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経営事業計画/経営計画 2018/06/26

株式会社の仕組みと経理の役割

富士フイルムホールディングスの米ゼロックス買収に対して、米ゼロックスの物言う株主であるカール・アイカーン氏らが反対を訴えたため買収合意を破棄し、さらにこれが契約違反とした富士フイルムが10億ドル超の損害賠償を求め訴訟するなど、対立が激化しています。一旦は買収が決まったとの発表があったにも関わらず、株主の反対により白紙に戻ってしまうとは、大株主とはどれほどの影響力をもっているのでしょう。やはり会社は株主のものなのでしょうか。今回はそんな疑問にお応えすべく、株式会社の仕組みについて、わかりやすく解説します。

株式会社の歴史

世界初の株式会社は、ご存知のようにオランダの東インド株式会社です。設立は1602年。この時代のヨーロッパは大航海時代と呼ばれ、数多の冒険者が未開のフロンティアを目指して航海に繰り出しました。そして、香辛料や亜鉛鉱石、更紗などの貴重品をヨーロッパに持ち帰り、巨万の富を得ていたのです。

しかし、当時の航海は難破や海賊からの襲撃、疫病の伝染など、極めてハイリスクなものでした。それでも、名声と巨利を夢見て、多くの冒険者たちは荒波に挑んだのです。そんな航海を支えたのがパトロンと呼ばれる出資者たちです。資産家たちはお金を出し合って冒険者の航海をサポートし、成功して貴重品を持ち帰った際には利益配分を受け取るという仕組みを作り出しました。

この時、航海に出資した証として発行された証書が株式です。これを保有している出資者がまさに株主であり、冒険者(船長)は経営者、船員は従業員、船は会社となぞらえることができます。冒険者(船長)は、株主が出資してくれたお金で船を購入し、船員を雇って航海に出ます。従って、船(会社)は株主のものであって、経営者のものではありません。航海で得た売上は、船長への報酬と船員たちへの給料、船の修理費などの必要経費を差し引いて利益となり、株主への配分に当てられるという仕組みもここで確立しました。

日本企業は株主が不在だった!?

株式会社の成り立ちにおいて、会社は出資してくれた株主のものということがおわかりいただけたかと思います。株は、会社の所有権を細分化したもので、上場企業の株は市場で売買されています。会社の業績や人気に応じて株価は上下し、売買は繰り返されていきます。その中で、より多くのお金を出して株をたくさん買い集めた人ほど、会社への発言力が高まります。まさに、ゼロックスのカール・アイカーン氏のような物言う大株主です。

しかし、日本では会社は株主のものという意識が社会的にも希薄です。これは日本企業がずっと株主をないがしろにしてきた影響です。日本では長い間銀行が会社のお金サポートをしてくれるメインバンク制を採用していました。会社を乗っ取られないように銀行や取引先で株を持ち合うことで、純粋な株主が少数しか存在しない状況をつくり出していたのです。そのため、カール・アイカーン氏とは真逆の何も言わない株主を大量に生み出しました。

しかし、近年は国が企業に意識改革を求め、株主から集めたお金でどれだけ効率よく利益を出せているかを表す財務指標、ROE(自己資本利益率)の改善に注力する企業が急増しました。株主へのリターンを意識した経営という本来の株式会社の姿勢がようやく根付いたと言えます。

※関連記事:一つ上の経理を目指すためのROE基礎講座

会社は誰のものか

先述の通り、会社は出資してくれた株主のものと定義されました。しかし、一方で会社は利害関係者(ステークホルダー)全員のものと考えることもできます。会社は、株主・投資家はもちろん、取引先、顧客、従業員、銀行、地域住民など多くのステークホルダーによって支えられています。会社は公器であり、様々なステークホルダーを意識しながら経営することで成長し、結果的に株主に報いることができるのです。


そうしたステークホルダーとの関係を構築・維持するための様々な数値を資料としてまとめているのが経理です。株主・投資家には決算書、取引先・顧客には請求書や納品書、従業員には給料明細や源泉徴収票、その他様々な会計処理、銀行には決算書、試算表、経営計画書など。社内において各部署と幅広く連携するハブのような存在である経理ですが、少し視野を広げてステークホルダーとの関係をみても同様のことが言えそうです。

「会社=公器」という前提を忘れ、経営陣による会社の私物化から粉飾決算などの不正が生まれます。その時、経理としてどう対処できるか。「社長に『違う』と言える会社員は、数字を根拠にしている我々だけだ」というのは日本鋼管の経理部で長年活躍された山崎敏邦氏の言葉であり、経理としての矜持にあふれた名言です。公器としての会社を支える実に重たい責務を、経理担当は担っていると言えます。
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新聞紙上によると、日本企業の2018年3月期決算は、上場3月期決算約2150社の集計で前年比売上高が6.7%、営業利益は10%に迫る増加となり、かなりの好調がうかがわれます。企業の本決算発表は、いわば1年間の成績発表のようなもの。この決算の結果によって株価や配当、役員報酬、従業員の給料、資金調達など、会社経営のあらゆる側面に影響を及ぼします。だからこそ、会社は公器という前提のもと決算書はきちんと間違いなく作成しなければなりません。会社の仕組みを紐解いていくと、経理の責任の重要性が浮かび上がります。

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