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業務全般制度改正 2026/02/10

労働基準法改正2026、法案見送りでも備えは必須!企業実務に影響する主要ポイントを整理

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2026年の施行を目指して改正が検討されていた労働基準法について、2025年12月に法案提出を見送る方針が固められました。
実現すれば1987年以来、約40年ぶりとなる大幅な改正と見込まれていただけに、その内容は現在も高い関心を集めています。
今回は法案提出が見送られたものの、改正自体が中止されたわけではないため、企業の担当者は、早い段階から改正内容を把握しておくことが求められます。
本記事では、労働基準法改正が検討されてきた背景を整理したうえで、予定されている主な改正ポイントと、企業が今から準備しておくべき対応について解説します。

2026年の労働基準法改正について

政府は、報告書において検討されてきた事項を踏まえ、労働基準法改正案を取りまとめ、2026年の通常国会への法案提出を検討していました。
しかし、2025年12月に法案提出を見送る方針が固められています。
もっとも、今回の見送りは改正の中止を意味するものではなく、今後の状況次第では、近い将来に法改正が実現する可能性も高いと見込まれます。
このため、検討されている改正内容については、企業担当者があらかじめ把握しておくことが重要です。


2026年の労働基準法改正の経緯
1987年に行われた前回の労働基準法改正では、法定労働時間が週40時間へ短縮されるとともに、変形労働時間制やフレックスタイム制が導入されました。
それ以降、大きな制度改正が行われてこなかった労働基準法について、近年改正が議論されるようになった背景には、働き方を取り巻く環境の急速な変化があります。
現行の労働基準法は、企業に雇用される正社員を前提とした制度設計となっており、テレワークの普及や副業・兼業の解禁、フリーランスの増加など、多様化する働き方に十分対応できていないとの課題が指摘されてきました。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2024年1月に「労働基準関係法制研究会」を設置し、2025年1月には改正案の骨子を示す報告書として「労働基準関係法制研究会報告書」を公表しています。

※参考資料:厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書


法案提出見送りの経緯
法案提出が見送られた背景には、複数の要因があります。
具体的には、当時の政権において、心身の健康維持と従業員の選択を前提とした労働時間規制の在り方について、緩和も含めた検討を指示したことが挙げられます。
また、日本成長戦略会議の分科会においても、労働市場改革が新たに議論の対象となったことから、労働基準法改正の方向性について、より幅広い観点からの検討が必要となりました。
さらに、規制強化を求める労働者側と、柔軟化を求める経営者側との間で意見の隔たりが大きく、双方が納得できる形で制度を見直すには、なお時間を要すると判断されたことも、法案提出見送りの一因とされています。
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改正が検討されている主要な論点

ここからは、「労働基準関係法制研究会報告書」に示された内容を踏まえ、現在検討されている労働基準法改正の主なポイントについて解説します。


連続勤務日数の上限規制
現行の労働基準法では、使用者は労働者に対し、原則として毎週少なくとも1回の休日を付与することとされています。
もっとも、変形休日制を採用した場合には、4週を通じて4日以上の休日を与えれば足りるとされており、その結果、制度上は最長48日間の連続勤務が可能となっています。
改正案では、こうした長期の連続勤務を見直し、13日を超える連続勤務を禁止することとするとともに、変形休日制についても「2週2日」を最低限の基準とすることが提言されています。
このため、シフト制や変形労働時間制を採用している小売業、医療・介護業、宿泊業などでは、今後、シフト設計や労務管理体制の見直しが必要となる可能性があります。


勤務間インターバル制度の義務化
終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間の休息を確保する「勤務間インターバル制度」は、労働時間等設定改善法に基づき、2019年から努力義務として導入されています。
しかし、現時点では導入している企業は限定的にとどまっているのが実情です。 改正案では、勤務間インターバルの確保を労働基準法上の義務として位置づけ、原則として11時間の休息時間を確保することが提言されています。
この11時間という基準は、EU労働時間指令をはじめとする諸外国の制度を参考に設定されたものです。
例えば、残業により24時まで勤務した場合、翌日の始業時刻は11時以降とする必要があります。
ただし、特定の業種・職種については例外規定が設けられる予定であり、制度は段階的に実施される見込みです。
そのため、深夜勤務や交代制勤務を行っている企業では、シフト設計の見直しや、勤怠管理システムの対応が求められることになります。

※参考資料:厚生労働省「労働条件分科会(第193回)参考資料


法定休日の特定義務化
現行の労働基準法では、どの曜日を法定休日とするかについて、あらかじめ特定する義務は設けられていません。
多くの企業が週休2日制を採用している一方で、法定休日と法定外休日(所定休日)の区別が曖昧なまま運用されているケースも見受けられます。
法定休日と法定外休日では、休日労働に対する割増賃金率が異なるため、法定休日が明確に特定されていない場合、休日出勤時の割増賃金の算定をめぐってトラブルが生じるおそれがあります。
こうした問題を踏まえ、改正案では、就業規則などにおいて法定休日を事前に特定することを義務化する方向性が提言されています。
もっとも、シフト勤務や変形労働時間制を採用する事業所では、勤務パターンごとに休日を一律に特定することが難しいという実態もあります。
このため、改正案では、現場の運用実態に配慮しつつ、一定の柔軟性を確保したうえで法定休日を明示するための指針を整備する必要があるとされています。


つながらない権利の明確化
勤務時間外や休日における業務連絡への対応について、日本では現時点で明確な法規制は設けられていません。
一方、欧州諸国では、勤務時間外の業務連絡を制限するルールが法制度として整備されており、労働者の私生活や休息時間を保護する仕組みが導入されています。
こうした海外の動向も踏まえ、改正案では、勤務時間外や休日の業務連絡に応じなかったことを理由に不利益な取り扱いを受けない「つながらない権利」の明確化が検討されています。
もっとも、現段階では一律の禁止規制を設けるのではなく、勤務時間外に許容される連絡の範囲や、拒否できる連絡の内容について、労使での協議を前提とした社内ルールの整備を促す方向性が示されており、そのためのガイドライン策定が提言されています。
このため、企業としては、就業規則や社内規程に加え、メールやチャットツールの運用ルールについても見直しを検討することが求められます。


副業・兼業時の割増賃金に関するルール見直し
現行の労働基準法では、副業・兼業を行う労働者については、本業先と副業先の労働時間を通算したうえで、割増賃金を算定する必要があります。
この仕組みは、企業側にとって管理負担が大きく、副業・兼業を許可・受け入れる際の障壁となっているとの指摘があります。
改正案では、こうした課題を踏まえ、諸外国の制度も参考にしながら、割増賃金の算定における労働時間の通算を廃止する方向での制度見直しが提言されています。
一方で、労働者の健康確保を目的とした労働時間の把握・管理については、引き続き労働時間を通算すべきとされています。
つまり、割増賃金の計算においては通算を行わないものの、長時間労働による健康被害を防ぐための労働時間管理は今後も必要となるという整理です。


年次有給休暇取得時の賃金算定方式の見直し
年次有給休暇を取得した日の賃金については、現行制度上、次のいずれかの方法により算定することが認められています。

  • 平均賃金
  • 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  • 健康保険法上の標準報酬日額の30分の1に相当する金額
しかし、平均賃金方式や標準報酬日額方式を採用している場合、日給制や時給制で働く労働者については、実際の労働日に比べて支給額が低くなるケースがあり、年次有給休暇の取得をためらう一因となっているとの指摘があります。
こうした課題を踏まえ、改正案では、2の「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」を算定の基礎とすることを原則とする方向性が提言されています。
この改正が実現した場合、パートタイム労働者やアルバイトの年次有給休暇取得時の賃金水準が変化する可能性があり、企業においては、給与計算システムの対応や人件費への影響について、検討しておくことが求められます。
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企業が今から準備すべきこと

今回の法案提出見送りは、準備期間がやや延びたと捉えるのが現実的です。
改正に向けた議論自体は継続しており、2027年以降に法改正が実現する可能性は十分にあります。
制度改正は、水面下で検討が進んだうえで、決定後に一気に動く傾向があるため、検討されてきた内容が、より厳格な形で再び示される可能性も否定できません。
そのため、企業としては、今の段階から改正内容を整理し、必要な対応の検討を進めておくことが重要です。


労務管理の徹底
勤怠状況の管理
まずは現状の勤怠管理の実態を把握しておくことが重要です。
改正後に法令違反とならないよう、早い段階から、次のような点について確認しておきましょう。

  • 労働時間や勤務状況
  • 連続勤務日数
  • 終業から始業までの間隔(勤務間インターバル)
特に、連続勤務が常態化していないか、深夜残業の翌日に早朝勤務が行われていないかといった点は、従業員の健康確保の観点からも重要であり、法改正を待たずにチェックできる体制を整備しておく必要があります。

就業規則の確認
続いて就業規則についても確認しておきましょう。
特に以下は必ず確認しておきたいポイントです。

  • 法定休日が明確に定義されているか
  • 休日出勤時の割増賃金が適切に算定される内容となっているか
これらを就業規則に明示しておくことは、現行法の下でも、トラブル防止の観点から重要です。
あわせて、現行の就業規則が将来の改正に柔軟に対応できる内容になっているかも確認しておきましょう。
グループ会社や営業所が複数ある場合は、各事業場の実情を把握したうえで、ルールの統一に向けた検討も必要となります。


勤怠・給与システムの対応状況の確認
先述した改正内容の多くが実現した場合、現行の勤怠管理システムでは対応が難しいケースが生じる可能性があります。
例えば、勤務間インターバルや連続勤務日数の管理については、新たな機能追加や運用変更が求められることになります。
また、給与計算システムについても、年次有給休暇の賃金算定方法や割増賃金の計算方法の見直しに対応できるかを確認する必要があります。

このため、現在利用している勤怠・給与管理システムが、将来の法改正に対応可能かどうかを、あらかじめ確認しておくことが重要です。
可能であれば、システムベンダーと事前に打ち合わせを行い、現状の対応可否や今後の対応方針について整理しておくことが望まれます。
特に、現時点でシステムが未導入、または老朽化している場合には、法改正への自動対応や期限内のアップデートが可能なクラウド型システムへの切り替えも、有効な選択肢の一つといえるでしょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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本記事では、2026年の労働基準法改正が見送られた背景と、これまでに検討されてきた主な改正ポイントについて解説しました。
国会への法案提出は見送られたものの、改正に向けた議論は引き続き行われています。
今回の見送りは、企業にとって一定の準備期間が確保されたと捉えることもできるため、制度施行後に慌てて対応するのではなく、今のうちから勤怠管理、就業規則、給与計算の実態やシステムの対応状況を点検しておくことが、将来のリスク軽減につながります。

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