決算整理仕訳とは、期中に記録した取引内容を決算日時点の実態に合わせて調整し、正確な財務諸表を作成するために行う仕訳のことです。
期中の会計処理では日々の取引を都度記録していますが、すべての取引について発生時点と期間対応を完全に反映できているとは限りません。
そこで決算時には、会計の基本原則である「発生主義」に基づき、費用や収益が正しい期間に計上されるよう調整を行います。
例えば、3月決算の会社が翌年4月分までの家賃1年分を前払いしている場合、当期の費用として計上できるのは3月分までに対応する金額に限られます。
4月以降に対応する家賃については「前払費用」として資産計上し、翌期に費用として処理します。
※家賃などの前払費用については、法人税法上、支払時に損金算入が認められる場合がありますが、ここでは決算整理仕訳の考え方を理解するため、会計上の原則的な処理として説明しています。
※関連記事:経理担当の責任重大!決算整理仕訳の基礎知識
決算整理仕訳の流れ
決算整理は、期中取引の残高を確定させることから始まり、各勘定科目の精査を経て修正仕訳を計上していきます。
一般的な流れは以下の通りです。
【STEP1】残高の確定と現金実査
- 決算整理前残高試算表を作成し、期中取引の残高を確定させる
- 現金・預金などの実際残高と帳簿残高を照合し、差異があれば修正する
【STEP2】売上・仕入の確認
- 売上・仕入の計上漏れや期間ズレがないかを確認する
- 棚卸資産の実地棚卸を行い、売上原価を算定する
【STEP3】資産・負債の評価と見積り
- 固定資産について減価償却費を計上する
- 売掛金などの債権に対し、回収不能リスクを見積り貸倒引当金を設定する
- 費用の前払いや未払いなど、経過勘定項目を計上する
- 有価証券の時価評価、仮払金・仮受金の精査と適切な科目への振替を行う
【STEP4】決算整理後残高試算表の完成
- すべての決算整理仕訳を反映し、決算整理後残高試算表を作成する
【STEP5】勘定の締め切りと財務諸表の作成
- 決算整理後残高試算表をもとに、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成する
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ここからは、前章のSTEP2やSTEP3で実施する代表的な決算整理仕訳を5つ紹介します。
売上原価
売上原価は以下の算式で計算します。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
この計算に基づく仕訳により当期に販売された商品の原価が確定し、正確な粗利(売上総利益)を算出できるようになります。
例えば、期首商品棚卸高が100,000円、当期商品仕入高が500,000円、期末商品棚卸高が150,000円の場合、売上原価は以下のように計算できます。
100,000円 + 500,000円 - 150,000円 = 450,000円
この場合の決算整理仕訳は以下の通りです。
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 仕入高 |
100,000 |
繰越商品 |
100,000 |
| 繰越商品 |
150,000 |
仕入高 |
150,000 |
減価償却費
減価償却とは、建物や車両、機械設備などの固定資産について、取得価額を一度に費用計上せず、使用期間にわたって少しずつ費用化する会計上の仕組みです。
費用計上が認められる期間は「耐用年数」と呼ばれ、資産の種類ごとに税法で定められています(普通自動車6年・パソコン4年・事務机15年など)。
償却額の計算方法には、毎期一定額を計上する「定額法」と、帳簿価額に一定の償却率を乗じて計算する「定率法」があります。
同様に、仕訳方法も、固定資産から直接差し引く「直接法」と、減価償却累計額を使う「間接法」の2種類があります。
例えば、取得価額600,000円・耐用年数5年の備品を定額法で償却する場合、1年分の減価償却費は以下のようになります。
600,000円 ÷ 5年 = 120,000円
この場合の決算整理仕訳は以下の通りです。
直接法
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 減価償却費 |
120,000 |
備品 |
120,000 |
間接法
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 減価償却費 |
120,000 |
減価償却累計額 |
120,000 |
※参考資料:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
貸倒引当金
貸倒引当金とは、売掛金や受取手形、貸付金などの債権について、将来回収できなくなるリスクに備えて、あらかじめ費用として計上しておくものです。
計上額の算出には、債権全体に一定の割合を乗じる「一括評価」と、回収懸念のある債権ごとに個別に見積もる「個別評価」があります。
例えば、期末時点の売掛金残高が8,000,000円あり、過去の実績に基づき2%を貸倒引当金として設定する場合、引当額は以下の通りです。
8,000,000円 × 2% = 160,000円
この場合の決算整理仕訳は以下の通りです。
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 貸倒引当金繰入額 |
160,000 |
貸倒引当金 |
160,000 |
この仕訳により、160,000円が当期の費用に計上されると同時に、貸借対照表上で売掛金の評価額が実質的に減額されます。
前払費用
前払費用とは、当期中に代金の支払いは完了しているものの、サービスを受けるのが翌期以降になる費用です。
家賃・保険料・リース料など、継続的なサービス契約などで主に発生します。
例えば、3月決算の会社が10月1日に火災保険料1年分240,000円を支払った場合、当期に対応するのは10月から3月までの6カ月分(120,000円)のみです。
4月以降の6カ月分(120,000円)は前払費用として資産に振り替えます。
支払時(10月1日)
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 保険料 |
240,000 |
現金 |
240,000 |
決算時(3月31日)
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 前払費用 |
120,000 |
保険料 |
120,000 |
未払費用
未払費用とは、当期中に既にサービスの提供を受けているにもかかわらず、支払期日が到来していないため代金の支払いが済んでいない費用です。
給与や水道光熱費、借入金の利息など、後払いで精算するものが該当します。
例えば、従業員の給与が20日締め翌月25日払いの会社で3月決算を迎えるケースを考えます。
3月21日~3月31日までの11日間分の給与は、既に労働の提供を受けていますが、支払いは4月25日です。
この期間に対応する給与が180,000円の場合、決算において未払費用として計上します。
| 借方 |
金額 |
貸方 |
金額 |
| 給料 |
180,000 |
未払費用 |
180,000 |
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MJSの財務・会計システムなら、仕訳入力とチェックをAIで自動化!他システムともシームレスに連携することでリアルタイムな経営判断が可能に。幅広い業種・業務や環境変化にも柔軟に対応します。
仕訳の計上漏れや勘定科目の誤りは、誤った経営判断にまでつながるリスクがあります。
回避するためには、「前期比較」、「実査のタイミング」、「発生主義の徹底」の3つを意識して、決算の精度を高めることが重要です。
前期比較を行い数値の異常値を検知する
前期の決算書と今期の数値を比較し、大きく変動している項目がないか確認します。
例えば、売上が横ばいにもかかわらず特定の費用だけが急増している場合、計上ミスや勘定科目の誤りが潜んでいる可能性があります。
各勘定科目の前期比増減率を算出し、10~20%以上の変動があった項目をピックアップして精査する方法が効果的です。
また、金額の増減だけでなく、売上総利益率や販管費率といった主要な財務比率も前期と比較することで、数値の整合性を多角的にチェックできます。
異常値を検知した際は、該当する取引の証憑書類に立ち返り、仕訳の内容が正しいか一つひとつ確認していきましょう。
現金・預金の実査は必ず決算日当日に行う
現金・預金は日々残高が変動するため、決算日当日に実査を行うのが原則です。
別の日に実査を行うと、その間の入出金を加減算して決算日残高を推定する必要があり、計算ミスのリスクが高まります。
現金は、決算日の営業終了後に金種別の実査表を作成し、帳簿残高と突合します。
差異があれば当日中に原因を調査し、必要に応じて現金過不足として処理しましょう。
預金は、金融機関から決算日時点の残高証明書を取得して帳簿と照合します。
未取付小切手や振込の時間差による未達取引がある場合は、銀行勘定調整表を作成して差異の内容を明確にしておきましょう。
収益・費用を正確に計上する
決算書の正確性を確保するためには、発生主義の原則に従って収益と費用を適切な期間に計上することが不可欠です。
特に決算日を跨ぐ取引には注意しましょう。
3月決算の会社でよくあるミスとして、以下のようなものがあります。
- 3月分の給与、水道光熱費・通信費・保守費用などの未払計上漏れ
- 保険料・家賃など、4月以降分を含めて支払った費用の前払処理漏れ
- 3月中に納品済みの売上について、請求が4月になり未収計上を忘れる
これらの期ズレは税務上にも影響を及ぼします。
特に未払費用の計上については、決算日時点で債務が確定しているかどうかによって法人税法上の損金算入の可否が判断されるので、期末時点の状況を必ず確認する必要があります。
| 債務確定の状況 |
損金算入の可否 |
別表調整の必要性 |
| 債務が確定している場合 |
損金算入可能 |
別表調整なし |
| 債務が未確定の場合 |
損金算入不可 |
別表4で加算(留保) |
ここでいう「債務が確定している」とは、決算日までに以下の3つの要件をすべて満たしている状態を指します。
- 債務の成立
決算日までにその費用に係る債務が成立していること
- 原因事実の発生
決算日までに費用が発生する原因となる事実が発生していること
- 金額の合理性
決算日までにその金額を合理的に算定できること
未払費用として計上した費用が、これらの要件を満たさず税務上の損金として認められない場合、会計上の利益と税務上の所得に差が生じるため、別表4において加算(留保)の調整が必要となります。
また、未払費用や前払費用などの期末残高が、実際の状況(契約・検収・請求・支払状況)と食い違っていると、費用の期間帰属の誤りとして税務調査で論点になりやすく、損金算入の否認につながるおそれがあります。
決算日前後の取引については、契約内容・利用期間・請求や支払状況を一つずつ確認し、正しい期間への帰属を徹底しましょう。
※参考資料:国税庁「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」
※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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