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経理/財務管理会計 2018/09/11

会社の利益を増やす方法とは(新米経理の会計奮闘記 第6回)

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新米経理の会計奮闘記 登場人物
  • 山本理子

    ようやく経理担当になったものの、分からないことだらけ。毎回様々な経理問題に頭を悩ます。曲がったことが大嫌い。

  • 吉田経男

    毎回経理問題を引き起こす営業部員。おっちょこちょいでずる賢い一面もあるが、本当はやさしい男。

  • 会計仙人

    突如現れて、会計問題をわかりやすく解説してくれる謎の仙人。仏陀の会計担当だったらしい。

新米経理の山本理子が社内で巻き起こる様々な経理問題に挑む会計奮闘記。
毎回、突如現れる会計仙人が経理問題を分かりやすく解説してくれるお悩み解決ストーリーの第6回目です。
今回は、会社の利益を増やす方法について、会計仙人のご託宣が炸裂!さて、理子と吉田の反応はいかに?

コスト削減が利益の近道?

「ちょっと、吉田さん。タクシー代使い過ぎ。いい加減にしてください」
例によって理子が営業の吉田経男に食ってかかっている。

「しょうがないでしょ。得意先を効率よく回るにはタクシーが一番なんだから」吉田も応戦である。

「限度ってものがあります」
ピシャリと言い放つ理子。

「近頃の俺の営業成績を知らないのかね、理子ちゃん」と吉田は自慢気である。

「存じております。やたらと売りまくっていると社内でも評判です」

「だったら、エースの俺には特別待遇もありなんじゃない?」

「はあ?エースの吉田さん、では、お聞きしますが、売上が上がっているのは確かでも、それほど利益が出てないのは、なぜなのでしょうか」
と理子は皮肉と疑念交じりの眼差し。

「それはエースの戦略なわけよ。まずは、値引をして多くのお客さんと関係を構築する、フロントエンドってやつですかね・・」

「値引!だから、利益が出ないんじゃないですか」と色めく理子。

「ちょ、ちょっと人の話を最後まで聞きなさいよ。だからエースの」

「戦略だか何だか知らないけど、勝手に値引なんかしないでくださいよ。そんなことより、利益を出すにはまず経費削減!基本です」
理子の勢いは止まらない。

「経費、経費って相変わらずだねえ。大切なのは売上。売上が上がらないと利益も出ない」

「経費削減です」
「商品を売る!」
もはや、二人の間から湯気が噴出しそうな気配である。

と、その時、どこからともなく重厚な太鼓が鳴り響き、鬱蒼とした霧に包まれた仙人が舞い降りてきた。

会計仙人、現わる!


「バッカも〜ん!」いきなり怒号の会計仙人である。

「わしは経理の揉め事を解決するためにこの世につかわされた身。その名を『会計仙人』と申す。かつては、仏陀の会計担当として名を馳せた男よ」

「あら、仙人お久しぶりですね」と軽くあしらう理子。

「もう、驚いてはくれんのかのぉ」少々いじけ気味の会計仙人である。
「まあとにかくじゃ、お前らのレベルの低い争いはもう見ておれん」

「レベルが低いとは、ずいぶんですね」
「そうですよ、あんまりです」
と、不満げな二人。

「では、お二人に尋ねるとする。利益を増やす方法はどんなものがあるかのお」

「経費削減!さっきから言っているじゃない」

「商品を売る!エースの主張を曲げるわけにはいかない」

「固定費の削減、確かに。商品を売る、つまり販売量を増やす。これも当たりじゃ。あと2つあるのじゃが、わかるかな。それは、商品の単価を上げること。もう一つは商品の原価を下げること」
と、会計仙人は二人の顔を交互に見つめる。

利益を増やす4つの方法

  • 固定費を削減する
  • 商品の販売量を増やす
  • 商品の単価を上げる
  • 商品の原価を減らす

「では、実際の例をもとに考えてみよう。
そうじゃな、あるお店があるとする。その店は75円で1万個仕入れたものを毎月単価100円ですべて売り切る。
1個100円×1万個なので売上高は月100万円じゃ。
原価は75万円なので粗利は25万円、固定費は25万円かかるので利益は0円じゃ。
この店で5万円の利益を出すためには、上記の4つのどれを選択するべきなんじゃろうか」

  • 売上高100万円(1個100円×1万個)
  • 原価75万円(1個75円×1万個)
  • 粗利25万円
  • 固定費25万円

売上高100万円−原価75万円
=粗利25万円−固定費25万円
=利益0円


「やっぱ固定費じゃないかしら」と理子

「よろしい。では、固定費を5万円削減して利益を5万円出すことにしよう」

固定費25万円→20万円 20%削減!

「無駄な固定費が多くある会社は別として、固定費削減だけで利益を出そうとすると、20%も削減しないとならん。かなり大変になることがわかるはずじゃ」

「やっぱ、営業の力で販売量を増やす策ですよ、会計仙人」身を乗り出す吉田。

「よろしい。では、販売数量を増やして利益を5万円出すことにしよう」

売上高:1個100円×1万個=100万円
原価:1個75円×1万個=75万円
粗利:売上高100万円−原価75万円=25万円
利益:粗利25万円−固定費25万円=0円
売上高:1個100円×1万2000個=120万円
原価:1個75円×1万2000個=90万円
粗利:売上高120万円−原価90万円=30万円
利益:粗利30万円ー固定費25万円=5万円


販売数量1万個→1万2000個 20%アップ!
「この策は、仕入数も増えるために原価も上がるのじゃ。利益5万円出すために売上高を20万円増やし、2000個も販売量を増やす必要があるわけじゃ。けっこう大変じゃな」

「他の2つはどうなのかしら」理子は神妙な顔つきである。

「単価アップは実にシンプルじゃ。原価もそのままで済むわい」

売上高:1個100円×1万個=100万円
原価:1個75円×1万個=75万円
粗利:売上高100万円−原価75万円=25万円
利益:粗利25万円−固定費25万円=0円
売上高:1個105円×1万個=105万円
原価:1個75円×1万個=75万円
粗利:売上高105万円−原価75万円=30万円
利益:粗利30万円−固定費25万円=5万円

単価100円→105円 5%アップ!
「どうじゃ、たったの5%アップでいいんじゃ」

「原価の削減はこうじゃ」

売上高:1個100円×1万個=100万円
原価:1個75円×1万個=75万円
粗利:売上高100万円−原価75万円=25万円
利益:粗利25万円−固定費25万円=0円
売上高:1個100円×1万個=100万円
原価:1個70円×1万個=70万円
粗利:売上高100万円−原価70万円=30万円
利益:粗利30万円−固定費25万円=5万円

原価75万円→70万円 6.7%削減!
「この方法も6.7%削減するだけでいいんじゃ。比べてみるがいい」

  • 固定費25万円→20万円 20%削減!
  • 販売数量1万個→1万2000個 20%アップ!
  • 単価100円→105円 5%アップ!
  • 原価を75万円→70万円 6.7%削減!

「どうじゃ、利益を増やすには、単価を上げるか原価を下げるのが良策ということがわかるじゃろ」

「むむむむ」と考え込む吉田。

値引は愚策?

「とくに吉田よ、おまえの値引作戦じゃが、安易な安売りは愚策じゃ。先ほどの数式を例えば10%値引したケースで考えてみよ」

売上高:1個100円×1万個=100万円
原価:1個75円×1万個=75万円
粗利:売上高100万円−原価75万円=25万円
利益:粗利25万円−固定費25万円=0円
売上高:1個90円×1万個=90万円
原価:1個75円×1万個=75万円
粗利:売上高90万円−原価75万円=15万円
利益:粗利15万円−固定費25万円=−10万円
「なんと10%値引しただけで、10万円も赤字になってしまうのじゃ」

「Appleが値下げをせず定価で販売しているのも、トヨタがファクトリーオートメーションの改善を徹底するのも、単価と原価の重要性を理解しているからなんじゃよ」

「でも、Appleのような値下げしなくても売れる商品があればいいけど、うちの商品では競合と同じ価格では負けます」と吉田。

「そこじゃよ、だからこそ競合商品と比較して自社の強みと弱みを明確にし、開発やマーケティング部と連携する必要があるのじゃ。どこを強化すべきか、誰に売るべきか、値引の必要のないブランド力をつけるためにはどんな宣伝が必要なのか。それを協議するのじゃよ」

「値引の必要のないブランド力・・」吉田が呟く。

「それからな、理子。各部署の中心となるべきなのは、これからは経理じゃよ。なぜなら、各部署が協議するための数字的資料を作れるのは経理だけじゃ。おまえが中心にならなきゃダメなのじゃよ」

「各部署の中心・・」呆けたようにつぶやく理子である。

あくる日。テキパキと資料づくりに励む理子と吉田の姿がある。
どうやら、マーケティング部と開発部の部長を巻き込んで、自社商品の分析会議を行うらしい。その資料作りに大忙しなのである。
「ちょっと吉田さん、ここまた間違っているじゃない。しっかりして下さい」

「うるさいなあ、それよりB社の市場占有率って、こんなに高いの?」

「そんなことも知らずに何がエースなんですか・・・」

「やっとる、やっとる。あいつらの成長を祝して、今夜はパチョーリと一杯やってくるかな」
雲間でほくそ笑む会計仙人であった。

※パチョーリ:近代会計学の父と言われるルカ・パチョーリ


※例題は「合わせて学ぶ会計&ファイナンス入門」を参考に作成しました。
合わせて学ぶ会計&ファイナンス入門
ダイヤモンド社
著者:田中慎一、保田隆明著

関連リンク(Amazon):合わせて学ぶ会計&ファイナンス入門

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久しぶりの会計仙人のレクチャー、いかがでしたか。利益を上げるための最も効果的な策は、商品単価を上げること。そのためには、自社の商品価値を高めなくてはなりません。競合他社商品との比較分析によって、自社商品の強みと弱み、市場優位性についてしっかり把握する必要があります。そのための数字的な資料を作成するなど、各部署の中心的な役割を担うのがこれからの経理です。まずは、自社の商品・サービスについて分析してみて下さい。
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