国際会計基準「IFRS(International Financial Reporting Standards)」は、その名の通り、国際的な会計基準。IFRSと書いて、アイファースまたはイファースと読みます。会計基準は、もともとそれぞれの国が独自の基準で行っていました。しかし、1980年代以降、企業のグローバル化が進み他国企業との比較をする上で統一基準が必要となりました。90年代前半には国際会計基準審議会によって、統一基準が固められていきます。
国際会計基準として世界的に広まったのは2005年から。この年、EU(欧州連合)域内の上場企業にIFRSの適用が義務化され、他国でも追随する動きが高まりました。現在では、100カ国以上で上場企業に強制適用されています。実は巨大な資本市場を有する先進国で強制適用していないのは日本と米国だけなのです。
日本では2010年より任意適用が認められ、金融庁から2015年より強制適用すると公表されたのですが、実務負担の大きさから国内上場企業の強い反対もあり、実現には至りませんでした。しかし、JPX(日本取引所グループ)のデータでは、2018年8月の時点でIFRS適用済企業は178社・IFRS適用決定企業は19社、合計193社と年々増加。この流れは今後も加速していくことが予想されます。
業務全般制度改正 2018/10/16
近年導入が広がる国際会計基準「IFRS」とは
経理担当なら当然知っているであろう、会計基準。この会計基準には国際会計基準(IFRS)と日本基準がありますが、近年、国際会計基準(IFRS)を導入する日本企業が急増しています。そこには、どんな背景があるのでしょうか。そもそも、二つの基準の違いはどこにあるのか、メリット・デメリットはなんなのか…。言葉は知っているものの、概要や特徴についてはわからないという方も多いことでしょう。この機会に経理担当として知っておくべき会計基準の基本知識を身に付けてください。
国際会計基準「IFRS」とは
日本基準との違い
日本の会計基準との大きな違いとして、まずあげられるのは損益の定義です。日本の会計基準にある経常損益、特別損益がIFRSにはありません。
経常利益
本業の利益といわれる営業利益に、株式や預貯金等によって受け取る配当金や利息などの営業外収益を加算し、借入に対する利払いや有価証券の売却損などの営業外費用を差し引いたもので、かつては、企業の収益力を示す重要な指標とされていました。IFRSではそれがなくなり、営業外損益は「その他営業収益」と「その他営業費用」として算入されます。
特別損益
日本の会計基準では、価値が下落した保有不動産や自社工場、店舗など、固定資産で計上する減損損失や売却損失などを特別損失として計上できます。リストラに伴う費用を計上することもできるなど、本業の損益に影響を与えずに損益計上することが可能です。IFRSでこれが使えなくなると、リストラ費用など事業に関連する損失は、営業費用に含まれることとなります。つまり、営業利益に大きな影響を及ぼしてしまうのです。
そして、最大の相違点といえるのが「のれん代」の扱いです。
のれん代
企業がM&A(合併・買収)をした際に支払った金額と買収先の純資産の差額のこと。買収では、ブランド力や技術力など目に見えない企業価値を考慮して、実際の純資産より高い価格で買う場合があります。その差額をのれん代として減損し、損失を計上します。
日本基準ではのれん代を買収後20年以内で毎期償却しなければならないのに対し、IFRSでは毎期償却をせず、毎期評価をして価値が下がれば減損として計上するルールとなっています。従って、IFRSを導入する企業は、ソフトバンクや楽天などM&Aに積極的な姿勢を見せています。IFRSへの移行により、のれん代の償却がなくなり、利益を押し上げている面があるのです。
経常利益
本業の利益といわれる営業利益に、株式や預貯金等によって受け取る配当金や利息などの営業外収益を加算し、借入に対する利払いや有価証券の売却損などの営業外費用を差し引いたもので、かつては、企業の収益力を示す重要な指標とされていました。IFRSではそれがなくなり、営業外損益は「その他営業収益」と「その他営業費用」として算入されます。
特別損益
日本の会計基準では、価値が下落した保有不動産や自社工場、店舗など、固定資産で計上する減損損失や売却損失などを特別損失として計上できます。リストラに伴う費用を計上することもできるなど、本業の損益に影響を与えずに損益計上することが可能です。IFRSでこれが使えなくなると、リストラ費用など事業に関連する損失は、営業費用に含まれることとなります。つまり、営業利益に大きな影響を及ぼしてしまうのです。
そして、最大の相違点といえるのが「のれん代」の扱いです。
のれん代
企業がM&A(合併・買収)をした際に支払った金額と買収先の純資産の差額のこと。買収では、ブランド力や技術力など目に見えない企業価値を考慮して、実際の純資産より高い価格で買う場合があります。その差額をのれん代として減損し、損失を計上します。
日本基準ではのれん代を買収後20年以内で毎期償却しなければならないのに対し、IFRSでは毎期償却をせず、毎期評価をして価値が下がれば減損として計上するルールとなっています。従って、IFRSを導入する企業は、ソフトバンクや楽天などM&Aに積極的な姿勢を見せています。IFRSへの移行により、のれん代の償却がなくなり、利益を押し上げている面があるのです。
日本基準 | IFRS | |
---|---|---|
経常損益 | 企業の収益力を示す指標 | 営業外損益は「その他営業収益」と「その他営業費用」として算入 |
特別損益 | 減損損失や売却損失などを特別損失として計上可能 | 事業に関連する損失は営業費用に含む |
のれん代 | 買収後20年以内で毎期償却しなければならない | 毎期償却せず、価値が下がれば減損として計上 |
メリット・デメリット
IFRS導入の大きなメリットは、海外子会社すべての指標が同一となるため、業績の正確な把握と比較が可能になることです。本社において会計情報を一元管理できるので、経営管理もスムーズになります。海外投資家への説明も、日本の会計基準との違いを説明する必要がなくなり、格段に行いやすくなります。
また、先述のM&Aにおけるのれん代も大きなメリットといえます。IFRSは海外に多数の子会社をもつグローバル企業で、積極的にM&Aを仕掛ける企業に最適の会計基準といえます。事実、日本企業でIFRSを導入しているのは、ソフトバンク、楽天、住友商事、丸紅、武田薬品工業、三井物産、三菱商事、伊藤忠商事など、数多のグローバル企業が名を連ねています。
一方、デメリットについては、まず、新たに適用することの困難さがあげられるでしょう。これまでの会計基準と全く異なる基準を採用するため、不慣れゆえの戸惑いや不安は想像に難くありません。また、IFRSへの移行に関するシステム対応や外部コンサルタントの採用など、コスト面での負担も大きくなります。
しかし、国際基準としての存在感が増し、日本でも強制適用の噂が絶えないIFRSは、今後も導入が増えていくことが予想されます。それは、IFRSのメリットを享受できるM&Aに積極的なグローバル企業の増加を意味し、日本企業の国際化という面で好ましい状況といえるでしょう。
また、先述のM&Aにおけるのれん代も大きなメリットといえます。IFRSは海外に多数の子会社をもつグローバル企業で、積極的にM&Aを仕掛ける企業に最適の会計基準といえます。事実、日本企業でIFRSを導入しているのは、ソフトバンク、楽天、住友商事、丸紅、武田薬品工業、三井物産、三菱商事、伊藤忠商事など、数多のグローバル企業が名を連ねています。
一方、デメリットについては、まず、新たに適用することの困難さがあげられるでしょう。これまでの会計基準と全く異なる基準を採用するため、不慣れゆえの戸惑いや不安は想像に難くありません。また、IFRSへの移行に関するシステム対応や外部コンサルタントの採用など、コスト面での負担も大きくなります。
しかし、国際基準としての存在感が増し、日本でも強制適用の噂が絶えないIFRSは、今後も導入が増えていくことが予想されます。それは、IFRSのメリットを享受できるM&Aに積極的なグローバル企業の増加を意味し、日本企業の国際化という面で好ましい状況といえるでしょう。
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