近年、生成AIの普及が進み、会計事務所や企業のバックオフィスでも積極的に導入・活用が進められています。
Q 「生成AI」を使ったことはありますか?
会計事務所:
ある 39%
ない 61%
企業・事業主:
ある 55%
ない 45%
生成AIを使ったことがある会計事務所は39%、企業・事業主は55%という結果となりました。
前回の調査と比較すると若干の増加が見られるものの、依然として会計事務所の多くが生成AIを使用していない状況です。
IT業界や広告業界などの他業種ではコードの作成・編集や、市場分析などに生成AIが多く取り入れられていることと比較すると、会計事務所は生成AIの使用率が低い傾向にあるようです。
ただし、これは単純な業界内でのAI導入の遅れを示しているというより、会計事務所の業務特性と、慎重な判断が必要とされる専門性の高さが影響していると考えられます。
特に、財務データの機密保持や法令順守の観点から、AIが作成する情報の信頼性やセキュリティに対する懸念がハードルになっている可能性があります。
Q 生成AIを使ったことが「ある」と答えられた方に伺います。どのような生成AIを使われましたか?(※複数選択可)
ChatGPT 84%
Gemini 26%
Bing Copilot 17%
Copilot for Microsoft 365 15%
その他の生成AI 10%
不明 5%
会計事務所ではChatGPTが84%と圧倒的なシェアを占めており、次いでGemini(26%)、Bing Copilot(17%)という結果となりました。
企業側でも同様の傾向が見られ、ChatGPTの活用が最も進んでいることがわかります。
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まだ生成AIを使用したことのない回答者に対する今後の生成AI活用の意向についての調査結果は以下の通りです。
Q 生成AIを使ったことが「ない」と答えられた方に伺います。今後、生成AIを使ってみたいと思いますか?
会計事務所:
すぐにでも使ってみたいと思う 10%
いずれは使ってみたいと思う 67%
あまり使ってみたいと思わない 23%
企業・事業主:
すぐにでも使ってみたいと思う 8%
いずれは使ってみたいと思う 73%
あまり使ってみたいと思わない 19%
Q 会計事務所でどのような業務に生成AIを使ってみたい、または試してみたいですか?(※複数選択可)
データ分析 58%
文書や画像などのコンテンツ作成 45%
顧客対応 43%
プロジェクト管理 9%
その他 9%
人材採用 3%
「使ってみたい」という意向が大多数を占める中で、活用したい業務としては、データ分析、文書作成業務、顧客対応が高い関心を集めています。
AIが得意とする業務効率化やデータの蓄積といった機能に対する期待が高まっているといえるでしょう。
一方で、会計事務所での生成AIの導入が進まない背景には、いくつかの課題が存在します。
Q 会計事務所で生成AIを利活用するために取り組むべき課題として認識されていることを記述してください。(※複数選択可)
データのプライバシーとセキュリティの確保 55%
従業員のスキルアップと教育 42%
技術インフラの整備 37%
使用ガイドラインの策定 23%
コスト管理とROIの評価 15%
その他 8%
Q 会計事務所で生成AIを使うために困っていることはありますか?(※複数選択可)
どのような生成AIを使用したらいいかわからない 50%
生成AIが業務でどのように活用できるか不明 48%
職場で生成AIのルールが整備されていない 32%
生成AIの費用負担が難しい 20%
職場内に生成AIの推進役がいない 18%
経営層の理解が得られず導入できない 3%
特に困っていることはない 16%
この結果から以下のような課題が見えてきます。
データのプライバシーとセキュリティの確保
会計事務所における生成AI利用の最大の課題として浮かび上がったのは「データのプライバシーとセキュリティの確保」であり、55%の会計事務所が取り組むべき課題として挙げています。
会計事務所が取り扱うクライアントの財務データや個人情報は極めて機密性が高く、万が一漏洩した場合、クライアントの経営に大きな損害を与える可能性があります。
法令順守と高い倫理性が求められる会計事務所では信頼性の維持が事業継続の根幹となるため、このような情報をいかに安全に扱えるかがポイントとなります。
従業員のスキルアップと教育
次いで42%の会計事務所が「従業員のスキルアップと教育が必要」と回答しています。
特に、中小規模の事務所ではAI技術の知識を持つ人材が不足している傾向が顕著です。
生成AIの効果的な活用には、単なるツールの操作だけでなく、業務での利用ガイドラインの策定も必要となるため、それらを正しく管理できる人材の確保が必要と考えられます。
その他の実務面での課題
このほか、半数近くの会計事務所が生成AIを使うために困っていることとして「どのような生成AIを活用すればよいかわからない」や「生成AIが業務でどのように活用できるのか不明」と回答しています。
このことから、生成AIの潜在的な可能性は認識されているものの、具体的な活用シーンが見えにくいのが多くの会計事務所の課題となっているようです。
さらに、「職場で生成AIのルールが整備されていない」という回答も多くあることから、生成AI技術の急速な発展により、適切なルール整備が追いついていない状況が読み取れます。
特に会計事務所ではコンプライアンスの観点も含めた業務プロセスや手順書の作成が必須となるため、どのように整備していくかが今後の課題だと考えられます。
※関連記事:ChatGPTを経理業務で使うには?生成AI初心者が押さえておきたい基礎知識
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今回の調査結果から、多くの会計事務所で生成AIを活用していきたいという意向があることがわかりました。
実際の利用に対する課題を解決するためには、生成AIがどのような業務に活用できるかの具体的なイメージを持つことと、活用しやすい体制を手に入れることが重要です。
生成AIの機能を搭載したシステムの利用
生成AIは、従来の定型業務の自動化・効率化から、データ分析やコンテンツ作成、顧客対応管理など、より高度な業務へと活用範囲を広げています。
会計業務におけるAI活用の例として財務分析が挙げられますが、AIに過去の財務データを蓄積・学習させたうえで将来予測するなど、これまで人間が多大な時間と労力を要していた分析・チェックを瞬時に行うことができます。
ただしこの一連の作業を生成AIに一からやらせるには相応の技術が必要となります。
しかし、この機能を取り入れたシステムを使えば、生成AIの操作に慣れていなくてもAIの特性だけ利用することが可能です。
同様に、リスク分析では取引データをAIが解析し、異常な取引に対してアラートを検出する機能が搭載されたシステムも登場しています。
顧客サービスの分野でも、膨大な業界データや事例の中から、各クライアントに最適な提案を導き出したり、対話型のサポートサービスを提供したりと、様々なAIを使ったシステムが登場しています。
これらを利用することで、よりクライアントに寄り添った関係構築をすることができるでしょう。
生成AI活用に当たって会計事務所に求められること
生成AIを使用したことのある企業は既に半数を超えている状況です。
クライアント企業のデジタル化が進む中、会計事務所も同様の変革が求められています。
そのためには、設備・技術・人材投資、業務プロセスの見直し、さらに場合によっては生成AIの技術を搭載したシステムを利用するなどの対応が必要となってくるでしょう。
※関連記事:AIを経理担当者が簡単に使う方法は?複雑化する経理業務に進めたいDX化
※関連サイト:会計事務所白書
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