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ITDX 2018/11/27

IT化推進実態調査から見えること 第2弾(会計事務所白書2018特別編)

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IT化推進実態調査は、事業主および税理士・公認会計士約600名を対象としてIT化推進に関する実態を調査したもので、IT活用の現状と導入課題を浮き彫りにした調査として注目されています。この調査については先月も記事に取り上げましたが、今回は第2弾として、専門家の意見をはさみながら深掘りしていきたいと思います。取材にご協力いただいたのは、数社の企業で経理・IPO業務を中心とした管理業務や海外駐在業務を経て独立し、現在は経理・財務の企業顧問やコンサルタント、ビジネス作家としても活躍する前田康二郎さんです。

IT化に無関心な経営者が多い

事業主のIT活用・導入に関する現状

Q あなたの職場のIT導入に対する課題について教えてください(複数選択可)

1位 価格(費用対効果) 46.7%
2位 ITに詳しい人材/導入を推進する人材の不足 33.3%
3位 必要なサービスがわからない 22.7%

Q あなたの職場のIT化推進者について教えてください(複数選択可)

1位 とくにいない 45%
2位 メーカー・販売会社・代理店・事務機器屋 33.7%
3位 税理士・会計士 20.3%

IT化推進実態調査「会計事務所白書2018年特別編」より

IT導入に対する課題では、半数近くが価格(費用対効果)をあげています。これをどう見るべきなのでしょうか。
前田氏(以下敬称略) 価格がIT導入の課題となっているのは大きくうなずけます。私はこれまでに多くの企業の経理や顧問を行ってきましたが、経営者は総じてコスト意識が高く、利益を生み出すことが明確ではないものにコストはかけないという方が多いです。とくに経理部門のIT化は難しいです。経営者にとっては、現状で問題ないのになぜコストをかけて変える必要があるのか、ということになります。IT化に無関心な経営者が意外にも多いのです。

経理担当自らITを導入する理由を明確に説明する必要があるということでしょうか。
前田 それが出来れば理想的ですが、現状は難しいと思います。というのも、会計ソフトを実際に使う経理担当もまた新しいソフトやシステムを嫌う傾向があります。やはり、使い慣れたものを変えるというのは抵抗がありますから。2つ目のデータ、社内にIT化を推進する人がいないというのもうなずけます。ほとんどの人は、余計な業務をやりたくないと思っています。

IT化の必要性に迫られる急成長企業

ITを導入しなければならない企業もあるのではないでしょうか。
前田 はい。例えば急成長している企業ですね。多店舗展開をしている企業で新規出店が急増しているチェーンなどはITによる効率化に迫られているでしょう。将来的にIPOを目指している企業もIT化は必須です。IPOの際は、5年分の人件費の推移など要請される提出書類が膨大なので、きちんとデータとして保存しておく必要があるためです。過去のデータをスムーズに引き出せるよう、同じメーカーの会計ソフト・システムを踏襲し、会社の成長に合わせてバージョンアップしていくことが重要となります。

なるほど。ビジョンを持ち、会社を大きくすることに意欲的な企業はIT導入に積極的ということですね。
前田 そうです。ただ、そういう会社は少数派で、できるだけ現状を変えたくないと考える会社が多いというのが私の実感です。それが調査の数字に表れているのではないでしょうか。

ITに詳しい税理士・会計士は少ない

会計事務所の顧問先へのIT導入サポート事情

Q IT関連において、あなたと顧問先との関係はどのようなものですか

「顧問先も私も詳しくないのでITの話題にならない」 49.7%
「私がITに詳しいので顧問先にアドバイスしている」 22.1%
「私も顧問先もITに詳しいので情報交換している」 15.0%

Q あなたの事務所では、顧問先にどのようなIT関連情報を提供していますか(複数選択可)

「提供していない」 49.3%
「事務所で導入実績のある機器やサービスに関する情報」 19.7%
「IT利活用によるコスト削減に関する情報」 17.3%

IT化推進実態調査「会計事務所白書2018年特別編」より

次は視点を変えて、会計事務所から顧問先へのIT導入サポート事情を見てみます。ITに詳しくないという税理士・会計士が多いですね。
前田 実際そうです。ITに詳しい税理士・会計士は非常に少ないと思います。ITに詳しくないとITの話題や情報提供はできませんから調査結果は当然です。税理士・会計士も高齢化が進み、新しいことを学ぶ必要性を感じていない方が多いと思います。

若い方はどうでしょう。差別化が必要なのではないでしょうか。
前田 自分の顧客をがっちり確保している年配の方々が多くいらっしゃる反面、若い税理士・会計士は差別化が必要ですね。もう、安い顧問料で記帳代行をやっていく時代ではありません。経理業務に付加価値をつけていく必要があります。税理士でありながらITコンサルティングを兼ねる。あるいは税務相談もできるコンサルティング会社という位置付けは、需要があるのではないでしょうか。

税務の付加価値としてのITコンサルティング

ITコンサルティングを視野に入れた場合、IT化の必要性がある成長企業、IPOなどのビジョンをもつ会社がターゲットですね。
前田 そうですね。意欲的な会社をターゲットにすることに加え、もう一つの着目点として、会社に合ったIT化が非常に多様化している点があげられます。IT化の必要性を感じていても自社に最適な構成がわからないのです。例えば、製造業などは数百を超える仕訳があり、現場による入力から自動仕訳、経理のチェックという流れを構築すると経理業務がスムーズになります。クラウド会計を経費精算など部分的に採用すると効率化が図れる会社もあるでしょう。ERPなど統合型のソフトを入れて、会社の成長とともにバージョンアップすると、業務効率化とコスト面でもメリットがある会社もあります。会社の業務形態やビジョンをヒアリングして、会計ソフト・システムの最適な構成をコンサルティングしていくわけです。

なるほど。IT導入補助金についても、知らないという会社が約8割に上るようですし、こうした有益な情報の提供も喜ばれそうですね。
前田 はい。コンサルタントにとって、有益な情報の提供は重要な任務です。IT導入の際に補助金が出るという情報は、税理士・会計事務所と経営者の関係構築に貢献しそうですね。

本日は、ありがとうございました。

※関連記事:IT化推進に対する実態調査から見えるもの
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ITコンサルティングもできる税理士・会計士、または税務相談もできるITコンサルタント。そんな税理士・会計士の新しいコンセプトの提案がありました。これから差別化を図りたい税理士・会計士の方、企業の経理担当にとっても参考になるのではないでしょうか。また、IT導入補助金などのトピックスは、常に把握しておき適宜情報提供していきたいものです。そのためにも、自分の置かれた業界事情に精通することは大切。今回のIT化推進実態調査にもぜひ目を通しておいてください。
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