掛取引とは、商品や原料を売買する際に、その時点ではなく一定期間経ってから支払いを行う取引のことです。「毎月末締め・翌月末払い」のように定め、その月の取引をまとめて処理することで、自社と取引先の両方に対して事務コストの削減や管理の簡易化を図ることができます。毎日大量の商品を売買し、数千万、数億もの費用のやりとりしている商社などは、掛取引でなければ、事務作業が膨大になり過ぎて事業自体が成り立たなくなってしまうでしょう。
なお、掛取引は日本でも江戸時代から行われており、三越百貨店の前身である「三井の越後屋」は掛取引の効率的な商売方法で繁栄したとも言われています。
※関連記事:日本の帳簿の歴史から学ぶ。変革期を迎える「経理」の仕事で生き残るには
経理/財務会計処理 2019/06/25
経理の仕事の基本のキ!売掛金・買掛金の管理
経理業務の基本である仕訳作業において、数ある勘定科目の中でも毎日目にすると言って過言ではないのが「売掛金」と「買掛金」ではないでしょうか。特にBtoB業態の企業のように掛取引が大量にある企業では、売掛金と買掛金の管理が煩雑になりがちです。
今回は、いまさら聞けない売掛金と買掛金の基本的な知識と管理方法について解説します。基礎知識を身につけて、業務改善に役立ててください。
掛取引とは
売掛金と買掛金の基本
前述した掛取引では、商品を仕入れたがまだ代金を支払っていないものを「買掛金」、商品を販売したがまだ代金を受け取っていないものを「売掛金」として処理します。
例えば、ある酒類専門の卸売業者が掛取引でビールを5ダース仕入れて得意先の居酒屋に納品した場合、「ビールの仕入金額=買掛金」、「ビールの販売金額=売掛金」となるのです。
例えば、ある酒類専門の卸売業者が掛取引でビールを5ダース仕入れて得意先の居酒屋に納品した場合、「ビールの仕入金額=買掛金」、「ビールの販売金額=売掛金」となるのです。
未収金と未払金の違い
売掛金、買掛金と同じように、まだ代金を受け取っていない、または支払っていない状態を表す勘定科目に「未収金」、「未払金」があります。仕訳の際は掛取引と区別して処理する必要があるので、両者の違いについてはしっかりと理解しておきましょう。
売掛金と買掛金が原料の仕入れや商品の売買など、事業に直接関わる取引に使われることに対し、未収金、未払金は水光熱費や輸送費、人件費、顧客管理システムの運用費といった、事業に間接的に必要な経費に対して使用される勘定科目になります。前述した酒類専門の卸売業者を例に、それぞれを簡単にまとめたものが下記となります。
売掛金と買掛金が原料の仕入れや商品の売買など、事業に直接関わる取引に使われることに対し、未収金、未払金は水光熱費や輸送費、人件費、顧客管理システムの運用費といった、事業に間接的に必要な経費に対して使用される勘定科目になります。前述した酒類専門の卸売業者を例に、それぞれを簡単にまとめたものが下記となります。
事業に直接的に関わる場合 | 事業に間接的に関わる場合 | |
---|---|---|
販売 | 売掛金 | 未収金 |
購入 | 買掛金 | 未払金 |
対象例 |
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|
売掛金の管理方法
売掛金を管理するには、営業部が作成した請求書の控えなどを元に、経理部が「振替伝票」を作成することから始まります。具体的な記入例は以下のようになります。
■売掛金の振替伝票の仕訳例
伝票の借方科目に「売掛金」、貸方科目に「売上」、摘要欄には請求書のうち、今後入金が予定されているものを記入します。同じ日に複数の伝票を作成する際は通し番号を入れることで、二重計上などのミス防止にもつながります。
続いて、自社で管理している場合には「得意先元帳」にその内容を記録します。得意先元帳とは総勘定元帳を作成する際に必要になる補助簿の1つで、売掛金で取引している顧客別に都度やりとりを記録する帳簿になります。ただし、記録するのは売掛金のやりとりのみで、現金での取引は記入しません。実際の記入例は下記の通りです。
■得意先元帳の記入例
会計用語において、基本的に「借」は自社にとってプラス、「貸」はマイナスを意味します。ビールを掛けで販売した場合、今後入金が予定されているプラスの取引なので左側に代金の8万円を記入します。右端の残高は借の掛け金の合計を表しているので、入金(貸方)があった場合は差し引き、借方に記入した際は足します。
■売掛金の振替伝票の仕訳例
金額 | 借方科目 | 摘要 | 貸方科目 | 金額 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
100,000 | 売掛金 | 請求No.190930001 | 2019年9月 | (株)D社 | 商品売上 | 売上 | 100,000 |
100,000 | 合計 | 100,000 |
続いて、自社で管理している場合には「得意先元帳」にその内容を記録します。得意先元帳とは総勘定元帳を作成する際に必要になる補助簿の1つで、売掛金で取引している顧客別に都度やりとりを記録する帳簿になります。ただし、記録するのは売掛金のやりとりのみで、現金での取引は記入しません。実際の記入例は下記の通りです。
■得意先元帳の記入例
得意先元帳 D社
2019年 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 借/貸 | 残高 | |
---|---|---|---|---|---|---|
6 | 1 | 前月繰越 | 借 | 200,000 | ||
7 | 入金 | 50,000 | 〃 | 150,000 | ||
19 | ビール(5ダース) | 80,000 | 〃 | 230,000 | ||
21 | 日本酒(6本) | 30,000 | 〃 | 260,000 | ||
31 | 次月繰越 | 〃 |
会計用語において、基本的に「借」は自社にとってプラス、「貸」はマイナスを意味します。ビールを掛けで販売した場合、今後入金が予定されているプラスの取引なので左側に代金の8万円を記入します。右端の残高は借の掛け金の合計を表しているので、入金(貸方)があった場合は差し引き、借方に記入した際は足します。
買掛金の管理方法
商社の購買部などは、ビール(5ダース)を仕入れた際、飲料メーカーから請求書を受け取ることになります。売掛金と同様に、経理担当者はこの請求書をもとに「振替伝票」を作成することになります。
■買掛金の振替伝票の仕訳例
今後出金する予定の取引なので、貸方には買掛金を記入します。その後、「得意先元帳」と対になる買掛金を取引先別に記録して管理する補助簿「仕入先元帳」に転記します。(こちらも会社によって管理している場合の作業となります。)
■仕入先元帳の記入例
■買掛金の振替伝票の仕訳例
金額 | 借方科目 | 摘要 | 貸方科目 | 金額 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
50,000 | 仕入れ | 請求No.B1909001 | 2019年9月 | (株)B社 | 商品仕入れ | 買掛金 | 50,000 |
50,000 | 合計 | 50,000 |
■仕入先元帳の記入例
仕入先元帳 B社
2019年 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 借/貸 | 残高 | |
---|---|---|---|---|---|---|
6 | 1 | 前月繰越 | 借 | 200,000 | ||
7 | 出金 | 50,000 | 〃 | 150,000 | ||
10 | ビール(5ダース) | 80,000 | 〃 | 230,000 |
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