どういう経理が消えていくのか。それは、どういう業務がなくなるのかを考えると、自明なことです。
テクノロジーが企業に定着するに従い、多くのルーティンワークが消えていきました。
ITの導入が比較的遅れていた経理部門には、いまだ多くのルーティンワークが残っています。
通帳記帳、売掛金消し込み、請求書発行、小口現金精算、伝票入力作業・・・これらのルーティンワークは、既にERPなどのシステムによって大幅に業務が軽減されています。
こうした単純作業が不要になるということは、単純作業しかできない経理は不要となります。
あたり前ですね。さらに、AI(人工知能)の導入がますます広がり、大きな影響を及ぼすことが予想されます。
例えば、新日本監査法人がAIを使い、不正会計を防ぐ次世代監査システムの開発に乗り出しました。
顧客データから融資の可否をスピーディに判断することも、もうあたり前の時代となります。
ITDX 2017/03/14
フィンテックで消える経理、生き残る経理
Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた新ワードとして近年注目を浴びているフィンテック(FinTech)。
これまでIT化が遅れてた金融業界に次々と新しいテクノロジーが導入され、金融サービスを根底から変えるようなサービスが生まれています。
当然、フィンテックの浸透によって求められる人材も変わっていくことが予想されます。果たして、どのような経理が必要とされ、どのような経理が消えていくのでしょうか。
最新の動向を踏まえた考察とともに簡単診断チェックも用意しました。
ルーティンワークが消える
AIが担う業務の領域は?
日本経済新聞誌上によると、この次世代監査システムに活用されるAIは、2つの方法で不正会計をあぶり出すようです。
まず、企業の帳簿データを解析し、通常より大幅に高い単価での取引など不正の兆候を見つける。
もう一つは、財務諸表の解析。過去に不正があった企業の例に照らし類似する特徴がないかを洗い出します。
時間と手間のかかるチェック機能をAIが担うわけです。
こうした例に代表されるように、テクノロジーが担う業務領域は、ルーティンワークやチェック機能などが多くみられるのが現状です。
もちろん、AIのディープラーニングは様々な因果を学習し、このチェック機能は柔軟に可変していくことが推測されます。
さらに、テクノロジーの進化は常に人間の想像を超えており、今後はその担う領域が大きく広がっていくことも考慮しなければならないでしょう。
いずれにせよ、ルーティンワークやチェック作業がテクノロジーに代替されることは明らかであり、それらの業務の価値は相対的に下がっていくことでしょう。
生き残れる経理とは?
その前に経理の業務についてふり返ってみます。経理の業務は大きく分けて財務会計と管理会計に分けられます。
財務会計とは、会社の事業によって生まれた結果を事実のままに仕訳してBS・PL・キャッシュフローなどの財務諸表を通じて外部に開示します。
一方、管理会計は主に経営者や事業責任者の意思決定のために、会社の現況や将来予測を会計データとして精緻に分析する領域です。
これからの経理は、管理会計の領域を担っていく必要があります。
より戦略的な領域で経営層の意思決定に重要な指針となる会計情報を提供できる経理です。
だからといって財務会計を軽視するものではありません。会社の現状を具体的な数値として提示する決算業務などは、会社の様々な問題を発見する貴重な情報源です。
大切なのは、それらの情報源から、経営戦略に直結する貴重な提言に「翻訳」できるかということ。
そのためには、これまでの経理業務を超えた多様なスキルが求められるのです。
具体的には、論理的思考や経営戦略、コミュニケーションスキルなど、その領域は今後も大きく広がっていきます。
そうした資質を保持しているかどうか、簡単な診断チェックシートを作成しました。ぜひ、チェックしてみてください。
【消える経理、生き残れる経理、簡単診断チェック】
□見知らぬ人に会って話したり、交渉したりするのが苦ではない
□経営数値や経営指標に異常なものがあれば、自ら社長に報告する
□気軽に相談できる公認会計士、税理士、弁護士がそれぞれいる
□自社の経営課題についてある程度把握している
□自社商品・サービスのセールスポイントや競合と比較した強みを理解している
□自社の中長期経営計画書を進んで作成したことがある
□社内の各部署にそれぞれ相談できる社員が最低一人はいる
□営業や生産管理など、他部署の問題点をヒアリングするのが苦手ではない
□経営戦略や事業家の思考について興味をもっている
□CFO(最高財務責任者)を目指している
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いかがでしょうか。上記チェック項目に7つ以上の該当項目がある方は、将来的にかなり有望だと思われます。
逆に3つ以下の方は、これまでの業務に何らかの付加価値をつけていくことを考えるべきです。
経営者の頼れる参謀となるために、時代の変革期こそ、大きなチャンスだと心得ましょう。
逆に3つ以下の方は、これまでの業務に何らかの付加価値をつけていくことを考えるべきです。
経営者の頼れる参謀となるために、時代の変革期こそ、大きなチャンスだと心得ましょう。