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経理/財務公認会計士の仕事術 2026/02/12

第68回 比較分析のいろいろ(8) ~B/Sの月次推移分析(その5)

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前回に引き続き「比較分析」をテーマに「B/Sの月次推移分析」についてお送りいたします。本テーマは全8回に記事を分けており、今回は第5回目となります。

1.はじめに

経理部では、B/SやP/Lの比較分析を行い、経営者などに著増減理由の説明を行う場面も少なくありません。年度決算時の比較分析が重要なことは言うまでもありませんが、年度決算に向けて期中の段階で比較分析を実施することも大事です。 本稿では現在、B/Sの月次推移分析にあたっての着眼点について、科目ごとに説明を進めていますが、今回は「その他流動資産」・「その他流動負債」などといった「その他勘定」を取り上げることにします。

2.ケースで考えるB/Sの月次推移分析(その5)

まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース8】をご覧ください。

【ケース8】
C社では年度決算作業の真っ最中ですが、経理スタッフたちには混乱が生じているようです。

「“その他流動資産”の内訳はどうなってるんだ。中身がよく分からないぞ…。仕訳帳をひっくり返して調べなきゃまずい!」

「なんてことだ。こんなものが“その他流動資産”の中に入っていたんだ…。これは○○や●●の科目で計上すべきじゃないか! 早く決算仕訳で振り替えろ!」

「……」


はたして所定の期日までに決算作業は終了するのか、心配な状況です。
【ケース8】には、年度決算作業の段階でいろいろな問題が発覚して、経理スタッフたちが混乱している様子が描かれています。ここで挙がっているような問題について、年度決算を迎えてから対応するのではなく、期中のもっと早い段階から対応するためにも、是非B/Sの月次推移分析を実施したいところです。

以下では、B/Sの月次推移分析について、主要な勘定ごとに着眼点を考えてみようと思います。


着眼点6 「その他勘定」(その他流動資産、その他流動負債など)
B/Sの流動資産に並ぶ数々の勘定科目の中で注目されるのは「現金及び預金」、「売掛金」、「商品」などといった主要科目です。その一方で、流動資産の一番下にひっそりと存在しているのが「その他流動資産」です。「投資その他の資産」の一番下には「その他投資等」などといった勘定科目があり、同様に「その他流動負債」、「その他固定負債」などもそれぞれの区分の一番下に存在しています。

こうした「その他勘定」はどんなときに使われるでしょうか。真っ先に考えられるのは、独立した科目を使うほどの重要性がない場合でしょう。こまごましたものをすべて区分掲記していたら処理が面倒ですし、B/Sを見たときに勘定科目が多くなり過ぎて分かりにくくなるといったことも考えられます。そのため、重要性が高くないものは「その他勘定」に集約してしまうといったことが行われます。また、どの科目に計上するのが正しいのかすぐに分からないので、取りあえず「その他」の科目で処理している場合もあるかもしれません。

このように、「その他勘定」があることで、処理がスムーズになったり、B/Sの見た目がスッキリしたりするので、目立たない勘定科目ではありますが、大事な存在とも言えるでしょう。

では、「その他勘定」について経理部門の管理者等がチェックする場合、どのような観点が必要になるでしょうか。ポイントは次の2つです。
  1. 「その他勘定」の残高に重要性があるか
  2. 「その他勘定」の中身が分かるか
以下、それぞれについて考えてみましょう。


(1)「その他勘定」の残高に重要性があるか
仮に、その他流動資産残高の月次推移が【図表1】のとおりであったとしましょう。

【図表1】その他流動資産残高の月次推移分析(残高に重要性がない場合)

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
その他流動資産 20,000 23,000 24,000 40,000 XXX
(参考)資産総額 1,200,000 1,300,000 1,400,000 1,350,000 XXX

その他流動資産残高の月次推移を見ると、6月に著しい増加が見られます。ただし、資産総額と比較したときに、残高自体の重要性がそれ程高くないと判断できる場合もあります。判断の基準は企業によって異なるでしょうが、もし資産総額の10%以上だと金額的重要性が高いと考えるとすれば、6月は著しい増加はあるものの、残高自体の重要性は高くないので、月次段階で必要以上に詳細にチェックすることはしないといった対応ができるかもしれません。

次に、その他流動資産残高の月次推移が【図表2】のとおりであったとしましょう。

【図表2】その他流動資産残高の月次推移分析(残高に重要性がある場合)

(単位:千円)
科目 前期末残高 4月 5月 6月 (以降省略)
その他流動資産 20,000 23,000 24,000 150,000 XXX
(参考)資産総額 1,200,000 1,300,000 1,400,000 1,350,000 XXX

その他流動資産残高の月次推移を見ると、6月に著しい増加が見られます。その他流動資産の残高を資産総額と比較したときに、6月は資産総額の10%以上であり、金額的重要性も高いと言えそうです。だとすると、月次段階で十分にチェックしておく必要がある部分だと言えます。

「その他勘定」は本来であれば区分掲記する程の重要性がないものをまとめて計上する勘定のはずです。だからこそ、最も気を付けなければならないのは残高の増大で、仮に残高の重要性が高い場合には注意が必要です。そのため、その他流動資産やその他流動負債などの残高の月次推移を見る際は、資産総額(負債・純資産総額)に対してどの位の割合になっているかの視点を持っておくと良いでしょう。上述したように、単純に当該割合が10%以上になっていないかという観点でチェックしてみるだけでも、重要性が高まったときにそれを見落とさずに済みます。

(2)「その他勘定」の中身が分かるか
上記(1)の観点で見て残高の重要性が高い場合で残高が大きく増加した場合には、増加理由をタイムリーにつかんでおく必要があります。その内訳は何か(特に重要な残高を構成している項目は何か)を、仕訳段階で整理しておきましょう。雑多なものを何でも「その他勘定」で処理してしまうと、内訳が見えなくなってしまい、決算の段階であわてて内訳の調査・整理をすることになりかねません。

また、期中の段階ではその場しのぎで取りあえず「その他」の科目で処理しておいて、年度決算の段階で中身を整理しようという場合もあるでしょう。こうした場合には、本連載「第66回 比較分析のいろいろ(6)」の「着眼点4 仮払金、立替金、前払金など」として取り上げたように、年度決算段階まで処理を放っておくのではなく、月次段階でタイムリーに適切な処理をしておくようにしましょう。

なお、金額が大きいものや同種のものが多数含まれる場合、独立した勘定科目にして管理する必要はないか、不明なものが含まれていないかといったことも意識しながら、中身をチェックしましょう。

「その他勘定」というのは中身が見えにくい分、不正や誤りを隠すための隠れ蓑になることもありますので、注意が必要です。

その他勘定の月次推移を分析したり、その他勘定の内訳を事前につかんでおいたりすることは面倒に思われるかもしれませんが、これが年度決算の効率化にもつながるはずです。

3.おわりに

本稿では現在、期中の段階で行われるB/Sの月次推移分析について、主要な科目ごとに着眼点を説明していますが、このうち今回は「その他勘定」を取り上げました。

「その他勘定」の月次推移を見る際は、「(1)「その他勘定」の残高に重要性があるか」をまずチェックし、重要性が高い場合には「(2)「その他勘定」の中身が分かるか」をチェックすると良いでしょう。「現金及び預金」、「売掛金」、「商品」などといった主要科目と比べると、月次段階で「その他勘定」を細かくチェックする必要性は低いですが、残高の重要性が高い場合には、月次段階でしっかり中身をつかんでおくようにしましょう。

次回、引き続き他の科目に関する説明もしていきますので、そちらも併せてお読み頂き、実務上の参考にして頂ければ幸いです。


(提供:税経システム研究所)
**********

いかがでしたでしょうか。「比較分析」における「B/Sの月次推移分析」についてのご説明、第5回目でした。
次回「第69回 比較分析のいろいろ(9) ~B/Sの月次推移分析(その6)」でまた続きをご紹介させていただきます。お楽しみに!
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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