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経営事業計画/経営計画 2025/06/24

会社設立したら個人事業主とはどう違う?損しないために知っておきたい法人化のタイミング

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個人事業主として事業を続けていると、会社設立するかの選択を迫られる場面があります。
今回の記事では、個人事業主と法人の違いをメリット・デメリットとともに紹介したうえで、法人化のタイミングはいつなのかを解説します。

個人事業主と法人の違い

事業形態を検討するには、まず基本的な違いを理解する必要があります。
個人事業主とは、事業上のすべての権利義務が個人事業主に帰属する営業者のことです。
法人とは、法律によって個人と同じ権利義務を持つことが認められた組織のことです。
個人事業主が事業を続けていくうえで、個人事業を法人事業に移行し会社設立することを、「法人成り」といいます。


個人事業主と法人の基本的な違い
税制面
法人と個人事業主では、税制面で適用される税率や社会保険制度が異なります。
適用される税制 社会保険制度
個人事業主
  • 所得税(超過累進課税:5%~45%)
  • 個人事業税
  • 国民健康保険
  • 国民年金
法人
  • 法人税(最高23.2%、中小法人の所得800万円以下は15%)
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 健康保険
  • 厚生年金 など
※代表者を含む全従業員の加入が義務付けられています。
個人事業主の所得税は超過累進課税を適用しており、課税対象額が一定額を超えた場合に、超えた部分に対してのみ高い税率が適用されるようになっています。
これに対して法人税の場合は、所得が増えても税率が変わらない点が大きな違いです。


責任範囲と倒産時のリスク
個人事業主は無限責任で、事業の債務や法的責任はすべて個人が負います。
法人の場合は有限責任となり、原則として出資者の責任は出資額を限度とすることになりますが、金融機関からの融資などでは代表者の連帯保証を求められることもあります。
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個人事業主と法人のメリット・デメリット

個人事業主のまま事業を続けるか会社設立をするか選ぶ際は、それぞれのメリットとデメリットを理解し、自分の事業にどちらが適しているか判断することが大切です。


個人事業主のメリット
個人事業主は個人が自らの名義や屋号で事業を行う事業形態です。

開業が容易
個人事業主は開業届の提出のみで始めることができ、資本金や維持費用も不要なため、最低限の資金でスタートできます。
副業から始めるなど、スモールスタートを切る段階では個人事業主を選択することが一般的です。

事業を行ううえでの自由度が高い
個人事業主は自身が一人ですべての意思決定を行えるため、自分の考え次第で事業方針も簡単に変更することができます。
利益の使い道や働き方も自由です。


個人事業主のデメリット
一方で個人事業主には事業規模を拡大しにくいというデメリットもあります。

社会的信用が制限される
個人事業主には法人よりも社会的信用を得られにくいという実情があります。
例えば、取引相手が大手企業や官公庁の場合は、法人であることが契約の条件となることもあり、事業を拡大するチャンスを失ってしまうケースもあります。

資金調達の難易度が高い
個人事業主の場合は銀行融資の審査が厳しく、融資額も法人より限られる場合が多くあります。
事業拡大期に必要な設備投資資金や運転資金の調達が制約されると、事業成長が妨げられる可能性もあるため注意が必要です。

税制面や責任範囲の負担が大きい
個人事業主の所得税は累進課税制度のため、所得が増えるほど税率も上昇します。
また無限責任であるため事業失敗時のリスクが大きく、事業規模が大きくなればなるほど税負担が重くなっていくことになります。


法人のメリット
法人には株式会社や合同会社など、様々な種類がありますが、共通して以下のようなメリットがあります。
事業の成長段階によってその価値は高まる傾向にあります。

社会的信用が高い
法人は登記によって公的に認められた事業体となるため、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなります。
原則として法人としか取引を行わないという方針を持つ企業もあるため、個人事業主よりも取引拡大が見込めます。

資金調達が優位になる
法人は金融機関での融資審査が通りやすいほか、法人格を持つことで融資条件も有利になる傾向があります。
株式会社であれば、株式発行による出資での資金調達も可能です。
また、公的補助金においても、個人事業主より法人向けの方が充実している制度が多くあります。

節税対策しやすい
法人化の場合、事業の利益を、法人と経営者である個人に分散することができます。
個人の所得に課される所得税の最高税率は45%ですが、中小法人の法人税率の場合は、年間800万円以下となる所得部分は15%という低率で課税されるため、この税率差を活用することで節税効果が期待できます。
報酬設定も自由に行えるため、家族を役員や従業員として雇用することでも所得分散を行えます。
また、法人の場合は個人事業主では認められない内容に対しても経費計上が可能です。
例えば、法人の社宅として支払った家賃の大部分を経費にできたり、法人契約の生命保険料について条件により全額または一部を経費計上できたりします。

事業継承しやすい
株式の譲渡によって経営権を明確に移転できるため、親族以外への事業承継であってもスムーズに行えます。


法人のデメリット
一方で、法人にはコストや手続きに関するデメリットも存在します。

設立・維持コストがかかる
法人設立には、株式会社で約20万円、合同会社で約10万円の登録免許税などをはじめとした設立費用がかかります。
また、社会保険料の負担分や税理士報酬などの継続的なコストも様々です。
個人の場合は発生しない赤字の際の税金も、法人の場合は均等割などで納めなければならない場合があります。

※関連記事:赤字でも税金は発生する?利益がない場合の税金事情とは

事務負担が増加する
法人の場合、源泉徴収事務や、社会保険料の計算・納付、決算・税務書類作成など、様々な事務手続きが必要です。
記帳については複式簿記による厳格な会計処理が求められ、専門知識を持つ人材の手配や外部委託が必要となることもあります。
法人化の際も、会社印の作成や、銀行口座開設、各種契約の切り替えなどの手続きがあるため、個人事業主と比較するとスタートのハードルは高めです。

※関連記事:会社設立の手続きはどうする?個人事業主が知りたい法人化の流れとメリットとは
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法人化のタイミングと実務のポイント

では、個人事業主が法人化を検討する場合、会社設立を行うのに適切なタイミングはどう見極めるのでしょうか。


法人化を検討すべきタイミング
会社設立すべきタイミングは一律には決められていませんが、いくつか重要な指標があります。

所得水準
会社設立を考えるうえで最も重要な指標の一つが所得水準です。
一般的に、年間所得が600万円以下の場合は、個人事業主のままでいる方が税制上有利なケースが多いとされています。
年間所得 判断
300万円以下 所得税の税率も低く抑えられるため、個人事業主としての税負担は比較的軽い。
300万円~600万円 社会保険料の負担状況や家族構成、経費の内容などによって判断が分かれるものの、多くの場合個人事業主のままでいる方が有利。
600万円~800万円 法人化するかどうかのボーダーライン。
累進課税による税率上昇の影響が大きくなり始めるため、法人化による節税効果が現れ始めるものの、法人維持コストとのバランスを考慮する必要がある。
800万円超 個人の所得税・住民税率の合計と、法人税率の差が開くため、法人化による節税効果がより確実になってくる。
さらに1000万円以上の所得があれば、法人化を行う段階にあるといえる。
事業拡大と取引先の関係
大企業との取引が増えていたり、取引先から法人格を求められていたりする場合は、会社設立を検討すべきです。
また、従業員の雇用を増やす場合や、大型資金を調達する必要性が生じた際も、法人化のタイミングとなります。

設立後2年間の原則消費税の免税
会社設立から2年間は消費税の免税事業者になれるため、このメリットを活用したい場合も法人化を検討するとよいでしょう。
特に個人事業主から法人成りした場合、個人での免税期間と合わせて最大4年間の消費税免税が可能になる場合もあります。
ただし、インボイス制度により、免税事業者の場合はインボイスを発行できず、取引相手の仕入税額控除額が制限されるというデメリットもあるため、慎重な判断が必要です。


会社設立時の対応
法人成りの際は、法人設立届出書をはじめとした様々な書類の提出や、関連する手続きが必要になります。
それぞれの対応には期限が設けられているものもあるため、事前にチェックしておきましょう。

※関連記事:法人化したらまず何をすべき?事業活動に役立つ手続きを紹介!


会社設立後の実務対応
法人として事業を運営していく際は、個人事業主とは異なる対応が必要となります。

会計・税務面
会社を設立すると、社会保険(健康保険と厚生年金)に加入する必要があります。
支払う保険料の金額は企業が計算することになるため、算定額に誤りがないよう、会計システムを利用するなどの工夫をして正確に処理することが求められます。

所得税などの源泉徴収
期中に給与や役員報酬を支払った際は企業が源泉徴収を行い、翌月10日までに納付する義務があります。
源泉徴収の手続きが漏れた場合、罰金などが発生することもあるため注意しましょう。

決算書類の作成
事業年度終了時は決算書類を作成し、法人税や地方税などの申告・納付を行います。
法人の場合は貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成する必要があるため、期中から会計システムなどを利用して正確に記帳する必要があります。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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事業をスタートする際は、創業初期は個人事業主とし、収益が安定してきた段階で会社設立を検討する流れが一般的です。
年間所得が600万円を超えた方は、法人化を検討してもいいかもしれません。
個人事業主の方は、今回の記事を参考に今後の事業形態を検討してみてください。

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