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経理/財務税務(税金・節税) 2020/05/07

損金算入できるのはどっち?法人住民税と法人事業税の特徴

法人住民税や法人事業税などを含めたいわゆる「法人税等」は、事業年度終了時の翌日から2カ月以内に納付する税です。日本では3月末に期末を迎える会社が多いため、5月31日の納付期限に向けて作業を進めている経理担当者も多いのではないでしょうか。今回は、「法人税等」を構成する税金のうち「法人住民税」と「法人事業税」について解説します。
※関連記事:中間申告に使える!法人税等における国税と地方税

法人住民税とは

住民税は、自治体による公的なサービスを受けるために納付する地方税です。この考え方は個人も法人も同様であり、法人の場合は事業所が存在する都道府県や市区町村の自治体が対象となります。
なお、法人住民税は法人事業税とは異なり、赤字計上している場合でも納付が必要です。損金算入して利益から差し引くことも認められていません。その他の概要は以下の通りです。

■法人住民税の体系
納税義務者 法人
課税団体 事務所所在地の自治体(道府県・市町村)
課税標準 法人税額
計算方式 均等割・法人税割
徴収方法 申告納付
赤字計上時 納付義務あり
損金算入 不可
※例外として、東京23区内の法人のみ、地方税ではなく都民税として一括りにされています。

法人住民税の計算式

法人住民税の計算は複雑なので、多くの会社が税理士に任せていますが、仕組み自体は理解する必要があります。

法人住民税
「法人税割」と「均等割」を合計して算出します。

法人税割
法人税割は法人税(法人所得税)に規定の住民税率を乗じて算出します。法人税(法人所得税)とは会社の利益に相当する所得金額に対して課される税であり、この所得金額を求める計算が複雑なのですが、基本的な考え方は以下の通りです。

所得金額=益金(会計上の収益額)ー損金(会計上の損失額)
法人税(法人所得税)=所得金額×法人税率

法人税割=法人税(法人所得税)×住民税率

なお、法人税割は市町村民税と道府県民税、それぞれを支払います。

住民税率
  • 市町村民税…標準税率9.7%
  • 道府県民税…標準税率3.2%

2019年10月1日以後に開始する事業年度は下記を適用
  • 市町村民税…標準税率6.0%
  • 道府県民税…標準税率1.0%

均等割
均等割は自治体によって異なるものであり、法人の資本金や従業員数などによって決まります。

■法人住民税の算出例
資本金額5,000万円、従業員40人の会社で、法人税額が700万円、所在地が東京都八王子市とする。

1. 法人税割を算出する。
道府県民税 700万円×3.2%=224,000円
市町村民税 700万円×9.7%=679,000円
合計 903,000円

2. 均等割を算出する。
該当する条件 資本金額1億円以下、1,000万円超かつ従業員50人以下
道府県民税 60,000円
市町村民税 120,000円
合計 180,000円
※実際の金額は各自治体でご確認ください。

法人住民税=903,000円(法人割)+180,000円(均等割)=1,083,000円
以上の計算から、法人住民税は1,083,000円であることが算出できました。

法人事業税とは

例えば、道路や港の整備、警察、公共施設の運営など、自治体の行政サービスなしでは事業が成り立ちません。そういった、事業に直結するサービスに関する自治体の負担に対して納めるのが法人事業税です。
法人事業税は法人住民税とは異なり、会社の所得に対して税金が課されます。また、赤字計上時には支払い義務がなくなり、損金算入が可能となります。

■法人事業税の体系
納税義務者 法人(公共法人は除く)
課税団体 事務所所在地の自治体(都道府県)
課税標準 所得金額
計算方式 ・資本金1億円以下…所得割 ・資本金1億円超…外形標準課税
徴収方法 申告納付
赤字計上時 納付義務なし
損金算入

法人事業税の計算式


法人事業税の算出方法は、資本金1億円以下と1億円超の2パターンに分かれます。

資本金が1億円以下の場合
課税標準である「所得割」が該当します。

資本金が1億円超の場合
「所得割」に加えて「外形標準課税」が適応され、「付加価値額割」と「資本金額割」が加えられます。

付加価値額割=付加価値額×税率
付加価値額=売上合計金額―売上原価金額
※付加価値とは、事業活動により生み出された価値を数値化したものであり、仕入れ原価に付加価値をあわせたものが売値になります。

資本金額割=資本金等×税率

■法人事業税の算出例
資本金1億5,000万円、年間所得1,000万円、付加価値額150万円の会社とする。

1. 所得割を算出する。
所得割=10,000,000円×7.0%=700,000円

2. 付加価値額割
付加価値額割=1,500,000円×1.26%=18,900円

3.資本金額割
資本金額割=150,000,000円×0.525%=787,500円

※税率は東京都主税局より。
法人事業税=700,000円(所得割)+18,900円(付加価値額)+787,500円(資本金額割)=1,506,400円

以上の計算から、法人事業税は1,506,400円と算出できました。
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5月末が納付期限となる会社が多い、法人住民税と法人事業税について解説しました。双方とも税理士に処理を任せることが多い税金ではありますが、それぞれの赤字計上時の納付義務の有無、損金算入の可否などの知識は、管理会計にもつながるため重要です。自分で処理を行わないとしても、仕組みを理解しておくことで、安定した事業運営に役立たせることができます。

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