損益分岐点売上高とは、その名の通り「損」と「益」の分岐点となる売上高です。この分岐点より売上が多くなれば黒字となり、少なくなれば赤字です。
損益分岐点売上高を求めるためには、まず、会社の費用をすべて変動費と固定費に分けることから始まります。
変動費:売上の増加に呼応して増えていく費用
例えば、商品仕入れ代、材料費、外注費、販売手数料など
固定費:売上の増加・減少に関わらず、一定にかかる費用
例えば、地代家賃、人件費、リース代など
次に売上高から変動費を引きます。この値を限界利益と言います。
売上高−変動費=限界利益
限界利益は、会社があげられる利益の源泉。
この数値が高い会社は、残すことのできる利益が相対的に高い会社。この数値が低い会社は、残すことのできる利益が相対的に低い会社と言えます。
会社の営業利益の大小は、固定費をどれだけ上回る限界利益をあげられるかにかかっています。
例えばA社の損益計算書(簡略化)
(万円)
売上高 |
5,000 |
売上原価 |
3,000 |
売上総利益 |
2,000 |
経費 |
|
人件費 |
1,500 |
運送費 |
500 |
地代家賃 |
300 |
営業利益 |
△300 |
費用を変動費と固定費に分けると
(万円)
売上高 |
|
5,000 |
変動費 |
売上原価 |
3,000 |
|
運送費 |
500 |
限界利益 |
|
1,500 |
固定費 |
人件費 |
1,500 |
|
地代家賃 |
300 |
営業利益 |
|
△300 |
上の表から限界利益率(限界利益÷売上高)と変動費率(変動費÷売上高)を求めると、A社の限界利益率は30%、変動費率は70%となり、合計100%となります。
限界利益率と変動費率の合計は常に100%。これは、限界利益率が高くなると変動費率が低くなり、限界利益率が低くなると、変動費率が高くなるという表裏一体の関係を示しています。
つまり、限界利益率を上げたい場合は、変動費率を下げるための方策を考えるという改善策が導かれます。
例えば原材料や商品の仕入先に単価の引き下げを交渉するのもひとつです。
また、限界利益率がどうしても上がらない場合は、そのビジネス自体が成り立たないことも考えられます。思い切った業態変化や新規事業の創出が必要な場合もあります。
損益分岐点売上高を簡単に求める公式は下記の通りとなります。
損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率
A社の例にあてはめてみましょう。
固定費(1,800)÷限界利益率(30%)=損益分岐点売上高(6,000万円)
この数値に、目標営業利益をプラスすれば、今期目標とする営業利益を出すために必要な売上高がわかります。
例えば、営業利益1,500万円を目指すとしたら・・・
{固定費(1,800)+目標営業利益(1,500)}÷限界利益率(30%)
=1億1000万円の売上高が必要となります。
さらに、会社の安全性を示す安全余裕率という数値があります。これも簡単な公式で算出することができます。先ほどのA社が目標の売上高1億1000万円を達成したケースをみてみましょう。
安全余裕率=(売上高ー損益分岐点売上高)÷売上高×100(%)
A社の場合
(1億1000万円ー6000万円)÷1億1000万円×100(%)=45%
公式を見ればわかるように、この安全余裕率はあと何%売上を落としたら赤字に転落するかを表す指標です。目標の売上高を達成したA社にはかなり余裕が生じたことを示しています。
安全余裕率の平均的な目安は下記のようになっています。
安全余裕率 |
会社の状態 |
0%以下 |
赤字企業 |
5%以下 |
危険水域 |
6%〜15% |
最低限の指標 |
16%〜30% |
優良(目標としたい領域) |
31%〜49% |
かなり優良 |
50%以上 |
極めて優良な理想的企業 |
※関連記事:
管理会計の始めの一歩!「変動費」と「固定費」の違いと削減方法
経営層から右腕として信頼されるためには経営者の視点に立つことが大切です。そのためには、経営計画を立てることが近道です。しかし、いきなり経営計画を立てるのはかなり困難な道となるでしょう。
まずは、今回紹介した損益分岐点売上高のようなシンプルな数値をもとに自社の状態を俯瞰してみてください。
1日5分でも、10分でもいいので経営者の視点に立つこと。そんな習慣を通して、普段経理担当として付けている月次試算表から様々な事実が見えてくるようになります。