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経理/財務公認会計士の仕事術 2025/12/25

第62回 比較分析のいろいろ(2) ~売掛金の増加理由

第62回 比較分析のいろいろ(2) ~売掛金の増加理由
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前回は「比較分析」をテーマに「売掛金の大きさ」について説明させていただきました。今回は「売掛金の増加理由」についてご説明させていただきます。

1.はじめに

経理部では、B/SやP/Lの比較分析を行い、経営者などに著増減理由の説明を行う場面も少なくないでしょう。理由を調べるのは手間がかかりますが、ここで手を抜いてしまうと著増減理由の説明があまり役に立たないものにもなりかねません。

今回は、B/Sの比較分析のうち売掛金の増加理由説明のシーンにスポットを当て、陥りがちな失敗を踏まえて留意点などを考えてみようと思います。

2.ケースで考える比較分析 ~売掛金増加は売上の増加に伴うもの?

まずは、ある経理部での様子を描いた【ケース2】をご覧ください。

【ケース2】
K社で決算作業の終盤を迎えたある日、経理スタッフのSさんが経理部長に呼ばれました。

経理部長:「Sさん、B/SやP/L項目の前期比較での増減理由を確認して異常なものがないかチェックしてくれるかな。特に、売掛金が前期末450,000千円から当期末840,000千円となっていて、増加が大きいようなんだ」


Sさんは、B/SやP/L項目の増減理由を確認し、結果を経理部長に伝えました。
その中で売掛金残高の増加理由については、次のように報告したのです。

Sさん :「部長、売掛金の件ですが、売上高が3,650,000千円から4,380,000千円と大きく増えていますので、確かに売掛金は大きく増加していますが、これは売上高の増加に伴うもので特に異常はないと思います!」

しかし、経理部長はこの説明が腑に落ちないようです…。

経理部長:「うちは、販売代金の回収条件を、売上の1カ月後ないし2カ月後としているところがほとんどなんだが…」
Sさんは、売掛金の増加は「売上高の増加に伴うもので特に異常はない」と分析していますが、果たしてそうでしょうか。

Sさんが見た売掛金と売上高は【図表2】のとおりでした。

【図表2】売掛金と売上高の対前期比較

(単位:千円)
  決算書の金額  
項目 前期 当期 増減
売掛金 450,000 840,000 390,000
売上高 3,650,000 4,380,000 730,000
売掛金の増加理由として真っ先に考えられるのは売上高の増加ですので、「売上高の増加に伴うもの」で済ませてしまえば楽かもしれません。しかし、今回のケースではそこまで簡単ではなさそうです。

ここで【図表2】にもう少し情報を追加しましょう。

【図表3】売掛金と売上高の対前期比較と売掛金回転期間

(単位:千円)
  決算書の金額等  
項目 前期 当期 増減(増減率)
売掛金 450,000 840,000 390,000(87%)
売上高 3,650,000 4,380,000 730,000(20%)
売卦金回転期間 ①÷(②/365) 45日 70日 25日(56%)
【図表3】では「増減率」を追加するとともに、「売掛金回転期間」を追加しています。売掛金回転期間を追加していることが一番のポイントです。

まずは増減率を確認してみましょう。売掛金は前期末から87%増加しているのに対して、売上高は前期比20%の増加にとどまっています。これだけを見ても、売掛金の増加は「売上高の増加に伴うもの」というSさんの分析は当てはまりそうもありません。売上高は確かに増加していますが、20%の増加にとどまっているのに対して、売掛金は87%もの増加になっていますから、売上高の増加以外の要因もありそうです。

こうしたときの分析には、増減率を見るだけでなく、売掛金回転期間を使うことが効果的です。【図表3】を見ると、売掛金回転期間は、前期が45日であったのに対して、当期は70日まで長くなっています。前回も説明したように、売掛金回転期間からは「売掛金の回収に要している期間」を読み取ることができます。

売掛金回転期間が45日ということは、売上後1.5カ月程度で販売代金を回収できている計算になります。S社において主たる得意先からの販売代金回収条件がどうなっているかにもよりますが、売上の1~2カ月後に回収するような条件の得意先が中心であれば、売掛金回転期間45日というのは妥当な水準と言えるでしょう。

これが当期はいきなり70日(売上後2~2.5カ月後に回収している計算)になったのですから、Sさんとしては、この異常点に着目して、さらに詳しく分析する必要があったのではないでしょうか。

このように、売掛金回転期間(売掛金の回収に要している期間)を計算し、それが自社における通常の販売代金回収条件に照らして異常な数値となっていないかという観点でチェックしてみることが大事になります。

今回のケースのように異常値が出ている場合には、例えば以下のような点から詳しく分析することが考えられます。

(例)
  • ①売掛金の相手先別内訳を確認して、残高が大きい相手先(あるいは、大きく増えた相手先)はどこなのかを調べる
  • ②当該売掛金の回収に問題は生じていないか等を調べる
  • ③決算月に他の月と比べて多額の売上が計上されていないかを調べる
  • ④多額の売上が計上されている場合にその売上は適切なものなのかを調べる
①について:
売掛金回転期間の分析では、まずは売掛金全体として気になるところがないかをチェックしますが、そこで気になるところが出てくれば、①のように相手先別内訳へとブレイクダウンして分析していくことが考えられます。そして原因となりそうな相手先を特定していくことになります。

②について:
残高が大きい相手先(あるいは、大きく増えた相手先)であっても、それで売掛金回転期間が長くなったとは限りません。当該相手先の売掛金の回収が遅れているなど、回転期間の長期化につながる要因がないかを確認しましょう。

③について:
決算月に他の月と比べて多額の売上が計上され、その代金がまだ回収されていないとすると、通常よりも売掛金回転期間が長くなり得ます。このような要因で売掛金回転期間が長くなったのかどうかを確認しましょう。

④について:
上記③の売上が適切なものであれば問題ありませんが、売上予算を達成するために架空売上を計上したり、本来よりも早いタイミングで売上計上してしまったりと、不適切なものである可能性もありますので、注意が必要です。

以上見てきたように、売掛金と売上高がともに増えていたとしても、「売上の増加に伴うもの」では説明がつかない程度に売掛金が増加していることもあるわけです。したがって、売掛金の増減理由は売上高の増減の方向だけではなく、増減率と関連付けて分析することが大事で、さらに、売掛金回転期間も併せて分析することが効果的です。

売掛金回転期間を分析した結果、仮に、売上高の増加に伴って増加した分以上に売掛金が増加していることが分かったとすれば、その原因をさらに追及していくことになるでしょう。

そうすることで、例えば以下のような問題が明らかになるかもしれません。
(例)
  • 回収遅延売掛金の存在
    • 財政状態の良くない相手先への販売が増えている
    • 代金の請求もれや請求遅れが生じている
  • 決算直前の売上の不正計上
  • 回収条件が長期の案件の増加(不利な条件でも無理に受注しているなど)
このように、安易に「売上の増加に伴うもの」として済ませてしまうのではなく、異常点を察知してさらに追及していくことで、問題点に気付くこともできるでしょう。

3.おわりに

今回は、B/Sの比較分析のうち売掛金の増加理由説明のシーンにスポットを当て、陥りがちな失敗を踏まえて留意点などを考えてみました。

経理部では、B/SやP/Lの比較分析を行い、経営者などに著増減理由の説明を行う場面も少なくないと思います。著増減が生じている場合、その変化の内容をきちんとつかむ必要があります。どうせ異常なものではないだろうとの考えでいくら比較分析をしてもあまり意味はありません。比較によって重要な変化を見つけたら、何故その変化が起きているのか、そこに問題が隠れていないかといったことを考えながら、担当者への質問をしたり、関連証憑を調べてみたりすることも必要でしょう。

比較分析の際に著増減理由を調べるのは手間がかかりますが、ここで手を抜いてしまうことなく、異常点を察知してさらに追及していくことを心掛けましょう。

次回以降も、経理パーソンの方々が直面する部分にスポットを当てながら、いろいろな比較分析について考えていこうと思いますので、皆様の業務の中で活かして頂ければ幸いです。


(提供:税経システム研究所)
**********

いかがでしたでしょうか。 今回は、「比較分析」における「売掛金の増加理由」についてご説明させていただきました。
次回は、「第63回 比較分析のいろいろ(3) ~対前期比較の落とし穴」でまた別の事例をご紹介させていただきます。お楽しみに!
なお、このコラムの提供元である税経システム研究所については下記をご参照ください。

税経システム研究所
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