親会社が自社と子会社などのグループ会社をまとめて決算することを「連結決算」といいます。
この連結決算に欠かせない報告書が「連結財務諸表」です。
連結財務諸表は複数の報告書から構成されており、作成の際はこれらを正しく理解する必要があります。
そこで今回は連結決算と連結財務諸表作成の進め方について詳しく解説していきます。
- 投稿日:2019/07/16
- 更新日:2025/09/16
連結決算の定義と必要性
連結決算とは、親会社とその子会社を含めた関係グループ企業を1つの企業と見なし、グループ企業全体の財政状態、経営成績、キャッシュフローの状況を数値によって明らかにする手続きです。
子会社を含め、単独決算ではグループ内で発生する内部取引で生じた利益などが消去されないため、単純に単独決算を合計してもグループ企業全体の財務状況は正しく把握できません。
連結決算を行えば、内部取引や利益移転などが消去されるため、計上の重複や不正を防いだうえでグループ企業全体の正しい状況を反映した財務諸表が作成できます。
このような、グループ全体で作成される連結損益計算書や連結貸借対照表などを連結財務諸表と呼びます。
これにより、株主や投資家などの投資判断に役立つ情報提供ができるようになります。
連結決算が必要な企業の範囲
連結決算は、会社法と金融商品取引法で一定の企業に義務づけられています。
連結決算が義務づけられている企業の条件は以下の通りです。
- 会社法による条件
大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社)
- 金融商品取引法による条件
有価証券報告書の提出義務がある企業(上場企業、店頭登録している株式の発行人、有価証券届出書の提出会社など)
ただし、上記に該当する企業であっても、連結対象となる子会社・関連会社がなければ連結財務諸表を作成する義務はありません。
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連結財務諸表の種類
連結子会社、持分法適用会社によって作成するものは異なりますが、連結財務諸表は基本的に次のものから構成されています。
連結貸借対照表
連結対象になるグループ全体の資産、負債、純資産の状態を表したものです。
特定のタイミングのグループ全体の資産・負債・純資産の金額と内訳を示す報告書として機能します。
作成する際は、ただ単純に親会社と子会社の貸借対照表の数値を合算するだけでなく、グループ内の投資・資本・債権債務の相殺や連結をしたり、持分法が適用されていたりするかによってもルールが変わります。
連結損益計算書
連結対象になるグループ全体の、期中の経営成績を表す報告書です。
一定期間(決算期)のグループ全体の損益の状況を示す報告書として重要な役割を果たします。
作成の際は、まず親会社と子会社の財務諸表を集めて損益を合算し、その後、関係会社間の内部取引(売上、売上原価、受取・支払利息など)を相殺・消去する手続きを行うことで、連結での損益を算定します。
連結包括利益計算書
資本取引(有価証券の売買、資本の貸借など)を除いた純資産の期中の変動を表したもので、グループ全体の当期純利益にその他の包括利益の内訳項目を加減して包括利益を表示する報告書です。
2010年、国際会計基準(IFRS)に日本の会計ルールを合わせることを目的に導入されました。
包括利益計算書を提出することにより、株主から受託している資産に対する経営側の責任を明確化できるとされています。
連結株主資本等変動計算書
連結貸借対照表の純資産の部の一会計期間における変動額のうち、主として、親会社株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を示す報告書です。
連結株主資本等変動計算書では、資本金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式などの株主資本項目については変動事由ごとに表示し、新株予約権や非支配株主持分は増加と減少を相殺した純額で表示します。
連結キャッシュフロー計算書
連結キャッシュフロー計算書は、一定期間にグループ全体のキャッシュ(現金・現金同等物)をどのように獲得し、使用したかを表します。
個社だけでなく企業グループ全体のキャッシュを表示する必要があり、具体的には「営業活動」、「投資活動」、「財務活動」の3つの区分で表します。
営業活動によるキャッシュフローは「直接法」もしくは「間接法」のどちらかで表示することができますが、連結キャッシュフロー計算書の場合は手間の少ない間接法が使われることが一般的です。
連結附属明細表
社債明細表や借入金明細表、引当金明細表など、連結財務諸表の重要項目を補足するための報告資料のひとつです。
連結財務諸表の内容を補足する重要な事項を表示する報告書として機能し、財務諸表の理解をより深めるための詳細情報を提供します。
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連結財務諸表作成の手順と効率よく進めるポイント
連結財務諸表とは親会社がグループ全体の財政状態、経営成績、キャッシュフローの状況などを総合的に報告するための報告書です。
連結財務諸表作成の手順
作成する際のおおまかな流れは、下記となります。
1.子会社や関連会社から連結財務諸表の作成に必要な情報を集める。
連結決算は、グループ企業ごとの単体決算から始まります。
グループ内の親会社・子会社・関連会社は、各自で貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などの個別財務諸表を作成したうえで連結パッケージを作成します。
連結パッケージとは、連結財務諸表の作成に必要な情報を、親会社が定めた基準や様式に従って収集するためのグループ共通フォーマットです。
作成された連結パッケージは親会社が回収します。
2.親会社の財務諸表と子会社や関連会社の財務諸表・連結パッケージの内容を合算する。
まずは各社から回収した連結パッケージの情報を単純に合算します。
ただし、この段階ではまだグループ内取引が含まれているため、次のステップで調整が必要になります。
3.グループ内の取引などを消去する連結調整仕訳を行う。
投資と資本の相殺消去や内部取引の相殺消去、のれん償却など連結仕訳の加算・減算などの処理を行って連結精算表にまとめます。
これにより、グループ内の重複や不整合を排除します。
4.算定した数値をもとに各種計算書などを作成する。
科目を集約して各種連結財務諸表を作成し、並行して利害関係者への開示用・報告用の連結財務諸表を完成させます。
なお、子会社や関連会社から集める情報には下記のようなものがあります。
- 株式異動明細
- 支配獲得日
- 持分比率
- 会計処理基準
- 出向者情報
- 債務保証増減
企業によって必要な情報も異なってくるので、あらかじめどの情報を集めておかなければならないのか把握しておきましょう。
連結決算を効率よく進めるポイント
上場企業の場合、連結財務諸表の早期開示が義務づけられているため、親会社だけでなく子会社や関連会社から、いかにスムーズに情報を集約できるかが重要となります。
まずは、各社が親会社に提出する連結パッケージについて、必要な情報を適切・正確に共有できる仕組みを作ることが大切です。
そのためには、担当者に対して日常的に取引入力の方法をレクチャーし、継続的なコミュニケーションを行うことが欠かせません。
また、グループ内で会計処理の方法が異なると、合算や相殺の際に修正作業が発生し、業務が煩雑になります。
採用する会計方針は、原則として親会社と関連会社で統一しておくことが望ましいでしょう。
必要情報を正確に収集した後は、連結会計システムを導入していれば、連結処理に必要な数式や仕訳があらかじめ組み込まれているため、連結決算を効率的に進められます。
グループ全体でシステムを統一すれば、データ管理の一本化や内部取引の計上方法の標準化も容易になり、連結対象会社が多い場合でも業務効率を大きく改善できます。
システムを選定する際は、導入実績やサポート体制に加え、実務担当者が直感的に操作できるかどうかといった「現場目線」の使いやすさも重要です。
大規模連結にも対応できるシステムもあるため、グループの規模によって検討してみるとよいでしょう。
※関連記事:ざっくりわかる会計用語!簡単解説「連結決算」
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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財務を軸に、販売・給与などのデータを一元管理することで、各システムがシームレスに連携!それぞれの業務が劇的に効率化するとともに、リアルタイムな経営判断が可能になります。
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連結決算は、グループ全体の経営実態を把握し、適切な情報開示を行うために欠かせない重要な業務です。
単体決算とは異なる複雑なプロセスが必要なため、経験と知識が豊富な経理担当者が担うことが多い業務ですが、初心者であっても作業の流れやシステムの使い方を勉強しておけば、いざというときに書類の作成ができるだけでなく会社の経営状況も把握できるようになります。
ぜひチャレンジしてみてくださいね。