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経理/財務税務(税金・節税) 2017/03/30

社長が喜ぶ節税テクニックの基本とは?(新米経理の会計奮闘記 第4回)

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新米経理の会計奮闘記 登場人物
  • 山本理子

    ようやく経理担当になったものの、分からないことだらけ。毎回様々な経理問題に頭を悩ます。曲がったことが大嫌い。

  • 吉田経男

    毎回経理問題を引き起こす営業部員。おっちょこちょいでずる賢い一面もあるが、本当はやさしい男。

  • 会計仙人

    突如現れて、会計問題をわかりやすく解説してくれる謎の仙人。仏陀の会計担当だったらしい。

新米経理の山本理子が社内で巻き起こる様々な経理問題に挑む会計奮闘記。
毎回、突如現れる会計仙人が経理問題を分かりやすく解説してくれるお悩み解決ストーリー、第4回目です。
今回は、社長が喜ぶ節税テクニックの基本について、会計仙人のご託宣が炸裂!
さて、どんな騒動が待ち受けているのでしょうか。

節税対策で社員旅行?

「どこに行こうかなあ」鼻歌まじりで理子が雑誌をめくっている。

「おや、珍しく上機嫌じゃないですかぁ、何見てんの」と例のごとく営業帰りの吉田経男が入ってきた。

「社員旅行に行くかもしれないの」と理子は喜々としている。

「社員旅行?なんでまた今頃」と怪訝な表情を浮かべる吉田。

「実はね。だいぶ黒字が出そうなの。今期のうちの会社」

「ほお、黒字ですか。いいことじゃないですか」と吉田の顔にも笑みが広がる。

「それでね。節税対策として、経理部から社長に提案しようと思っているわけ」

「なるほど。それで、社員旅行なわけね。旅行もいいけど、やっぱ決算ボーナスじゃない?」と俄然鼻息が荒くなる吉田である。

「何言ってるんですか、絶対旅行。みんなで今期の成果を分かち合うの」

「分かち合うなら、現金の方がいいでしょうよ。旅行に行くなんて時間がもったいないよ」

「ダ〜メ。絶対旅行」「決算ボーナス!」「旅行!」「ボーナス!」
両者譲らず、険悪な雰囲気が立ち込めてきた。

と、その時、どこからともなく重厚な太鼓が鳴り響き、うっそうとした霧に包まれた仙人が舞い降りてきた。

会計仙人、怒り心頭!

「バッカも〜ん!」いきなり怒号の会計仙人である。

「な、何ごとですか」と困惑する理子と吉田。

「わしは経理の揉め事を解決するためにこの世につかわされた身。その名を『会計仙人』と申す。かつては、仏陀の会計担当として名を馳せた男よ」

「はいはい、わかっています。で、仏陀の会計担当だったお方が何をそんなに怒ってるんですか」理子は呆れ顔である。

「よいか、理子よ。いたずらに会社の経費を増やすのが節税対策かね?」

「だって、経費を増やすのが節税対策の基本じゃないですか」

「税金を払うのを避けるために、会社のキャッシュを減らす?それで、資金繰りが悪化したらどうするつもりじゃ。
会社の目的は税金を逃れることではない。むしろ税金を通じて社会に貢献することも重要な使命じゃ」

「じゃ、税金をバンバン払えっていうんですか?できるだけ税金を抑えるのは経理の役目じゃないんですか」理子は怒りを隠せない。

「もちろん、そうじゃ。あくまで節税が目的ではないということじゃ。利益が出たら、それをどう活かすかが大事なのじゃよ。
そのためには、会社がどのような中長期ビジョンに向かい、現在どのフェーズに進んでいるかを把握する必要がある。
人材に投資すべきか、設備を充実化させるべきか、そうした戦略に合わせて投資することで節税につなげていく。それが本来あるべき節税対策じゃ」

「そんな会社のビジョンや戦略なんて、社長に聞かなきゃわかんないわよ!」

「バッカも〜ん!だからこれからの経理は、会社のビジョンや戦略と一枚岩じゃなきゃならんのじゃ。
そのためには、経営計画を把握するのはもちろん、それに合った節税対策を選ぶ必要がある。そのためにも、様々な節税対策を頭に入れておくこと。
おまえは、社員旅行と決算ボーナス以外の節税対策を知っているのか?」

「し、知りません・・・」消沈する理子。

「そんなダメ経理のために、節税対策の基本テクをピックアップしたわい。しっかり勉強せい!」

節税対策7つの基本テクニック

①旅費規程をつくる
「出張の多い会社は、旅費規程を作成して出張日当を支給するのがおすすめじゃ。
例えば1日の出張日当を2万円と規定すれば、1カ月に10日出張する場合、月の日当は20万円、年間240万円。
これがまるまる経費として計上できるのじゃよ」


②有姿除却を行う
「使わなくなった設備やソフトウェアが眠ったままになっている会社も多いことじゃろう。そんなケースでは、有姿除却といわれる方法がある。
除却とは、設備などを廃棄業者に引き取ってもらうことをいう。つまり、有姿除却とは、廃棄業者に引き取ってもらう予定のものがまだ会社に存在すること。これを経費として落とすことができるのじゃ。
この節税対策は、使う見込みがない場合に限るので、本当に使ってない事を実証する書類を保存しておくことが大切になるぞ」


③車の購入は中古車
「車などの固定資産は、一度に経費として落とすことはできない。国が決めた耐用年数の期間で経費を落としていく。
これを減価償却という。
新車の普通車の場合6年かけて経費となるが、中古車なら1年で全額経費となる可能性がある。
車を購入する場合は、新車より中古。特に4年落ちの車が狙い目じゃ」


④社員旅行
「さっきは理子に厳しいことを言ったが、社員のモチベーションを上げる必要があるなど、戦略に沿っていれば社員旅行も節税対策として有効な手段じゃ。
1年間ハードに業務を遂行して結果を出した、そんな時はみんなの結束を強める絶好の機会となる。
ただし、あまり豪遊し過ぎると税務署が福利厚生費と認めてくれない可能性もある。一人10万円が基準ということを覚えておくことじゃ」


⑤広告宣伝費
「期末に広告宣伝費を投下するのは多くの企業が実践している節税対策。
注意しなければいけないポイントは広告掲載日じゃ。
今期の経費に計上するなら、事業年度終了日までに広告を掲載する必要があるぞ」


⑥小規模企業共済
「中小企業の社長におすすめしたいのが小規模企業共済。
簡単にいうと、社長の退職金積立みたいなものじゃ。
毎月一定の掛け金を国が運営する中小企業基盤整備機構に支払う。払った掛け金は個人の税金を計算する際、所得から控除することができる。しかも、年間最大84万円までなら全額控除が可能なのじゃ。
将来、自分が社長を辞める時には払った金額+αが戻ってくる」


⑦健康診断
「社員の健康は会社の財産。定期的な健康診断は欠かせないものじゃ。
この健康診断を経費にして節税することができる。
条件は社員全員で健康診断を受けること。役員など特定の社員のみでは福利厚生費とはならないから注意。
ただし、40歳以上など、一定の年齢以上の社員に限定する場合は経費となるぞ」


「なるほど〜、いろいろな節税対策があるんだねえ」と感心する吉田。

「今期はみんなすごく頑張ったし、社員同士の親睦とモチベーションアップは戦略としても正しい選択だと思うし、やっぱ社員旅行じゃないですか」と理子。

「ほんと。で、どこに行こうか」と吉田も賛同する。

「海外なんてどうかしら。お得意さんも呼んで」と理子。

「飲み屋のお姉さんも呼んだりして」と吉田もノリノリ。

「ば〜か。それより会計仙人も連れてく?あれ、いないわね」
と、理子がキョロキョロと辺りを見回すと、壁にどーんと張り紙が貼ってあった。

社員旅行が福利厚生費と認められるための要件
○旅行の期間が4泊5日以内であること
(海外旅行は海外での滞在日数が4泊5日以内であること)
○社員の50%以上が旅行に参加していること
(役員だけの旅行はNG)
○旅行代金は1人10万円程度までであること

「おっ、4泊5日までOK。海外も行ける!」と満面の吉田。

「早速、日程抑えなきゃ」と、パソコンに向かう理子。

「情けないのぉ。社員旅行に行くかどうかを決めるのはお前らじゃなかろう。まずは社長への提案が先じゃろう」
雲間でうなだれる会計仙人であった。

**********
会計仙人が言うように、節税を経営戦略と切り離して闇雲に行うのは得策とはいえません。
しかし、その方法はなるべく多く知っていた方が良いでしょう。
選択肢が広がるほど、自社の戦略と状況に合った節税対策を見つけられる可能性が高くなります。
理子も自分から節税対策の方法を調べ始めたようですよ。あなたも、始めてみてはいかがでしょうか。
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