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経理/財務税務(税金・節税) 2019/05/21

絶対に知っておきたい!税務調査の正しい対応とは?

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ある日突然、税務署から「貴社の税務調査を行いたい」と電話がかかってきたら、どのように対応するべきなのでしょうか。映画「マルサの女」の強烈なイメージもあり、税務調査に対してマイナスな印象を抱いている経理担当者も少なくないと思います。しかし実際は、必要な書類をしっかりと用意し、粛々と対応すれば大きなトラブルが起こることはありません。そこで今回は、税務調査の概要とスムーズに対応するためのポイントを紹介したいと思います。

税務調査の目的と法的根拠

日本の法人税については、納税者本人が所得や経費などを税務署に申告し、税額を確定させてから税金を納付する「申告納税制度」が採用されています。当然、徴税はすべての納税者に対して公正・適切に行われるべきですが、一部の納税者が所得を過少申告するなどの不正を行った場合、目的を果たすことができません。その対策として実施されるのが税務調査です。

税務調査の法的根拠

税務調査は、国税通則法第74の2で定められている「質問検査権」を法的根拠として実施されます。質問検査権があるのは、国税庁、国税局、税務署、税関の職員のうち調査を行う事務の従事者とされています。また、具体的な権限は大きく分けて3つあります。

  • 納税義務者に対して質問できる権限
  • 帳簿書類その他の物件を検査できる権限
  • 不正や誤りが疑われる当該物件の提示、もしくは提出を求められる権限

さらに質問検査権を行使できる対象は、「所得税」、「法人税」、「消費税」について、それぞれ以下のように定められています。

所得税
  • 所得税の納税義務者、納税義務があると認められる者又は確定損失申告書等を提出した者
  • 支払調書又は源泉徴収票、信託の計算書等を提出する義務がある者
  • 上記(1)の者に金銭若しくは物品の給付についての権利義務がある者又はあったと認められる者

法人税又は地方法人税
  • 法人
  • 上記(1)の者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡についての権利義務がある者

消費税
  • 消費税の納税義務者、納税義務があると認められる者又は還付を受けるための申告書を提出した者
  • 上記(1)の者に対し、金銭の支払若しくは資産の譲渡等についての権利義務がある者

出典:国税庁 第7章 国税の調査

さらに、税務調査の対象は会社の経営者や経理の責任者だけでなく、従業員も含まれることが明示されています。会社に税務調査が入ると通達があった際は、経理担当者も自身が作成した帳票などについて質問される可能性があることを覚えておきましょう。

経理担当者が知っておくべき税務調査の対応

税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。任意調査は事前に税務署などから連絡があり、会社が調査を許諾してから進められるのが一般的です。一方、申告した情報の不正や誤りの疑いが大きい場合は、国税局による事前告知なしの「強制調査」が執行されます。
任意調査でもまれに事前告知なしで調査が行われることもありますが、基本は前述した通り、事前に調査官から連絡が入り、その電話で調査の日時や揃えるべき帳簿書類、調査を行う税務職員の氏名などが通知されます。
調査内容はケースバイケースですが、特に調査されることが多い項目を下記にまとめました。

■税務調査が行われる理由
赤字法人の調査 会計処理ミスの調査 事故費用の調査
海外資金に関わる調査 役員報酬の調査 社長の公私混同の調査
損益変動の調査 匿名通報がきっかけの調査 役員交代の原因調査
移転理由の調査 欠損繰戻の調査 分社操作の調査

事前準備
税務調査の実施が決まったら、まずは顧問税理士などに連絡しましょう。続いて行うのが、調査の対象となる帳簿書類を用意する作業です。基本的には税務申告書を作成するときに必要な資料や会計帳簿の一式を揃えますが、中でも以下の帳簿書類は重要なので覚えておきましょう。

■税務調査で必要になる帳簿書類(例)
  • 納品書
  • 請求書
  • 領収書
  • 通帳
  • 給与台帳
  • 各種計算書

書類が用意できたら、顧問税理士や社長など当日の出席者と一緒に打ち合わせを行います。会社の管理体制や経理スタッフ、業務に関わる「概況聴取」は、外部の税理士では答えにくいので、事前に誰が説明するのかを決めておき、内容を出席者の間で共有しておくことが重要です。

当日の対応
税務調査は、用意した書類を元に税務調査官が各帳簿の信ぴょう性を確認していく作業です。一番重要となるのが、売上とそれに対応する原価に問題がないかどうかの確認です。そのほか、現金管理の方法を確認する「経理状況確認」、倉庫や工場、店舗の状況や製造工程などを確認する「現場確認」などが行われます。
調査官からの質問に対しては、税理士を立てれば基本的に税理士が対応してくれますが、担当者のほか、社長が対応を迫られるケースもあります。質問に答える際には簡潔に答えるようにし、不要なことは話さないように心がけましょう。中には即答できないものもあると思います。その場合は焦らずに質問の意図と現状を確認したうえで回答してください。議事録は必ず残すようにして、提出した資料を調査官が持ち帰るといった場合にはコピーを取っておきましょう。
なお、調査官は調査対象から物品を受け取ってはいけないと定められているため、当日の昼食などを用意する必要はありません。

調査終了後
問題が見つからなかった際は「申告是認」となりその後の対応は特に必要ありません。それに対して指摘事項があった際は、申告書類を修正して追徴課税を支払う「修正申告」、あるいは税務署に対して訂正を求める「更正の請求」を行います。
修正申告をする場合は指摘された項目のうち、どこまでを修正するかを税理士と確認します。確認の結果、受け入れられない修正事項に対しては反論することも可能です。その場合は根拠を示して話し合いを続けながら、着地点を模索していくことになります。
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税務調査も事前に理解を深めておけば、むやみに怖がることはありません。大切なのはいかに普段の業務を丁寧に行うかということで、その成果が調査時にも反映されます。普段からミスなく帳簿を作成していれば、追徴課税を支払うリスクを下げることができますし、いざという時も自信を持って受け答えができます。まずはしっかりと自身の業務をこなすことを意識してみましょう。

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