2.ケースで考えるB/Sの月次推移分析(その5)
まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース8】をご覧ください。【ケース8】
C社では年度決算作業の真っ最中ですが、経理スタッフたちには混乱が生じているようです。
「“その他流動資産”の内訳はどうなってるんだ。中身がよく分からないぞ…。仕訳帳をひっくり返して調べなきゃまずい!」
「なんてことだ。こんなものが“その他流動資産”の中に入っていたんだ…。これは○○や●●の科目で計上すべきじゃないか! 早く決算仕訳で振り替えろ!」
「……」
はたして所定の期日までに決算作業は終了するのか、心配な状況です。
以下では、B/Sの月次推移分析について、主要な勘定ごとに着眼点を考えてみようと思います。
着眼点6 「その他勘定」(その他流動資産、その他流動負債など)
B/Sの流動資産に並ぶ数々の勘定科目の中で注目されるのは「現金及び預金」、「売掛金」、「商品」などといった主要科目です。その一方で、流動資産の一番下にひっそりと存在しているのが「その他流動資産」です。「投資その他の資産」の一番下には「その他投資等」などといった勘定科目があり、同様に「その他流動負債」、「その他固定負債」などもそれぞれの区分の一番下に存在しています。こうした「その他勘定」はどんなときに使われるでしょうか。真っ先に考えられるのは、独立した科目を使うほどの重要性がない場合でしょう。こまごましたものをすべて区分掲記していたら処理が面倒ですし、B/Sを見たときに勘定科目が多くなり過ぎて分かりにくくなるといったことも考えられます。そのため、重要性が高くないものは「その他勘定」に集約してしまうといったことが行われます。また、どの科目に計上するのが正しいのかすぐに分からないので、取りあえず「その他」の科目で処理している場合もあるかもしれません。
このように、「その他勘定」があることで、処理がスムーズになったり、B/Sの見た目がスッキリしたりするので、目立たない勘定科目ではありますが、大事な存在とも言えるでしょう。
では、「その他勘定」について経理部門の管理者等がチェックする場合、どのような観点が必要になるでしょうか。ポイントは次の2つです。
- 「その他勘定」の残高に重要性があるか
- 「その他勘定」の中身が分かるか
(1)「その他勘定」の残高に重要性があるか
仮に、その他流動資産残高の月次推移が【図表1】のとおりであったとしましょう。
【図表1】その他流動資産残高の月次推移分析(残高に重要性がない場合)
| 科目 | 前期末残高 | 4月 | 5月 | 6月 | (以降省略) |
| その他流動資産 | 20,000 | 23,000 | 24,000 | 40,000 | XXX |
| (参考)資産総額 | 1,200,000 | 1,300,000 | 1,400,000 | 1,350,000 | XXX |
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次に、その他流動資産残高の月次推移が【図表2】のとおりであったとしましょう。
【図表2】その他流動資産残高の月次推移分析(残高に重要性がある場合)
| 科目 | 前期末残高 | 4月 | 5月 | 6月 | (以降省略) |
| その他流動資産 | 20,000 | 23,000 | 24,000 | 150,000 | XXX |
| (参考)資産総額 | 1,200,000 | 1,300,000 | 1,400,000 | 1,350,000 | XXX |
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「その他勘定」は本来であれば区分掲記する程の重要性がないものをまとめて計上する勘定のはずです。だからこそ、最も気を付けなければならないのは残高の増大で、仮に残高の重要性が高い場合には注意が必要です。そのため、その他流動資産やその他流動負債などの残高の月次推移を見る際は、資産総額(負債・純資産総額)に対してどの位の割合になっているかの視点を持っておくと良いでしょう。上述したように、単純に当該割合が10%以上になっていないかという観点でチェックしてみるだけでも、重要性が高まったときにそれを見落とさずに済みます。
(2)「その他勘定」の中身が分かるか
上記(1)の観点で見て残高の重要性が高い場合で残高が大きく増加した場合には、増加理由をタイムリーにつかんでおく必要があります。その内訳は何か(特に重要な残高を構成している項目は何か)を、仕訳段階で整理しておきましょう。雑多なものを何でも「その他勘定」で処理してしまうと、内訳が見えなくなってしまい、決算の段階であわてて内訳の調査・整理をすることになりかねません。
また、期中の段階ではその場しのぎで取りあえず「その他」の科目で処理しておいて、年度決算の段階で中身を整理しようという場合もあるでしょう。こうした場合には、本連載「第66回 比較分析のいろいろ(6)」の「着眼点4 仮払金、立替金、前払金など」として取り上げたように、年度決算段階まで処理を放っておくのではなく、月次段階でタイムリーに適切な処理をしておくようにしましょう。
なお、金額が大きいものや同種のものが多数含まれる場合、独立した勘定科目にして管理する必要はないか、不明なものが含まれていないかといったことも意識しながら、中身をチェックしましょう。
「その他勘定」というのは中身が見えにくい分、不正や誤りを隠すための隠れ蓑になることもありますので、注意が必要です。
その他勘定の月次推移を分析したり、その他勘定の内訳を事前につかんでおいたりすることは面倒に思われるかもしれませんが、これが年度決算の効率化にもつながるはずです。
3.おわりに
本稿では現在、期中の段階で行われるB/Sの月次推移分析について、主要な科目ごとに着眼点を説明していますが、このうち今回は「その他勘定」を取り上げました。「その他勘定」の月次推移を見る際は、「(1)「その他勘定」の残高に重要性があるか」をまずチェックし、重要性が高い場合には「(2)「その他勘定」の中身が分かるか」をチェックすると良いでしょう。「現金及び預金」、「売掛金」、「商品」などといった主要科目と比べると、月次段階で「その他勘定」を細かくチェックする必要性は低いですが、残高の重要性が高い場合には、月次段階でしっかり中身をつかんでおくようにしましょう。
次回、引き続き他の科目に関する説明もしていきますので、そちらも併せてお読み頂き、実務上の参考にして頂ければ幸いです。























