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ITDX 2017/05/09

フィンテックは、既存の金融サービスをどう変えているのか?

フィンテックというワードが各メディアを席巻しています。
総合コンサルティングファームのアクセンチュアの調査によると、2016年の日本におけるフィンテック企業への投資額は1億5,400万ドル。前年の6,500万ドルから倍増しています。
アメリカを中心に拡大してきた世界のフィンテック市場ですが、日本でもようやく本格化の兆しが見えてきました。
では、フィンテックはどんな金融サービスを生み出し、何を変えようとしているのでしょうか。企業の経理担当が知っておくべきポイントをご紹介しましょう。

ソーシャルレンディング

フィンテックは、「融資」「決済」「送金」「投資」など、従来存在する金融サービスをテクノロジーによって大きく進化させました。同時に仮想通貨など、既存のサービスにはない新しい領域を切り拓いたという側面もあります。
今回は、既存のサービスがどのように進化しているのか、それぞれの領域別にみていきましょう。

まずは、融資分野。この分野で注目されているのがソーシャルレンディングです。ソーシャルレンディングは、既存の与信判断では信用力が低くて融資が受けられなかった層や、信用力が特に高いにも関わらず、他の利用者と同じ金利を支払うことに不満を抱く優良顧客層にターゲットを絞った融資です。それぞれのターゲット別に最適化された金融商品を提供します。

その際、融資条件を導き出すための新たな与信判断の材料を活用します。その代表的なものがPFM(Personal Financial Management)と呼ばれる個人財務管理ソフトウェアやクラウド会計のデータ、ECの購買履歴、SNSの情報など。
例えばECの購買履歴による支払いの滞りや日常の支出状況、SNSでの友人の数やネットワークなどを判断材料とし、これまでの与信基準では評価が困難だった層にまで、融資の判断を下すことができるのです。

手軽にカード決済が導入可能に

フィンテックは、店舗などがクレジットカード決済を導入する際の障壁も大幅に下げています。これまでは専用カードリーダーが必要となり、初期導入費用は数十万円にも及んでいました。しかも、決済手数料は3%〜7%と高額。事前審査も厳しく、導入が拒否されるケースもあります。

フィンテック企業が提供する近年の決済サービスは、導入時のコストが極めて安価です。一定のコストがかかったとしても、後日、その分の金額がポイントとして還元されるなど、実質無料で導入できるケースもあります。専用のカード決済端末も不要で、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末にアプリをダウンロードしてすぐに利用できるサービスもあります。

決済手数料も既存のサービスより安く、事前審査が不要もしくは緩く設定されています。その代わりに採用されているのが途上審査という仕組み。これは、日々の決済状況を監視し、不正や異常が見つかった場合は、すぐに決済機能を停止する方法です。

こうした決済系フィンテック企業の狙いは、顧客リストと顧客の決済履歴という魅力的な情報を収集すること。この情報を資産として、ユーザー情報のプラットフォームを構築し、大企業とのアライアンスを構築することが事業成長の大きな活路となります。

送金手数料の大幅な引き下げ

送金手数料を大幅に引き下げたのもフィンテックの大きな功績のひとつ。
例えば海外送金の場合、既存の金融機関では平均して送金金額の5%前後かかりますが、フィンテック企業では最大でも0.5%程度で済むケースもあります。このコストメリットは大きな魅力です。

どうしてここまで低価格が実現したのでしょうか。その秘密は、送金ニーズをマッチングさせるプラットフォームにあります。
例えば、日本からアメリカに送金したい人とアメリカから日本に送金してもらいたい人の送金ニーズを国内でマッチングします。

同様に、アメリカから日本に送金したい人と日本からアメリカに送金してもらいたい人の送金ニーズをアメリカ国内でマッチングさせます。
つまり、お金は国を超えずにそれぞれの国同士の送金ニーズにスワップしているわけです。従って為替手数料は発生しない仕組みとなっているのです。

海外送金だけでなく、国内送金も手軽で手数料も安価なものになっています。最近ではスマホから手数料無料で簡単に送金できるサービスも続々生まれています。
送金の領域は、今後フィンテック企業の独壇場となることが予想されています。

AI(人工知能)を活用したロボアドバイザー

最後は投資の領域です。
この分野ではAIを活用したロボアドバイザーが代表的なフィンテックです。ロボアドバイザーは、最先端の金融工学に基づいた高度なポートフォリオ(投資運用プラン)などの投資アドバイスを手軽に受けられるサービスです。

まずWeb上で、投資の経験、投資金額、資金の原資、期待する運用効果、下落時の考え方、資金の将来的な使い道、金融資産全体に占める資金の割合など、投資に関する様々な質問に答えていきます。それらの情報をもとに、独自のアルゴリズムによって投資家の属性にマッチしたポートフォリオを作成してくれます。

そして、作成されたポートフォリオに沿った金融商品を投資金額の1%程度の取引手数料で受けることができるのです。
これまで、一部の富裕層に限られていた高度なポートフォリオマネジメントサービスが、誰でも気軽に利用できるロボアドバイザー。金融機関にとっては、投資未経験層を含めた新規ユーザー獲得の切り札になると目されています。
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フィンテックがもたらした変革を、既存の金融サービス「融資」「決済」「送金」「投資」の4つの領域でみていきました。
いずれの領域でも、誰もが低価格で簡単に各種サービスが受けられるようになってきています。
この変革によって、金融機関や証券会社、ITベンダーなどの役割や業態も大きく変わっていくことが想定されます。フィンテック企業への投資の急増や相次ぐメガバンクとフィンテック企業とのアライアンスなどは、そうした変革の端緒と言えるでしょう。
フィンテックによって経理業務も大きく変わることは確実です。今後も注視していきたいトピックスです。
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