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ITDX 2018/03/27

【事例インタビュー】IT化で経理の効率化に成功した空間プロデュース企業

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あらゆる産業分野でIT化の波が押し寄せています。属人的な業務が多数残っている経理部門にとっても、IT化は重要なテーマです。しかしどこから着手したらいいか、どのような段階を経て推進すればよいのかわからない…そんな戸惑いの声も聞こえています。そこで今回は、IT化による経理業務の効率化に成功した企業を取材し、IT化のプロセスとポイントをレポートしました。自社のIT推進の参考にしてみてください。

取材企業プロフィール

店舗・不動産の空間プロデュースから自社運営、イベントプロデュース、飲食・ホテルなどのオペレーション事業、人材紹介など多彩に手がける総合プロデュース企業。2001年の創業から17年でグループ連結子会社22社、店舗100、社員3000人の企業に急成長。その過程で経理業務が煩雑を極め、段階的にIT化を推進している。

会社の急成長とともに経理が煩雑に

非常に多角的な事業を展開されていますがコア事業は何でしょうか。
管理部長 創業者が大手デパートに勤務していた時に始めた小さなカフェが事業のスタートです。以来、店舗のプロデュースや空間コンセプト、店舗の運営、不動産業など、様々な側面から空間創造に関わってきました。最近では、カルチャーエンジニアリングカンパニーと自社を定義づけています。コア事業が空間創造ですが、それを通じて文化やカルチャーを創るという壮大なビジョンを描いています。

急成長を遂げてきたわけですが、経理部門が出来たのはいつ頃でしょうか。
管理部長 私とここにいる経理担当が入社してからです。ちょうど10年になります。当時はスタンドアローンの会計ソフトに専用サーバが一つでした。社員の経費精算はすべて現金。店舗ごとに銀行口座を持ち、それぞれ記帳し日々の売上を会計ソフトに入力していました。直営ショップもまだ5店舗でしたから、それらの業務もまだ余裕でできました。その後、店舗が増えるごとに経理業務が煩雑さを極め、100店舗を超えたあたりで限界がきました。

経理担当 とにかく伝票枚数がすごい量でした。店舗ごとに毎日売上が上がってくるので、それらを入力するだけで大変で。スタンドアローンの会計ソフトではとてもこなし切れない状態になりました。それが6年前のことです。

最初に着手したIT化は、どんなことですか。
経理担当 まず会計ソフトをクラウド化しました。各店舗の売上をそれぞれの店舗で入力してもらい、経理部で一元管理できるようになりました。一気に入力業務が軽減され、IT化の効果を実感できました。

管理部長 次に手をつけたのが受発注管理です。弊社の場合は、八百屋さんから上場企業まで実に多様な取引先がいます。紙の請求書がバラバラに郵送されてきて、これを入力する手間が非常に煩雑でした。各店舗で日々発生する発注書、納品書、請求書を一元化するプラットフォームを活用しました。

経理担当 取引先と常に共有データを持つので仕入れ金額と請求金額が一致し、月次がすぐに締まるなど、スピードアップを図ることができました。社内の経理システムとの連携も可能なので、再入力の必要がなく、入力業務が大幅に削減されました。

お客様と経営層に対する資料作成がメイン業務に

本格的なIT化と言えますね。導入はスムーズにいきましたか。
管理部長 取引先にも同じシステムを利用してもらう必要がありました。賛同いただくために説明会を開催し、お互いにどれだけ業務負担が軽減できるかを明確に訴求しました。多くの取引先にご理解いただけたものの、一部の取引先には賛同を得られず、未だ紙でのやり取りは完全に無くなったわけではありません。

経理担当 経費精算のIT化も大きかったです。これだけ社員数が多いのにその都度伝票を切って現金処理していたら経理は疲弊します。現在は、社員が自分で経費申請を入力して経理が承認するだけ。月2回の銀行振込で精算しています。電子帳簿保存法の改正でスマホによるレシート・領収書の撮影がOKになり、さらに便利になりました。

そうして業務が軽減されていき、経理の役割も変わりましたか。
管理部長 お客様に対応する仕事が増えていますね。お客様に対する報告書類を作成する、いわば営業事務的な業務。それから、資金調達など銀行向けの資料作成も増えています。単純なルーティンワークはテクノロジーに任せ、経理の業務はこれからますます経営層に寄り添うようになるでしょう。

経理担当 経営目線で見ると、IT化は業務の効率化だけでなくコスト面でも大きなメリットがあると思います。例えば、弊社は各店舗のレジのジャーナルを保管していました。財務資料として7年保存しておく必要があり、この回収の手間と保管用の倉庫代の負担もかなりのものです。

様々なITシステムをご活用ですが、今後どのような構想をおもちですか。
管理部長 実はITコンサルタントと契約していて、弊社にマッチしたものを紹介してくれています。現在導入を計画しているのは、MJS(ミロク情報サービス)のGalileopt(ガリレオプト)という中小企業向けERPパッケージです。弊社はグループ連結子会社が22社もあるので、税理士が7人掛かりで行うほど連結決算が大変です。同ソフトは精緻な決算予測と簡易連結決算ができる点に注目しています。

経理担当 このパッケージは、グループ全体の財務情報を統合できる上、銀行のCMS(Cash Management System)との連携もできるとのことで、各店舗のもつ60口座の一元管理が可能になり、大幅な効率化が期待できます。経理として目下のテーマは月次決算を早めること。経営層の意思決定に貢献できるようスピード経理を実現していきたいですね。

本日は、貴重なお話しありがとうございました。
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経理のIT化によって経理業務の効率を大幅に向上させた事例をご紹介しました。取材企業のように、簡単なことから始めて効果を実感することで次のフェーズに向かうのがIT化の大切なポイントです。取引先を巻き込んだ説明会の開催や、会社に合ったシステムを紹介してくれるコンサルタントの起用といったお話も、参考にしてみてはいかがでしょうか。経営層に貢献できる経理を社内全体で育成していくためにも、経理部門のIT化は今後も不可欠なテーマです。
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