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経営事業計画/経営計画 2025/05/08

人的資本経営で企業価値に差がつく時代へ。今こそ見直すべき「人への投資」とは

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人的資本経営とは、従業員を資産と捉え、その能力を引き出すことで持続的な成長と競争力を高める経営手法です。
グローバル化や技術革新が進む現代では、人的資本への投資は事業の成功に不可欠となっています。
今回の記事では、人的資本経営の概要を説明するとともに、企業が取り組むべき施策や成功事例、成功のポイントを解説します。

人的資本経営とは

人的資本経営とは、企業が人材を「資本」として捉え、その価値を引き出すことを目的とした経営手法です。
中長期的な企業価値の向上を目指し、従業員の能力や経験、意欲を高めるために戦略的に投資を行うことに重点を置いています。

※参考資料:経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~


人的資本経営の重要性
企業の成長と競争優位の源泉が「人」にあるという認識が高まっていることが、人的資本経営が注目される理由の1つです。
組織文化や人材の質は簡単には真似できません。
人材不足が進む日本では、限られた人材の活用が企業の存続に不可欠となっているのです。
また、有価証券報告書で人的情報の開示を行う必要が出てくるなど、働きやすさや多様性への配慮といった非財務情報が企業価値として投資家から評価される時代となっていることも起因しています。
このほか、経済産業省の「人材版伊藤レポート」でも、人材戦略を経営戦略と一体化することの重要性が強調されており、企業には人的資本の戦略的な活用が求められています。

※参考資料:経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~


「人的資本」と従来の「人的資源」の違い
「人的資本」と似た言葉に「人的資源」があります。
両者は人材を「消費するもの」として見るか、「価値を生むもの」として見るかに違いがあります。
「人的資源」の場合は、企業の経営資源の一部として、人材を業務遂行のための消耗的なリソースと見なすことが一般的です。
一方、「人的資本」は従業員のスキルや知識、経験を企業の資産と見なし、組織の競争力を高める源と位置付けます。
項目 人材=資源(従来) 人材=資本
人材マネジメントの目的 「管理」
人材はコストとして管理される対象
「価値創造」
人材は資本として企業価値を生み出す存在
アクション 「人事」
人事制度の実施及び改良が中心
「人材戦略」
経営戦略に人材活用を組み込む
主導する組織 「人事部」
人材に関連する業務は人事部が中心となって行う
「経営陣・取締役会」
経営戦略を経営陣が立案、従業員も発言権がある
従業員と企業の関係性 「相互依存」
企業は管理を強化し、従業員は企業に依存する関係
「個の自律」
個人が自ら成長しながら企業と価値をともに創る関係
雇用の性質 「囲い込み」
長期雇用を前提とした内部育成・維持を重視
「選び・選ばれる」
企業と個人が対等に選び合う柔軟な関係性
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人的資本経営において企業が重点的に進めるべき2つの施策

人的資本経営において企業が重点的に進めるべきポイントを2つに分けて解説します。


人的資本の情報を開示する
2023年3月期より、金融商品取引法に基づく有価証券報告書を発行する上場企業などに対して、人的資本に関する情報開示が義務付けられています。
人的資本に関する情報開示は、「有価証券報告書に記載すべき項目」と「政府が開示を推奨する項目」の2つに分けられます。
有価証券報告書の記載項目は以下の通りです。
項目 内容
サステナビリティ情報
  • 人材育成方針
  • 社内環境整備方針
多様性に関する情報
  • 女性管理職比率
  • 男性育休取得率
  • 男女間賃金格差
  • 人的資本や多様性の測定可能な指標と目標
コーポレートガバナンスに関する情報
  • 取締役会・委員会の実施状況や、内部監査の取り組み内容など
内閣官房の「人的資本可視化指針」で提示されている、政府が開示を推奨する項目は以下の通りです。
分野 項目
人材育成
  • リーダーシップ
  • 育成
  • スキル・経験
エンゲージメント
  • 従業員満足度
流動性
  • 採用
  • 維持
  • サクセッション(後継者育成)
ダイバーシティ
  • ダイバーシティ
  • 非差別
  • 育児休業
健康・安全
  • 精神的健康
  • 身体的健康
  • 安全
労働慣行
  • 労働慣行
  • 児童労働・強制労働
  • 賃金の公平性
  • 福利厚生
  • 組合との関係
コンプライアンス・倫理
  • コンプライアンス
※参考資料:内閣官房「人的資本可視化指針

企業では、従業員のエンゲージメントや育成に関する情報を透明化したうえで、ステークホルダーからの信頼を得ることが重要となります。


人材育成・学習の仕組みを強化させる
技術革新や市場環境の変化が激しい現代では、従業員に継続的な学習機会を提供し、組織全体のスキルアップを図ることも大切です。
例えば、以下のような学習機会の提供が求められます。

  • 社内での研修制度
  • オンライン学習ツールの活用
  • 外部セミナーへの参加 など
さらに、キャリアパスの明示やジョブローテーションの導入も有効です。
育成方針や評価基準をオープンに共有することで、社員の成長意欲と組織への貢献度を高めることができます。
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人的資本経営を成功させるための3つのポイント

人的資本経営を成功させるためのポイントを3つに分けて解説します。


人材ポートフォリオを作成する
人的資本経営の実現には、人材ポートフォリオの整備が欠かせません。
人材ポートフォリオとは、社内の人材構成やスキルを可視化したもので、配置や育成、採用戦略などの判断材料となります。
記載する項目の例は以下の通りです。

  • 職務経験
  • スキルや能力
  • 人柄や人物像
  • 成長意欲やモチベーション
  • 本人に求める行動
人材ポートフォリオは作成して終わりではなく、ビジネス環境や経営戦略の変化に応じて定期的に見直し、更新することが重要です。
継続的な運用により、常に最適な人材管理を維持できます。


経営の目標や課題を社内全体で共有する
人的資本経営を成功させるためには、経営の目標や課題を全社で共有することも重要です。
従業員が自らの役割と組織の目標を理解することで、組織全体が一体となって行動でき、エンゲージメントや主体性の向上が期待できます。
また、課題をオープンにすることで、現場からのフィードバックを得やすくなり、実効性のある施策立案にも役立ちます。
社内報・ミーティング・コミュニケーションツールなどを活用し、継続的に情報を共有する仕組みを作りましょう。


開示情報をできるだけ数値化する
人的資本経営を効果的に進めるには、開示情報をできる限り数値で示すことも重要です。
数値化により、どの領域に投資すべきか、どの施策が成果を上げているかなどを客観的に評価できるようになります。
例えば、以下の項目を数値化することで、企業の人的資本の状況を明確に把握できます。

  • 従業員のスキル
  • 教育レベル
  • 離職率 など
こうした定量的な情報は、客観的な評価を可能にするだけでなく、企業の透明性を高められるため、投資家やステークホルダーからの信頼向上にもつながります。

実際の企業における人的資本経営の成功事例

最後に、実際の企業における人的資本経営の成功事例を2つご紹介します。


従来のKPIを見直し挑戦と連携に焦点を当てたOKRの採用
以下は生活用品や美容・健康関連製品を展開する企業の事例です。
同社は企業方針として「社員の活力を最大化すること」を掲げ、社員と組織の活性化を目指しています。
その一環として「OKR(Objectives and Key Results)」を導入しました。
OKRとは目標の設定と成果の測定を行うためのフレームワークであり、従業員と企業の目標を結びつけ、組織全体が重要な課題に一丸となって取り組むことに役立っています。
社員一人ひとりが「世の中や会社をより良くするために自分ができること」として自ら目標を設定し、それを社内で共有することで、部署を超えて支え合う文化が根付いています。


従業員が主体的に成長できる職場環境を整備
以下は化学・繊維・医薬品など多岐にわたる分野を手がける総合化学メーカーの事例です。
同社は「人は財産」の理念のもと、従業員の「終身成長」と「共創力」を重視した人材戦略を展開しています。
「終身成長」では自律的なキャリア形成を支援するためのeラーニングや定年延長、公募人事制度を、「共創力」では多様性を尊重し、時間と場所にとらわれない働き方や事業領域を超えた人事異動などを促進しています。
柔軟な働き方や事業を超えた人材交流を進めることで、個々の強みを活かし、組織全体が成長できると考えられています。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
組織の人的資源を最大限に活用!
給与・人事システム

複雑な支給形態を網羅!勤怠管理などのシステムとも連携することで、給与・賞与計算を自動化できます。また、従業員のあらゆる情報を適切に管理することで、組織の人的資源を最大限に活用することができます。

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人的資本経営は、制度や施策の整備だけでなく、社員の成長意欲を引き出す仕組みや文化の醸成が成功の鍵です。
効果的に実践することで、企業は優秀な人材を惹きつけ、育成・定着でき、長期的な企業価値の向上を実現できるでしょう。
まずは自社の人的資本の現状を可視化し、企業成長に直結する人材活用を始めましょう。

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