください。

引き継ぎに効果的なマニュアルの作成

引き継ぎ期間の問題を解消するために重要となるのがマニュアルの作成です。必須事項を明記して残しておくことで、後任は不明点が出た都度、確認することができます。経理業務は定型化できる業務や期日が確定している処理が多いのでマニュアル化しやすく、その効果も大きいのです。
マニュアルの精度が高いほど、後から質問攻めになることもなくなるので、できる限り詳細に作るようにしましょう。上司などの責任者と情報を共有しながら進めることで、スムーズに作成することできます。
また、既にマニュアルが作成されている場合でも、引き継ぎの機会にルールの更新やブラッシュアップなどはするようにしてください。

マニュアル作成のポイント1:日次、月次、年次業務をまとめる

マニュアルを作成する際は、まず、日次、月次、年次業務を箇条書きで洗い出してみましょう。中小企業の経理担当者などで経理以外にも人事労務の業務を行っている場合は、それらも含めてまとめます。
それぞれの代表的な業務を以下で挙げるので、自分の業務と照らし合わせてみてください。

■日次業務の例
  • 現金の出納管理
  • 立替経費精算
  • 伝票の起票、整理
  • 領収書の入力
  • 掛け金(売掛金、買掛金)の入力
  • 領収書の整理
  • 仮払金管理

■月次業務の例
  • 給与計算
  • 支払業務
  • 請求業務(請求書の作成など)
  • 各帳簿管理
  • 月次決算
  • 試算表の作成

■年次業務の例(3月決算)
主な業務内容
4
  • 決算作業
  • 固定資産税第一期の納付
5
  • 法人税、法人地方税、法人事業税、消費税の申告と納付
  • 株主総会の準備(3月決算の場合4~6月で開かれるケースが多い)
6
  • 特別徴収住民税の更新
  • 夏季賞与の情報収集と計算
7
  • 夏季賞与支払い
  • 固定資産税第二期の申告と納付
  • 源泉所得税の納付(1~6月分:納期特例の場合)
  • 労働保険料一期分の納付
  • 社会保険の算定基礎届の提出
8
9
  • 上半期事業計画などの集計
  • 厚生年金保険料率の改定
  • 社会保険料の控除額変更の対応
10
  • 労働保険料二期分の納付
11
  • 中間納付(法人税、消費税、法人事業税など)
  • 年末調整の準備
12
  • 賞与支払い
  • 固定資産税第三期の納付
  • 年末調整
1
  • 償却資産の申告
  • 決算作業開始
  • 法定調書などの提出
  • 源泉所得税の納付(7~12月分:納期特例の場合)
2
  • 固定資産税第四期の納付
3
  • 棚卸し

マニュアル作成のポイント2:内容は要点を抑えて簡潔に

業務が洗い出せたら、続いて各作業の詳細なノウハウを記載していきます。ただし、いくら詳しい方がいいとはいえ、どこに何が書いてあるのかわからないような内容になってしまっては、マニュアルの意味がありません。
それぞれの業務フローや必要な資料は、表などにしてわかりやすく整理されているとよいでしょう。
例えば、出張費用の処理であれば以下のような項目をマニュアルに記載します。

■出張費用処理のマニュアル記載項目(例)
出張費の申請に必要な資料
  • 出張申請書
  • 移動費、宿泊費等の領収書
  • 上司の捺印、署名
出張費用の業務の目安
  • 精算時期
  • 提出期限
  • 処理の日数
  • 処理方法
トラブル事例、注意事項
  • 提出期限を過ぎたときの対処法
  • 収書がない場合の申請の対応
  • 出張費用未申告、もしくは期限を守らない「要注意社員」のリスト

マニュアル作成のポイント3:業務ごとに関係者をまとめる

経理の仕事は社内外の人間と連携して進めることも珍しくありません。後任が各関係者とスムーズにコミュニケーションを取れる環境を作っておくことも、前任者の重要な役割です。各業務に関わる人の所属先と名前、連絡先を簡単にまとめておきましょう。
なお、担当変更の挨拶を直接することも大切です。

■経理業務と関係者(例)
業務 所属先と関係者
請求書回収
  • 社内営業部
  • 社外取引先
請求書送付
  • 社外取引先
分析資料作成(試算表など)
  • 各部署の責任者など
経費の申請等
  • 社内の関係部署

完成したマニュアルは部署内だけでなく、必要に応じて関係者に共有しておくと、スムーズに連携できます。
**********

引き継ぎの重要性とマニュアル作成のポイントについて解説しました。転職を希望しているわけでなくとも、人事異動などは本人の意思で決められるものではなく、引き継ぎが必要となるタイミングは誰にでも訪れる可能性があります。
心配を残さずに新天地で働くためにも、余裕を持った引き継ぎ期間の設定とマニュアルの作成・ブラッシュアップはできる限り行うようにしてください。また、引き継ぎ時の負担を軽くするためには、普段から自身の業務を洗い出しておくことも重要です。普段の業務整理にもつながりますので試してみてください。

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