「これ、精算してくれる?」
「またレシートですかぁ?ちゃんと領収書もらってきてくださいよ〜」
「え〜、レシートで大丈夫だろう」
「絶対にダメです。後々面倒なことになったらどうするんですかぁ」
「おれたち営業部は忙しくて、いちいち領収書をもらっている時間も惜しいの!」
どうやら、言い争いの種は経費精算のようだ。
コンビニでペンやノートなどの文房具を購入した吉田、レシートでの精算を頼んでいるのだが、理子は断固として応じないのだ。精算は領収書との引換えをもって行うべし。
前任者で経理の師匠でもある会田計造の教えを忠実に守っている。
というより、ようやく経理担当としてひとり立ちした気負いと生来の負けん気が態度を硬化させているだけなのかもしれないのだが。
「頼むよ、理子ちゃん。今度飯おごるからさあ」
「ごはんなんていいですよ。私は経理としての使命を全うしているだけです!」
一転して懐柔策に出た吉田だが、まったく歯が立たない。真面目なのはいいことだが、その融通の利かなさに怒りが沸いてくる吉田である。