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ITDX 2017/06/20

フィンテックが切り開いた新しい通貨、仮想通貨の衝撃

「フィンテックは、既存の金融サービスをどう変えているのか?」で紹介したように、フィンテックは「融資」「決済」「送金」「投資」など、既存の金融サービスをテクノロジーによって大きく進化させました。
同時に、これまでにない全く新しいものを生み出しています。その代表がビットコインをはじめとする仮想通貨と言えるでしょう。
2015年度の仮想通貨の市場規模は1850億円(富士キメラ総研調べ)。2020年度には1兆円規模に膨らむとの試算もあり、その影響は計り知れません。
会計ルールにも大きな影響を与える新しい通貨について、経理担当が知っておくべきポイントをまとめました。

急増するビットコイン利用者

仮想通貨とは、インターネット上でやり取りする通貨で紙幣や貨幣などの実物はありません。
円やドルなどの法定通貨とは異なり中央銀行にあたる管理者がいないのが大きな特長。
取引所と呼ばれる専門の事業者を通じて円などの通貨と交換できます。2009年にビットコインが登場したのを皮切りに、現在はイーサリアムやリップルなど、700種類以上の仮想通貨があるとされています。仮想通貨の中で最も普及しているビットコインは、取扱店舗が急増中。
仮想通貨取引所のひとつ、コインチェックによると2016年末時点でビットコインを支払いに使える店舗は飲食店を中心に約4200カ所、前年比約4.5倍の増加となっています。大手量販店での使用も実現し、電気・ガス代の支払いも検討されており、2017年中に決済の場は2万カ所に増えると目されています。

こうした急伸の原動力となったのが法改正です。
2017年の4月に改正資金決済法が施行され、仮想通貨取引所の運営には登録が必要になりました。財務状況や顧客資産の管理体制を調査し財務局が登録を承認します。財務局の審査による登録制になったことで取引所の信頼性が向上し、取引事業者への参入企業も急増。今年7月には仮想通貨の購入時にかかっていた消費税も不要となり、現在国内で数十万人とされるビットコイン利用者もさらに増えそうです。

仮想通貨は何を変えるのか?

ビットコインをはじめとする、仮想通貨の大きな特長は、金融機関を経由せず個人間で直接送金できること。しかも、手数料は無料もしくは格安です。
通常の銀行送金やクレジットカード支払いでは、一定の手数料がかかります。そのため、少額商品の売買が困難な上、ビジネスの利益率も下げていました。

ほぼ無料の手数料で個人間の直接送金を可能にした仮想通貨は、少額商品の売買を活性化させると言われています。
この少額商品の売買をマイクロペイメントと呼び、例えば、新聞の記事単位の課金や画像・映像のバラ売りなど、コンテンツの販売手段を大きく変えるものと注目されています。

ビットコインを一定期間預けることで金利を得られるサービスもはじまります。いわばビットコインの定期預金です。
これまで、投機目的の短期売買が主流だったビットコインですが、今後は運用を目的とした長期保有のニーズが高まることが予想されます。

また、世界で最も普及しているビットコインを保持すれば、世界中で同じ通貨が利用できます。
ショッピング利用も確実に増えていくでしょう。今、日本でビットコイン取扱店が急増しているのも、外国人観光客へのサービスを見据えてのこと。2020年の東京オリンピックに向けて、その気運はさらに高まることでしょう。

会計ルールはどうなる?

日本の企業会計基準をつくる企業会計基準委員会(ASBJ)は、「仮想通貨に関する会計上の取扱いを検討するよう提言する」という旨の声明を出しています。2017年の秋頃までに大枠の決定が見込まれています。
現状では仮想通貨に関する会計基準がないため、実際に仮想通貨が使われたり、価値が大きく変動したりした場合の会計への反映方法がなく、簿外扱いの企業も多いようです。今後、仮想通貨を保有する企業が増えることが予想されます。まだまだ乱高下が激しい仮想通貨ですから、巨額の損益が突然表面化したり、企業の評価額や投資評価をゆがめたりするケースも出てくるでしょう。

残業時間を短くした社員に対して仮想通貨「OOIRI(オオイリ)」を発行するユニークな試みで知られるカブドットコム証券は、来期より仮想通貨の発行を福利厚生として計上するそうです。
仮想通貨は資産なのか、経費なのか。経理担当として企業会計基準委員会(ASBJ)が仮想通貨の取り扱いをどう判断するのか注視していきましょう。
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フィンテックが生み出した仮想通貨は、ものすごい勢いで社会に浸透し様々な側面を変えようとしています。
今後、企業の保有高が増え、決済や運用などに活用される日も近いのではないでしょうか。新しい通貨による新しい決済が生まれ、新たな会計基準がつくられようとしています。そんな変革期に立ち、経理担当はどう変わっていくべきなのでしょうか。
そのヒントをつかむための一歩として、社会の現状と未来を見据える情報感度を養う必要があります。
その一助となるような情報を今後も提供していきたいと考えています。
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