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人事/労務年末調整 2024/10/29

定額減税にどう対応する?2024年に改めて確かめたい給与所得者の基礎控除申告書の書き方

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年末調整に用いる書類の一つに、給与所得者の基礎控除申告書があります。
今回の記事では、基礎控除申告書の概要と具体的な記入方法を、2024年分に追加された定額減税に関係する記載項目も踏まえて解説します。

給与所得者の基礎控除申告書とは

「給与所得者の基礎控除申告書」とは、給与所得者が基礎控除を受けるために、年末調整時に提出する書類のことです。
基礎控除は、要件を満たすすべての個人に適用される所得控除です。
所得控除の適用金額は、以下の通り、本人の合計所得金額に応じて異なります。
本人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円
給与所得者の基礎控除申告書は、書類上は「給与所得者の配偶者控除等申告書」、「所得金額調整控除申告書」とともに「令和X年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」(基礎控除申告書)として1枚に統合されています。


基礎控除申告書を提出しないとどうなるか
基礎控除申告書を提出しないと、年末調整で基礎控除が適用されません。
この場合、企業側に特別な不利益は生じませんが、従業員は自ら確定申告を行わない限り過大に支払った税金が戻ってこないため、本来より多くの所得税を支払うことになる可能性があります。

給与所得者の基礎控除申告書の記載事項

給与所得者の基礎控除申告書を従業員自身が記入するか、企業側の担当者が代理で記入するかは企業によって異なります。
いずれにせよ、経理担当者は計算方法や記入の仕方を把握しておくのが望ましいでしょう。
ここからは、最新のフォーマットをもとに基礎控除申告書における実際の記載事項を確認していきます。
給与所得者の基礎控除申告書は、上段の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」と下段の「控除額の計算」の2つに区分されています。
※参考資料:国税庁「各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)


「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の書き方
この欄には、所得に関する内容を記載します。

給与所得の収入金額欄
まず従業員本人の給与所得の収入金額を記入します。
この欄には、年間の総支給額として、手取額ではなく給与明細に記載された給与、賞与、手当などの総額を記載するようにします。

給与所得の所得金額欄
次に、給与所得の収入金額から給与所得控除額を差し引いた給与所得の所得金額を記入します。
給与所得控除額は、給与収入の額に応じて段階的に決まります。
給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から
1,800,000円まで
収入金額 × 40% – 100,000円
1,800,001円から
3,600,000円まで
収入金額 × 30% + 80,000円
3,600,001円から
6,600,000円まで
収入金額 × 20% + 440,000円
6,600,001円から
8,500,000円まで
収入金額 × 10% + 1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)
※参考資料:国税庁「給与所得控除

例えば、給与の総支給額が600万円の場合は、給与所得控除額の適用要件のうち「給与等の収入金額3,600,001円から6,600,000円まで」の範囲に該当します。
この範囲の給与所得控除額の計算式は以下の通りです。
収入金額 × 20% + 44万円

したがって、給与所得控除額は以下となります。
600万円 × 20% + 44万円 = 164万円

給与所得の総支給額から給与控除額を差し引くと、給与所得の所得金額は以下となります。
600万円 – 164万円 = 436万円

所得金額欄にはこの金額を記入します。

給与所得以外の所得金額欄
給与以外の収入がある場合、その合計額を給与所得以外の所得の合計額の欄に記入します。
会社員の場合、給与所得以外の配当所得、不動産所得、雑所得などが考えられます。
なお、この欄には所得金額しか項目がないため、副業収入がある場合には、収入から必要経費を差し引いた所得の額を記入することになります。

あなたの本年中の合計所得金額の見積額
給与所得の所得金額欄と給与所得以外の所得金額欄の2カ所の所得金額を合算して、本年分の合計所得金額の見積額の欄に記載します。
この合計所得金額が、基礎控除や定額減税の対象となるかを判断する際の基準となります。


「控除額の計算」の書き方
冒頭に明記した通り、基礎控除額は合計所得金額に基づいて決まります。
例えば、所得が2,400万円以下の場合は48万円の控除を受けられるなど、表に基づいて判定した基礎控除の額を記入します。

【令和6年分より追加予定】定額減税に関する記入欄
令和6年度税制改正により、所得税の特別控除(定額減税)が新たに導入されました。
この改正に伴い、基礎控除申告書に「本人定額減税対象」という欄が設けられています。
※関連記事:定額減税に備えるには?月次減税事務で慌てないために必要なこと【令和6年度税制改正】

本人の合計所得金額が1,805万円以下の場合は定額減税の適用があるため、この欄にチェックを付けます。
なお、定額減税における変更として、「給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書(同一生計配偶者に係る申告)」にも、配偶者が定額減税の一定の要件を満たす場合に配偶者定額減税対象の項目にチェックを入れることとなっています。

記入ミスを防ぐためのポイント

基礎控除申告書は年末調整までに従業員から企業側に提出する必要があります。
提出が遅れたり記入内容が不適切であったりして年末調整が正しくできなかった場合、後日従業員自身で確定申告を行わなければならない可能性もありますので、慎重な対応が必要です。
給与所得者の基礎控除申告書の記載事項を正確に記入するためには、以下の点に注意することが重要です。


給与の収入金額の確認
給与の総支給額は正確に把握し、集計漏れがないように計算する必要があります。
ただし、企業側が代理記入する場合、従業員の数が多いと一人一人手作業で計算していくのはミスが増える原因にもなり得ます。
そういった場合は会計システムを使用するなど、効率化できるツールを活用することで作業がスムーズになります。


給与以外の所得の申告
従業員に副業や不動産所得がある場合、それらの所得を正確に申告してもらうことが重要です。
特に、給与以外の所得記入欄は、収入金額ではなく必要経費を差し引いた「所得」を記入するものであり、間違いの多い箇所となります。
従業員が誤った記入や申告をしないように注意喚起しておきましょう。

※本記事の内容は掲載日時点での情報です。
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給与所得者の基礎控除申告書に記載する情報は、年末調整を正確に行うために必要不可欠なものです。
特に2024年は定額減税の影響で記載事項にも変更が生じています。
従業員に記載内容を的確に説明し、期限内の提出を促すことができるよう、経理・総務担当者として内容をしっかり押さえておいてくださいね。

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